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4月28日(月)

うちの会社は絶対ヘンだと思う。

なぜなら、なんか知らんが会社のホワイトボードを見ると、本日4月28日(月)からというよりは、4月26日(土)から曜日が赤文字で書かれていて、それはすなわち休みを意味するわけで、僕が営業に出ている間に、11連休が決まっていたらしい。

たとえそれを金曜日、僕が帰るときまで教えてくれなかったのは我慢しよう。しかも給料が安いから休みをやるというそのトンデモナイ根性も許してやろう。

しかししかしである。僕は当然休みだと知らなかったからスケジュール調整をしておらず、仕事は山のようにあるわけで、今日も当然出社したのだが、なぜか浜本も松村も浜田も小林もタッキーも全員普通に出社しているではないか!

ということは、あの赤文字になんか意味があるのか? 希望か?

4月23日(水)

 通勤読書は『替天行道 北方水滸伝読本』(集英社文庫)。単行本の読本も読んでいるのだが、文庫化に際し、100頁以上も新たな原稿が収録されていると言われたら、買わないわけにはいかないだろう。その期待通り、吉川晃司との熱すぎる対談や、大沢在昌を司会に北方謙三と担当編集の山田裕樹さんが作家北方謙三の誕生から水滸伝完結まで語りあう座談会がとにかく面白い。こういう関係から素晴らしい作品が生み出されてくるのだ。

 続いていつまでも元気な北方さんとともに、もうひとり相変わらず元気な作家、我らが編集長椎名誠の『すすれ! 麺の甲子園』(新潮社)を読む。あまりにおかしくて電車のなかではとても読めない。肩を揺らし、必死にこらえるが、プッと吹き出してしまった。

 これは身内だから言うのではなく、長年椎名誠の本を読み続けた、いち読者として書くのだが、今年出ている『わしらは怪しい雑魚釣り隊』(マガジンマガジン)と『ニッポンありゃまあお祭り紀行』(カラット)と、それにこの『すすれ! 麺の甲子園』は、全盛期のパワーを彷彿させる、いやそれを越えるくらい面白いエッセイ&ノンフィクションである。

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唐突に営業スイッチが入り、新横浜から東横線を駆け回る。

昨日の吉祥寺に続いて感じたのは、今、自由ヶ丘の書店さんが面白いということだ。「持ち出しじゃないかな」ととある書店員さんは呟いたけれど、そういう意気が売り場を支え、また良いお店を作っているのだ。出版社もやっぱり何か応えないといけないのでは……なんて考えつつ東横線に揺られる午後6時。

4月22日(火)

 通勤読書は『TOKYO0円ハウス0円生活』坂口恭平(大和書房)。

 先日読んだ『落合博満 変人の研究』(新潮社)で、赤瀬川原平さんが「珍しく本を1冊読み通しました」と紹介されていたので早速手に入れた次第。

 ホームレスが作る家を集めた写真集『0円ハウス』(リトルモア)を出版した著者が、そのなかでも一番創意工夫して生きていると感じた鈴木さんの生活をルポする1冊。これを読むと、東京がまるで豊穣な海や山のように思えてくるから不思議だ。廃棄される車のバッテリーを貰ってきて、バイクのライトに繋げたり、食費以外がすべて0円という生活はなんだか自然のなかで生きる人びとと変わらない。またそういう工夫の生活だけでなく、この鈴木さんという人柄がほんとに素敵だ。

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 今、僕が一番営業を楽しみにしている吉祥寺へ。

 ブックス・ルーエさんを訪問し、2階文庫売り場Hさんのところに顔を出すと、「吉祥寺はやっぱりこれが売れていますよ!」と『バ−ボン・ストリ−ト・ブル−ス』高田渡(ちくま文庫)を紹介される。吉祥寺にはいまだ何かしらの匂いがあるんだな・

 そのHさんは相変わらず面白い棚づくりをされているし、胸バッチには「いま粘菌が面白い!」なんて書かれていて、素敵だ。そんななか今、イチオシされていたのは『ほかに誰がいる』朝倉かすみ(幻冬舎文庫)で、他のスタッフの方に薦められて読んだら面白かったとか。

 その後、訪問した啓文堂書店さんでは、残念ながら担当のMさんがお休みでお会い出来なかったのだが、新刊平台のいちばん良いところに『昭和の短篇一人一冊集成』(未知谷)の戸川昌子と吉行淳之介が並んでいるではないか。カッコイイ!

 次に訪問した弘栄堂さんは相変わらずたくさんの人で賑わっていて、素晴らしい。こちらでも『バ−ボン・ストリ−ト・ブル−ス』がきっちり積まれていて、吉祥寺の匂いを感じる。

 そして最後に訪問したリブロさんで僕はぶっ飛ぶことになる。なんとエスカレーターを降りた真正面で「前田司郎の本棚」なんていうフェアが開催されているではないか! ついに僕と、僕に前田司郎の面白さを教えてくれたネット書店A社のHさん以外の同好の士を発見!?

 腰が抜けそうなほど興奮しつつ、どなたが企画されたのですか?と文芸担当のYさんに伺い、担当のTさんを紹介していただく。そのときもはや僕は営業マンというよりは、本屋で興奮している変な人だったと思われる。

「好きなんですよ、前田司郎さん。岸田國士戯曲賞受賞記念でお願いして、展開させていただいてます」

 とのことで、そこで並べられているなかでは『のんのんばあとオレ』水木しげる(角川書店)と『愛情生活』荒木陽子(作品社)が売れているとか。うー、もう一度来るぞ、オレ。

 なんだかやっぱり、いまさらだけど、吉祥寺は、面白い街だ。

4月21日(月)

 新宿のブックファーストルミネ1店に『本屋大賞2008』を直納。
 本の重さなんて関係ない。私は、売れている実感を強く持てる直納が大好きだ。やっぱり売れるのは楽しい。

 南口のK書店さんを訪問するが、担当者さんがちょうど休憩に入られたところでお会いできず残念無念。しかし入口の面陳台で展開されいた西加奈子の新刊『こうふくあかの』と『こうふくみどりの』(ともに小学館)のPOPがすごい。これだけ熱のこもった文章をどうしたら書けるのか。そしてこんなPOPが立てられた本は、本当に幸福だ。

 目黒、五反田を営業するが、なかなか担当者さんに会えないアンラッキーデイ。ただでさえ昨日の引き分けを引きずり、気持ちが落ちこんでいるからこれは辛い。しかももう開いているのかと思っていた五反田のブックファーストさんや23日からだとか。うーむ。

 16時に恵比寿へ向かい、『辺境の旅はゾウにかぎる』の装丁をデザイナーさんにお願いにあがる。しかししかし私の手元に、自分で書かれた住所は恵比寿2丁目○○○と書かれているのだが、その場所にそのマンションがない。あれ? と辺りを彷徨うがまったく見あたらない。あと5分で約束の時間になるのだが、これでは遅れてしまうと、新聞販売所に場所を確認すると、なんとそのマンションは恵比寿2丁目ではなく、恵比寿南2丁目だというではないか! しかも南2丁目は線路を挟んで反対側だ!!

 私は高校生活3年間で遅刻を287回したという、遅刻魔であったのだが、社会に出てからは父親の教えに従い、遅刻だけはしないようにしている。遅刻どころかほとんどの場合、15分前には待ち合わせ場所に着くように行動している。それなのに……。

 私の頭のなかを爆風スランプの「ランナー」が流れ出した。新聞販売所にお礼を言い、恵比寿の街を駆ける。推定12人くらいの人しかわからないと思うけれど、昨日の浦和レッズの右サイド・平川より走ったことは間違いない。

 結局10分遅れで、デザイナーさんのところに到着。息も絶え絶えで、打ち合わせをはじめさせていただいたら、そこへ電話が鳴る。デザイナーさんが受話器を取り話している。

「あっ! 恵比寿2丁目じゃなくて、恵比寿南2丁目なんです」

 バイク便も私と同じ間違えをしたようだ。

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 その後、先週オープンした秋葉原のブックファーストさんを覗いた後、新宿京王プラザホテルへ。本日は新潮社さん主催の「第7回 女による女のためのR−18文学賞」の贈呈式があるのだ。本屋大賞でお世話になったので、そのウラを返すために、列席させていただく。

 大賞は『自縄自縛の二乗』蛭田亜沙子さん、読者賞は『16歳はセックスの齢』山内マリコさんであった。お二人ともすごい美人でビックリ。そして挨拶がとても初々しく感動してしまう。さっそくタッキーを出動し、ご挨拶させる。ちなみに受賞作は「小説新潮」6月号に掲載される予定だとか。

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 そのパーティー会場で新潮社の宣伝部のSさんと名刺交換させていただくと、私の名刺に印刷されている「本の雑誌」のロゴを指さし、「一号から読んでいるんですよ」とおっしゃるではないか!

 実はこのSさんこそが、目黒考二が『本の雑誌風雲録』で「現在にいたるも誰が書いたのか、わらない」と書かれていた、新潮社の書店向け販促誌「販売ジャーナル」で「本の雑誌」創刊号を紹介していただいたその人なのであった。いや書いたのは別の方らしいのだが、その方に「本の雑誌」を紹介したのだがこのSさんだったのだ!

「日販に行った帰りにお茶の水の茗渓堂さんに寄ったらね、たまたま見つけて。それが面白くて会社に戻って同僚にいいまわってね。それでまた面白がった同僚が書いたんだけど」

 今の僕があるのは、まさにこの人たちのおかげであろう。

「ひとつ言えるのは出版業界の人間は、もっと本の話をしないとダメだよ。面白い本を見つけたらもっともっと言わないと。」

「本の雑誌」はそういう雑誌であり続けたい。

4月20日(日) ぼくのJリーグ・ライフ 04

 それは2年遅れで入学した専門学校の昼休みのことだった。
 ほとんどが2つ年下のクラスメイトのなかで、数少ない同じ歳のとおるが、興奮気味に話かけてきた。そのときはまだ付き合いが浅くわかっていなかったのだが、とおるは常に興奮しているのであった。

「スギエ! スギエ! ヤバイっちよ。浦和にJリーグのチームができるよ。マジ、どうしよう?!」

 正直告白すると僕は、とおるがその言葉を発するまでJリーグはおろか日本にプロサッカーリーグが出来ようとしていることも知らなかった。なぜなら僕にとってサッカーはやるものであって見るものではなかった。ダイヤモンドサッカーとW杯を別にして。だからとおるの問いかけに対して、僕は結構冷ややかに答えたと思う。

「でさ、スギエ。サポータークラブっていうのがあってさ、3人集まれば登録できるらしいんだよ。悪いけどスギエの名前貸して」

 このとき名前を貸さなければ、僕の人生はこんなに狂いはしなかった。いや人生が狂ったのではない。サッカーに、浦和レッズに狂ったのである……。

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 さいたまダービーのこの日、なぜか反対側のオレンジ色に染まったゴール裏に、僕を狂わせた張本人とおるがいる。あれほど一緒に浦和レッズを応援していたのに、とおるは、3年間の大阪転勤の後、浦和レッズから距離を置くようになった。その理由は深く聞いたことはないのだが、おそらく朝から並ぶことが面倒だったり、あの頃と少し変わったゴール裏の雰囲気に違和感を感じたのか、弱かったレッズが好きだったのかもしれない。

 そんなこと詳しく聞いたらケンカになるかもしれないので、僕は友情を大切にするため聞かないでいたのだが、あろうことかそのとおるが今年の年賀状で「大宮サポになりました!」と書いてきた。しかもこいつはやるとなったら即行動する男だから、大宮の年間チケットを購入し、開幕戦から通い出したではないか。

 そのとおるが反対側のゴール裏からメールを送ってくる。
「せまいよ、アウェーゴール裏。もっと開けろよ」

 僕は友達であることをすっかり忘れてメールを返す。
「さいたまには浦和だけ!」

 試合開始とともにメール交換は終わり、互いに声を枯らし、チームを応援した。結果0対0の引き分け。

 何をやっているんだ! 浦和レッズ! これじゃとおると見ていた頃のレッズじゃないか。ブーイングしていると、とおるからメールが届く。

「引き分けでブーイングか。やっぱ時代は変わったなあ……」

4月18日(金)

 通勤読書は、『落合博満 変人の研究』(新潮社)。

 落合を変人だと認識したことがなかったのだが、長嶋茂雄信者である詩人ねじめ正一の鋭い観察眼と江夏豊、赤瀬川原平、豊田泰光、藤眞奈美、高橋春男氏との対談を通すと、その異質な部分が浮き彫りになってくる。しかもそれを的確な言葉で表現されるから、腑に落ちるというか、なるほど、なるほどと私のなかに、新たな落合博満像がくっきり浮かんでくる。相当変だわ落合博満。でも私は好きかも。というわけで私も思わず落合ウォッチャーの仲間入りしてしまいそう。

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 新宿西口のY書店を訪問しIさんとお話していたら、別に支店にいらしたOさんが数日前に退職されたと聞き、ビックリする。以前の店舗のときは、営業ルートに乗っていたので訪問させていただいていただのが、一年近く前に異動になられてから、足を運びにくい場所になってしまい顔を出せず、もうずーっとお会いできずにいたのだ。それでもときにOさんのことを思いだし、ああ、時間を見つけて会いに行かなきゃ…と考えていたのである。

 一生の不覚。いろいろお世話になった、お礼も言えずのお別れになってしまった。Oさんと話したプロレスやサッカーや子供の話を思い出す。

 やっぱりどんな遠くてもきちんと訪問していなきゃいけないってことだ。嗚呼。

4月17日(木)

 通勤読書は、『股旅フットボール』宇都宮徹壱(東方出版)。
 休刊になってしまったサッカー雑誌「サッカーJ+」で連載されいたJ1から数えて4部リーグにあたる地域リーグを追った渾身のルポルタージュ。

 グルージャ盛岡、V・ファーレン長崎、ファジアーノ岡山FC、ツエーゲン金沢、カマターレ讃岐、FC岐阜、FC Mi−OびわこKusatsu、FC町田ゼルビア、ノルブリッツ北海道FC、とかちフェアスカイ ジェネシスと、まるでサカつくのようなチーム名が並ぶが、そのまさにサカつくのリアル版である、地域リーグのチームを、その地域の特性や立ち位置などとともに紹介していく。

 今やビッククラブなんて言われる我らが浦和レッズだって、元々は青年会議所が中心になって結成された「浦和にプロサッカー球団をつくろう会」が、本田に断られた末に、三菱とくっついて出来上がったチームなのだ。あの頃はJリーグへの参加が前提で始まったけれど、今はJリーグに入るのだって地域リーグで勝ち上がり、JFLにあがり、その先にJ2、J1があるのだから、その厳しさは大変なものだ、というか大変なものなんだ、とこの本が教えてくれた。そしてサッカーはサッカーバカによって支えられているということがよくわかる1冊。私ももっとサッカーバカにならなければならない。

 池袋を訪問。リブロの矢部さんと次回の「坂の上のパルコ」の打ち合わせ。パルコ文化、J文学の次はサブカルを扱う予定。

 ちなみに寝不足書店員続出帯の付いた堂場瞬一の文庫本がバカ売れしているとか。そういえば京都の山ちゃんから「堂場瞬一の鳴沢了にはまってます」ってメールが来ていたな。去年は今野敏が爆発し、今年はこの堂場瞬一の当たり年になるのだろう。警察小説のブームは終わらない。

 その後ジュンク堂の田口さんのところを訪問すると「この間来た某作家さんが『どうしたら書店員さんに気に入られますかね?』って聞くのよ。ビックリしちゃった。『先生、そんなこと気にしないで好きなように書いてください』って答えたんだけどね」と話される。

 この5年くらいの間に、書店員さんの立場は猛烈に上がったと思う。例えばこの日出た『東京バンドワゴン』小路幸也(集英社文庫)の文庫解説なんかも、書店員さんが書いていたりするのだ。昔だったら考えられなかったことだ。

 しかし問題は立場があがっても、待遇や環境は変わらないどころか酷くなっていることで、どうせ持ち上げるならその辺も変えて行かなければならないのではないか。まあ、どうしたら変わるのか私にはわからないけれど……。

 夜、某所にお呼ばれして酒を飲む。
 ピエロだと思って場を盛り上げることに徹していたら、いつの間にか23時。我がギャンブル列車こと武蔵野線は終電が早いので、一足お先に帰ろうとしたら、主催者の人に「今日はタクシーチケットがありますのでもうちょっとどうぞ」と声をかけられる。

タクシーチケット?? そんなもん使い方もわからん。

というわけで、走って新宿駅に向かい、電車に乗って帰宅。

4月16日(水)

埼玉を営業。
大宮のS書店さんを訪問すると、年配のお客さんの姿が目に付く。

「平日の午後は、年齢層が高いんですね?」と担当のSさんに伺うと
「そうなんですよね、これで夕方になるとサラリーマンやOLさんが増え出すんですね。休日は家族連れでいっぱいなんですけど」
と客層を教えていただく。

「じゃあ棚作りが大変ですね」
「時間があるときは、平日と休日で平台を入れ替えたりしているんです」

こういう手間が売り上げを上げていくのだろう。

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ぼくのJリーグライフ 03

 何度も書いているけれど、僕にとって一番幸福な時間のひとつは、平日水曜日に行われるサッカーで、特に浦和駅から歩いて駒場スタジアムへ向かい、産業道路の手前で、照明灯がスタジアムを照らしている瞬間を目にすると、何事にも代え難い幸福感に包まれる。

 この日これから行われる試合に対して期待と不安は当然あるのだが、それ以上に日常のなかにぽっかり空いた非日常の空間と時間が僕を高揚させる。

 途中のコンビニでビールとコロッケを買い、駒場スタジアムひな壇のコンクリートに腰を下ろした時お尻に感じる冷たさ。立ち見の柵の隙間から見える緑色の芝生。もしかすると僕は、試合以上にこの時間が好きかもしれない。

 ナビスコカップ 京都パープルサンガ戦

 まったくスペースにパスが出ることがなく、足元足元でしかボールが繋がらない。唯一縦にボールを動かせるのが闘莉王しかいないという現実が恐ろしい。これでは高原もエジミウソンもゴールしようがないだろう。

 そんなピッチに向かって駒場名物「指示ラー」の叫び声が張り裂ける。
「動けよ!」
「勝負!」
「戻すなよ!」

 前に行く気持ちのないチームは、同点にするのがやっと。
 それでも僕は、水曜の試合が好きだ。

4月15日(火)

通勤読書は、『誰かが手を、握っているような気がしてならない』前田司郎(講談社)。『グレート生活アドベンチャー』以来、思い切りハマっている前田司郎の新刊なのだが、実存に悩む神様と、その神様の声が聞こえるという娘がいる一家の何だか不思議な話。しかし相変わらずの文体で、ファンとしてはそれを読むだけで充分楽しめてしまう。

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午前中は高野秀行さんのところへ著者校をいただきに伺う。
しばし四方山話。

午後は、書店さん向けDM作り。
恐ろしいまでの集中力を発揮し、2時間で仕上げる。
しかしその瞬間、力尽き、夕方5時からは使いモノにならなくなってしまった。

4月14日(月)

 かつて、北上次郎=目黒考二が会社に住んでいた頃、数ヶ月に一度、いつもはトトロのように「フワー」なんて弛緩しきっている表情が、強ばっている日があった。ぶるぶるぽわんぽわんが似合う人なのに、ピリピリギリギリしているのである。なんかあるんすか?なんて気軽に聞けない雰囲気なのであるが、本の雑誌社には空気を読むなんてことはまったくなく、自爆兵器こと事務の浜田が「どうしたんすか?」と気軽に聞いた。すると帰って来る言葉はいつも同じであった。

「今日は大森望と『SIGHT』の対談なの!」

 そしてトトロの森に消えていくのである。ようは「読むのが怖い!」の対談が怖いのである。

 誤解されると困るので先に書いて置くが、目黒さんは決して大森さんが嫌いなのではない。それどころか大森さんの著作も全部読んでいるし、本誌の連載もいつも気にしている。おそらく他の雑誌の連載も読んでいるだろうし、そもそも若き大森さんに、連載依頼をしたのが当の目黒さんなのであるから、そのふたりの関係は私になんかわからないほど深いのである。

 ならばなぜ目黒がいつも対談の前に不機嫌になるか。それは目黒さんが一番嫌がることが、自分の好きな本を貶されることで(言葉が違うかも)、もはやそれは自分のことを貶される以上に嫌がるのであるから、そうとう愛書心が強いのだ。そういう人なのである。

 しかし「読むのが怖い!」は、目黒さんのお薦め本と大森さんのお薦め本と編集部の推薦本を読んだ上で評価していくものだから、ときと場合によっては、というかそもそも趣味がまったく違う二人であるから、目黒さんの大好きな本の欠点を、批評眼鋭い大森さんがビシバシ指摘していくことになる。そうなるともう、目黒さんは落ちこむ一方で、得意の「いいんだ、もう」状態に陥って、肩を落として帰社。やさぐれるのであった。

 そんな目黒さんの防御策はほんとうに好きな本はこの対談にあげないということなのだが、それも回を重ねているうちに大森さんにバレ、例えば「海道龍一朗なんて持ってこないんですか?」
指摘されたりしていたのには、大笑いであった。そこまでお見通しなのである、大森望。

 そしてそしてこの対談後、一度だけ目黒さんがうれしそうに帰ってきたことがあったのだが、それは『鴨川ホルモー』万城目学(産業編集センター)を取り上げたときで、京都もののファンタジーであるからこれは間違いなく大森望銘柄であるはずが、読むキッカケを失っていたようで、しかもその間に目黒が絶賛し、目黒銘柄と認知され、しかもそれが後に大森さんが読んで面白かった…と認めたときである。あのときの目黒さんの、まるでメンコや缶蹴りで勝った子供のような表情が忘れられない。

 その対談が『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才〜激闘編』北上次郎×大森望(ロッキング・オン)としてまとまったのでさっそく読む。

 対談がまとまるのはこれで2回目なのだが、今作は思い切って「書評漫才」とまで言えるほど、本当に爆笑もので、それはおそらく二人が回を重ねるごとに立ち位置を理解し、そこに徹したからこそできたのであろう。とにかくこんなに面白い書評対談はないし、読書というものの根源にまでいきつく「好きなものは好き」という奥深さもたまらない。本好き必読の1冊。しかし北上次郎=目黒考二のボケは、役柄ではなく天然であることを私は保証する。

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 本屋大賞が終わったら少しは楽になるかと思っていたけれど、そうではなかった。それどころか終わった後の方が忙しかったりするのはなぜなのだ。なんだか騙されたような気がするが、誰に騙されたのかわからない。参った。

 しかしこの半年、我が情熱のほとんどを捧げて制作してきた高野秀行さんの新刊『辺境の旅はゾウにかぎる』のかたちが徐々に見え始め、この喜びは何事にも代え難い。しかもその本を自ら営業できる幸せと言ったらない。ムフ。

4月13日(日) ぼくのJリーグ・ライフ 02

 スタジアムは、22人のフットボーラーがゴールを目指し真剣勝負をする場である。あるときは戦場と例えられ、あるときは悲劇が起こる。選手やそれを見つめるサポーターも常にすべてを賭けて戦っているのである。だからこそスタジアムで涙に暮れることはあったとしても、笑いが起こることはほとんどない。

 ところがこの日の埼玉スタジアムでは、試合開始前に爆笑が起きた。なぜなら対する鹿島アントラーズのサポーターが掲げようとした紙文字が、どうも「FUCK YOU REDS」と掲げたかったらしい直そうともがいているのが丸見えで、しかしどうすることもできない感もヒシヒシ伝わってくるのである。これを笑わずに何を笑えというのだろうか。できれば『Number』の表紙に使って欲しいくらいの衝撃的な絵であったし、おそらく今後、Jリーグ爆笑シーン・ベスト10というような企画があったら、ブッチ切りの1位間違いなし。

 スタジアムでは何が起こるかわからない。だからこそぼくはスタジアムへ通うのだ。

 そして試合も何が起こるかわからない。90分のうち、ほとんど鹿島アントラーズに攻められっぱなしであったのだが、我らが大将・福田正博の9番の意志を、ついに受け継いだ永井雄一郎が、2ゴールし、勝利してしまったではないか。

 優勝を狙うチームにおいての優先順位は

1)良い内容で勝つこと
2)悪くても勝つこと
3)良い内容で負けること
4)悪い内容で負けること

であり、この日の浦和は2)に該当すると思うのだけれど、監督交代などによってゴタゴタしたチームにとって、勝利以上の良薬はない。とにもかくにもスタジアムで爆笑するという貴重な体験をした一日であった。

4月11日(金)

銀座・教文館のYさんを訪問したら開口一番「淋しいよね」と切り出される。銀座で淋しい出来事といえば、当然、旭屋書店銀座店の閉店(4月25日午後6時で閉店される)で、それは同地域ライバル書店の書店員さんもまったく同じ想いなのであった。

「近いけどライバルっていうよりも、もう共存共栄の、仲間だよね。旭屋さんはこのジャンルが強いから、そこはお任せして、うちはこっちのジャンルを強くしようとか。新刊台もフェア台も、仕事の帰りによく見に行ったの。でもそれも偵察っていうよりは、ただ普通に本屋さんに寄ろうって感じだった。良い店なのよ。ほんと哀しいし、淋しい。」

私がいちばん最初に引き継いだときの、今ではボロボロになってしまった営業訪問リストを見ると、銀座には近藤書店があり、積文館もあり、日比谷には良文堂もあった。もちろん今は三省堂が有楽町駅前にあり、その隣の丸井の上にはツタヤがある。数や面積の上では、この10年の変化もまったくないように思えるけれど、やはりそこにあって欲しい本屋さんというのがある。

私にとって旭屋銀座店は、まさに営業の青春である。
なぜなら私が「本の雑誌」に入社し、前任者が体調不良だったため外回りの同行営業による引き継ぎはまったくできなかった。もはや自分でいって飛びこむしかない状況だったのだが、その本の雑誌社の営業として、初めて訪問したのがこの旭屋書店銀座店だった。

その頃の担当は大牧さんと塚本さんで、私はこのふたりから営業の基本をほとんど教わった。厳しくもあり、優しくもあり、書店員の誇り溢れる人たちだった。その誇りは棚に現れ、渋谷の旭屋書店同様、ヘンに偏りのない新刊台ときちっとした品揃え、独創的なフェアなど、まさに本屋さんの基本がここにあった。

『本屋大賞2008』に掲載されている実行委員の高頭佐和子さんが書かれた「本屋大賞の5年間」読みながらふと思い出したのだが、私はあの頃、確かに「本屋大賞的な何か」を暖めていたのだ。

そのひとつは書店員さん同士の横の繋がりで、営業で訪問していると、同じチェーンでありながら、ブツブツと途切れていて情報共有どころか人間関係もまったく出来ていない現状がとっても淋しかった。それをどうにかしたくて、当時の旭屋書店の文芸書担当者さんに声をかけ飲み会を開いたことがあった。確か越谷店のHさん、船橋店のYさん、渋谷店のHさんが参加してくれ、大いに盛り上がった。盛り上がったけれど、私はその社内の話にはまったくついていけなかった。でもすごく楽しかったし、いつもお世話になっている書店員さんの役に立てたという実感があった。こういうことの積み重ねが本屋大賞の創設につながっていくのだがそれはまた別の話だ。

世の中には無くなってはいけないものがあると思う。
私にとって旭屋書店銀座店は、絶対に無くなってはいけないものだった。
もはやどうすることもできれないけれど、私は一生忘れない。銀座に旭屋書店があったことを。そしてそこで私は、たくさんのことを教わったことを。

4月10日(木)

 電車が滅茶苦茶で、出社も歯医者も大遅刻。
 
 その歯医者で、歯ぎしりによる犬歯の磨り減りを指摘され驚く。今日の今日まで自分が歯ぎしりをしていたとは知らなかったのだ。
 
 そしてドクターは「歯ぎしりの原因はストレスですね。仕事大変ですか?」と言われたが、おそらくそうではないだろう。私のストレスは浦和レッズのアウェー観戦に行けないことしか考えられない。早速その旨を妻にメールしたところ、「あんたがアウェー観戦に行くと、今度は私が歯ぎしりして、おそらく歯がボロボロになるだろう」と即返事が返ってきた。人生はままならないものだ。

「本の雑誌」の聖地・御茶ノ水茗渓堂さんへ直納。
「雨のなかごめんねー」と笑うのは、なんと書店員として復活した克彦さん。近いうちに浜本や目黒とともに飲むことを約束。

 御茶ノ水・秋葉原・東京と営業。
「売れてるよ! 『ゴールデンスランバー』」の声が、各書店で響く。しかも他の伊坂作品も絶好調だとか。瀕死の文芸書に少しでも火が灯されるといいな。

4月9日(水)

 頑張って早起きして、いち早く会社に行ったら、会社の前にトラックが止まっていた。

 そのトラックには出来たばかりの「本の雑誌」5月特注号が数千冊積まれてる。会社に運び込まなきゃならないけれど、いるのは、私ひとり。どうしよう。居留守しようにも、運転手さんと大きな声で挨拶してしまった。しかも「本の雑誌」以外にも荷物が積まれているので、早く下ろして次の納品地にも早く行きたいだろう。誰だ、早起きは三文の得なんて言った奴は。

 というわけで、ひとりで運ぶ。ちょっと泣く。

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 本屋大賞の後処理をして、昼には宮田珠己さんのところへ、次号で使用する本を借りにいく。
 何気なく書いているのだが、私は興奮している。ウリャウリャである。

 その後しばし営業し、会社に戻ると6月刊行予定の高野秀行さんの新刊『辺境の旅はゾウにかぎる』のゲラが、カネコッチから届いていた。一日でも、一時間でも、一分でも早く、高野さんに届けたい。高野さんに連絡し、駆け足で駅へ。夜11時までそのまま打ち合わせ。こちらもウリャウリャである。

 何だか朝日新聞の爆笑連載「たまには手紙で」の伝書鳩のような一日だ。クルッポー、クルッポー。

4月8日(火)

第5回本屋大賞は、伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』(新潮社)に決定しました!

真っ赤な表紙の増刊『本屋大賞2008』を、よろしくお願いします。
このすべてが本屋大賞なのです!

4月7日(月)

 第5回本屋大賞発表会前日。

 明日のこの時間(18時30分)には受付を開始し、30分後には発表会がスタートしているのかと思うと、何だか緊張してくる。

 無事運営できるよう、様々なチェック作業が今夜も続く。……もちろん他の仕事も続く。

4月3日(木)

 市ヶ谷の地方小出版流通センターさんから恵比寿に移動する電車のなかで、周りが妙に華やかだと思ったら、どこかの会社の新入社員の一群に取り囲まれていた。そうかそんな季節なのか。人生で一度くらいこういうピカピカのスーツに糊の利いたYシャツの、できれば女の子に「杉江先輩、ちょっと教えてください」なんて言われてみたい。

 うちの新入社員ときたら、入社前からなぜか事務の浜田や進行の松村と飲み友だちで、今朝も浜田と「おっぱいは大きければ偉いのか?」なんて話をしていた。そもそも新卒の新入社員なんて募集したことがないのだから、一生「先輩教えてください」路線とは縁がないのだろう。こうなったら親友シモザワや相棒とおるの会社に紛れこんで先輩のフリをするしかないか。

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 やたら私のところに『石塚さん、書店営業に来ました。』(ポット出版)が送られてくるのは、よほど私の営業作法を心配している方が多いからだろうか。

 確かに心配である。というか私が一番心配しているのだ。こんな営業で良いんだろうかって。いや、これで営業といえるんだろうかと。もう10年以上そうやって毎日悩んでいるのである。

 しかし、皆様、心配はご無用です。私、発売されてすぐ購入しております。それにもう5冊もあるので充分です。そしてこれからもし営業について聞かれることがあったら、この本をお薦めすることにしておりますので。

4月2日(水)

 『本屋大賞2008』の見本を持って取次店廻り。

 会社にいると品切れになってしまったチベット写真集『風の馬』渡辺一枝の、初版刷部数が間違っていたのではないかとチクチク責められる。そんなこといったって未来のことは誰にも予測できないんだから仕方ないじゃないか……。

 御茶ノ水、飯田橋と廻り、午後に板橋のK社さんを訪問。

 直接取引がないK社さんを私が訪問するのは、12月と4月のみで、だからこそ私にとって年や年度の区切りになる。川沿いの桜を見ながら、今年も無事、本屋大賞の発表会を迎えられることにホッとする。

 夜は先日終了となった椎名さんの写真展の打ち上げ。代々木上原の居酒屋で深夜までしこたま飲む。

 椎名さんから「おれはお前らに感謝しているんだ」なんて言われたら、飲まないわけにはいかないだろう。静かに、泣きながら飲む。

4月1日(火)

『本屋大賞2008』の事前注文〆作業のため、終日社内で注文短冊とデータの付け合わせ。自分なりの目標を達成しているので大変心地よいのだが、小さな会社は誰かが誉めてくれたりしないから、ちょっと淋しい。「よくやったな」なんて肩を叩いてくれたら、私は号泣する可能性が大なのだが、叩いてくれない。しょうがないから自分で肩を叩く。ぽかぽか

 そうこうしているうちに中央精版印刷のTさんが、見本を持ってやってくる。なんと! 浦和レッズカラーの真っ赤ではないか!! 今回は装丁を寄藤文平さんにお願いしたのだが、いやはやうれしいというか、素晴らしい。しかも中のデザイン&組版をカネコッチがガリガリやってくれたので、かっこよく読みやすい。思わず頬ずりしてしまう。

 そういえば先日、このTさんが「ぼく、レッズ戦、見に行きたいんですよ」と呟いたので、さいたまスタジアムに連れて行ったのだが、その日はオジェックが浦和レッズの指揮をとった最終戦になってしまったのである。すなわち浦和レッズに勝利を運べない営業マンなのである。そんな奴は本の雑誌社出入り禁止だ! と追い出そうかと思ったけれど、良い仕事をするので許す。

 通勤読書は、『裏方 プロ野球職人伝説』木村公一(角川文庫)。
 単行本が出たときにてっきりありがちな泣ける系の裏方話かと思って敬遠していたのだが、文庫になったのを機に読んでみたら、良い意味で裏切られた。

 解説で重松清も書いているのだが、これは仕事を「正しく」描いたノンフィクションで、ヘンに肩入れしたり、過剰な演出もしない。たんたんとプロ野球の裏方仕事である審判やグランドキーパーやブルペンコーチを日常を描いていくのだが、だからこそ伝わるものがいっぱいある。私は特にグラブメーカーの話にグッと来てしまった。

 娘の今夜の伝言は「水ポケモンを捕まえて!」であった。
 ロールプレイングゲームというのは1から進めるから物語を理解できるのであって、いきなり「水ポケモン」といわれても、水ポケモンが何なのかわからないし、捕まえる方法もまったくわからない。知るか!アホ!と思いつつもDSの電源を入れ、町や道路をウロウロ。1時間後、無事、水ポケモンをゲット。何をしているんだ、俺は…。

3月31日(月)

 前夜、浦和レッズの2008年がついに明けた。良かった。
 けれど心の中にある重しが埋め込まれた。

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 2月の新刊で、祈る想いで編まれたチベットの写真集『風の馬』渡辺一枝著が朝日新聞書評欄で紹介され、朝から注文の電話がパタパタはいる。うれしい。けれどチベットは大変なことになっており、一枝さんの祈りは、深くなるばかり。

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 『本屋大賞2008』の事前注文〆切を前にして、バタバタの営業。

 とあるベテラン書店員さんから「杉江君、もう無理だよ。昔だったら社員3人にアルバイト何人もで見ていた売り場を、今は契約社員ひとりで見ているんだから。しかも新刊が毎日これだけ大量に届けば、それぞれの本に関心をもって仕事するなんてとてもじゃないよ。入ってきたもんを出して、出した分返品するくらいしかできないし、会社側は数字を見て、今日何箱返品を作れなんて言ってくるから、それこそ今時期だったら並べずに即返だよ。胸が痛いよ。それにそういう子たちの給料は月に十何万でしょ。一人暮らししていようもんなら、本なんて買えないじゃん」と恐ろしい現実を突きつけられる。

 心に浮かんだのは開高健さんが、ファンや知人に色紙を頼まれるとよく書かれたという言葉。

 明日、世界が滅びるとしても
 今日、あなたは
 リンゴの木を植える

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 夜、元本の雑誌社の編集者・カネコッチと6月刊行予定の高野秀行さんの新刊『ジャングルの旅はゾウにかぎる』の編集打ち合わせ。編集という仕事は営業同様そう簡単にできるわけではなく、私にできることはまだ限られているので、ベテランであり、一番信頼しているカネコッチにもろもろ相談とお手伝いをお願いしている。いつもどおり、カネコッチの鋭い指摘にタジタジとなり、そして自分のできなさ加減に激しく落ちこむ。

 そんなときは、我が最愛のハードボイルド作家ジョージ・P・ペレケーノスの新刊『変わらぬ哀しみは』(ハヤカワ文庫)を読む。まだ冒頭80頁だが、すでにペレケーノスらしい視線と、市井に生きる人々の人生の交差が始まっており、この後どう転がっていくのか、楽しみで仕方ない。

 一気に読みたいところだったが、家に帰ると、娘からの手紙が置かれていて、そこには「ポケモンのレベルアップをしておいてね!」と書かれていた。結局、あれだけ嫌がっていた小学校は皆勤賞で賞状を貰ってきたのだが、学校に行かせるため「休まず行ったらDSのソフトを買ってやる」と言っていたのをしっかり覚えていて、春休みの今、朝から晩までポケモンのゲームにハマっているのだ。しかしポケモンのレベルアップは面倒なようで、それは私に任されている。

 何が哀しくて深夜3時まで、たいして可愛くもないヘンテコな生きものをシンカさせなきゃいけないのか。ああ、でも結構楽しくなってきた……。

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