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10月16日(木)

ばかもの
『ばかもの』
絲山 秋子
新潮社
1,365円(税込)
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 そろそろ「本の雑誌」のベストテンを決める座談会が開催になるので、今年読んだ本のなかで面白かった本をリストアップしていたのだが、それらのリストを蹴散らすすごい小説が出た!

『ばかもの』絲山秋子(新潮社)である。これはおそらく山本文緒『アカペラ』(新潮社)と同テーマになるであろう小説だと思うのだが、「バカ!」でも「バカヤロー!」でもなく「ばかもの」なのは、そこに愛情があるからだ。心配してくれる人がいるというのが、人間を救う大きな手がかり足がかりなのである。そう考えると誰もが救われ、救うことができる世の中なのではないか。

 そんな小賢しいことなんてどうでもよく「やりゃーいーんだろー、やりゃー」とバサバサと服を抜いてセックスに向かう額子と、「でも俺、下手だろ」と不安げに聞く年下のヒデ。ふたりの出会いと別れが恋愛という枠を超えたところで描かれる傑作である。私はこういう小説が今一番好きだ。

 魂の復刊!『新装改訂版 本の雑誌風雲録』の見本を持って取次店廻り。

 会社に戻りがけにジュンク堂書店新宿店をのぞくと、POPというか看板に『「本の雑誌」炎の営業日誌』がどでかく書かれているではないか。レッズファン。うんうん。ひとり営業。うんうん。小遣い少々。......それは秘密である。

 それはともかく私はこの恩にどう答えたらいいのだろうか。いやこのお店だけではない。本来であれば店頭に並ばず客注対応で済むような本を、多くの書店さんが店頭の、それもとても良い場所に並べてくれている。ときわ書房船橋本店では新刊平台の角に宇田川さんが並べてくれていた。それどころか銀座の教文館ではYさんが名物の銀座通りの面陳棚に並べてくれているらしい。

 私は本当にどう恩返ししたらいいのかわからない。感謝の気持ちを伝えることしか出来ない。
 ありがとうございます。


 夜はジュンク堂書店池袋本店に向かい、『おかしな時代』出版記念、津野海太郎さんと平野甲賀さんの対談。偉大なふたりのはずなのに、「プロになりきれなかった」という発言が飛び出し、いやはやそれなら私はどうしたら良いのか。会場に来ていた坪内祐三さんの質問が素晴らしかった。こちらもさすが坪内さんである。

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