WEB本の雑誌

10月29日(月)

通勤読書は『私の男』桜庭一樹(文藝春秋)。
こちらも『サクリファイス』近藤史恵(新潮社)同様、ゲラ配布の段階で書店さんで話題になっていた1冊。しかし『サクリファイス』のときと若干違うのは「私は無茶苦茶面白かったけど杉江さんはダメかも…」なんて妙な薦められたかだったことだ。

なるほどなるほどこの禁じられた愛は、確かに娘を持つ僕にはキツイかも。でもどうしようもない男の書き方とかそのから抜け出せない女の子の気持ちとか、うまく書けていて、とても途中で辞められるような本ではない。一気読み。好きか嫌いかでいえば、好きじゃないかもしれないが、あやしく恐ろしい世界を堪能。

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『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹(文藝春秋)が、文芸書では久しぶりのベストセラーになっている。

書店さんも「やっぱり1冊引っ張ってくれるのがあると、気分が全然違うよね」と話されるようにうれしそう。それにしてもエッセイが売れない昨今、これがベストセラーになるというは、依然強力な村上春樹人気を証明しているのだろう。まさに文芸書業界では、神様仏様村上春樹様って感じか。できることなら、本の雑誌社からも本を出してくれないかなぁ。そのためだったら発行人の浜本も走るのではなかろうか。

また『ザ・シークレット』ロング・バーツ(角川書店)も海外で800万部も売れているとかで、書店さんは『ダ・ヴィンチ・コード』の再来か、なんて期待を寄せている。何部発注すればいいかなぁ…なんて相談されたが、そんなこと二桁の注文しかいただいたことのない僕には到底わからない。

上陸といえば、来月は「ミシュラン」日本版が発売で、こちらもとある書店さんで、4桁の発注でも足りないかも…なんて心配されるほどの大物。これが出たあとは料理書の本もミシュランで三つ星シェフの料理ブックとかいっぱい出るのかな。

思わず会社に帰って「本屋ミシュラン」とか「作家ミシュラン」とか「書評家ミシュラン」とか作りましょうよと企画を出したが一切無視されてしまった。

それにしても年末を控え、書店さんは強力な新刊を前に、ドキドキしている様子。そういうなかを営業で廻るチビ出版社の営業も何だか楽しくなってくる。やっぱり本が売れるってうれしい。うちの『翻訳文学ブックカフェ2』とこれから出る沢野さんの画集『スケッチブック』も売れてくれると、よりうれしいんだけど。