WEB本の雑誌

4月16日(金)


<午前10時>

 寝不足でふらふら。頭の芯が何だか熱い。
 本日は残務整理が山のようにあるので、私服で出社するが、なぜか早く起きてきた目黒に「何その格好?」とバカにされる。

 その目黒がなにやら本を手に持っていたので覗き込むと、昨日の打ち上げで大森望さんとN社のFさんに薦められた『さよならの代わりに』貫井徳郎著(幻冬舎)であった。

「ああ、昨日○○ものって大森さんに言われて、言うなよ~って怒っていた本ですね」と何気なく答えると、突然目黒、僕の頭をポカリと叩く。「おい! 俺忘れていたのに。言うなよお前」だって。おいおい、大森さんから○○ものと話されてまだ12時間も経っていないのに忘れたなんてどういうこと?

 もしかして目黒考二が本屋大賞受賞作の『博士の愛した数式』の博士のモデルなんじゃなかろうか。そういや目黒も阪神ファンだし、博士にとっての数学と目黒にとっての本と競馬は同じだ。80分の記憶というのもかなり近い線いっているし、ああ、昨日小川洋子さんに聞けば良かった…。


<お昼>

 お礼のメールを大量に書き終え、食事。
 

<1時18分>

 新元良一さん来社。何が理由で思い立ったのかは聞かずにいるが、昨秋から始めたランニングダイエットが功を奏し、信じられないほどの痩せっぷり。マイナス15キロくらい言っているんじゃないか? 

 そんな新元さんに妙に冷たい発行人・浜本茂。こちらも冷たくする理由は聞いていない。


<2時04分>

 僕の背後に座っている経理の小林が、字のとおり「ギャァアアアアアア」を叫び声を上げる。小林は不整脈という持病を抱えているので、てっきり発作でも起きたのかと振り返る。しかし倒れるどころか、すさまじい形相で机から廊下へ走り抜けていくではないか? えっ?

 すると主の消えた小林の机あたりから「ブーン」という唸るような音がし、ハチだかアブだかよくわからないけれど大きい虫が飛び出して来た。それを知った瞬間今度は浜田が「クワーーーーー」と叫び席から走り逃げていく。これで窓際に残ったのは僕ひとり。実は僕、虫が大嫌いで、家にゴキブリが出た時は、娘も妻も置いて逃げまくるような男なのだ。どうしろっていうの?

 しかししかし、浜田と小林は非常に熱い視線を僕に送って来るではないか。その目は「お・ね・が・い。お・と・こ・でしょ」と訴えかけて来ているのは間違いない。ううう、本屋大賞の運営より虫を捕まえる方がよほど大変だ。とりあえず刷り見本の長い紙を筒状にし、それで追いやろうとしたが、虫が突然こちらに向かってくる。悲鳴を上げなかったのは何もこらえたからでなく、ただただ声も出せない状態だったのだ。

 その様子を奥で見ていた金子が、「ほんとにスギエッチは口ばっかりで、ダメな男だな」とぶつぶつ僕をこき下ろしつつ、ビニール袋で呆気なく虫を捕まえてしまった。経理の小林と事務の浜田は熱い視線を金子に送り、僕にはとても冷ややかな視線で「やっぱりこういうときに本物の男気がわかりますよね」なんて言いやがる。うーん、だって怖いんだもん、虫…。


<4時36分>

 眠い。


<6時46分>

 長い一日が終わった。うちに帰ろう…。