第5回「ドラマ・映画だけじゃわからない! 原作マンガの凄味」

Page 1 ドラマの原作マンガに駄作なし!

ドラマ・映画の原作マンガに駄作なし!

『神の雫』、『ゴッドハンド輝』、『超人ウタダ』、『猿ロック』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『オトメン(乙男)』――。

今年放送されたマンガ原作のドラマをざっと思い出してみても、これだけ思い浮かびます。最近の映画にしても『MW~ムウ』、『20世紀少年』、『デスノート』など、テレビ・映画業界には、いったいどんだけマンガ好きが多いのかと思ってしまうほど、マンガ原作のドラマ・映画は次々登場します。しか~し! ドラマや映画だけを見て、原作を評価してはいけません。マンガ原作のドラマ・映画は玉石混淆。とはいえ、良作だからこそドラマ化・映画化されるのですから、原作が良くないわけがないんです。

そして今回のお題にあたって、ひとつ実験的な試みをしてみました。自分のBlogでユーザーにコメントを募ってみたところ、ありがたいことに362件ものコメントが! 違う視点からの意見など、すんげぇ参考になりました。参加してくれたみなさん、本当にありがとうございました。

鬼太郎のキャスティングの源泉は原作にある

ゲゲゲの鬼太郎 1 鬼太郎の誕生 (中公文庫 コミック版 み 1-5)
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水木 しげる
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さて本題。まず良作の代表例として、思い浮かんだのが『ゲゲゲの鬼太郎』(水木しげる)。映画版はマンガというよりアニメが土台になっていると思われるかもしれませんが、そもそもアニメ版の『ゲゲゲの鬼太郎』はキャラクター、ストーリーともに意外と原作に忠実に作られています。初期の作品は多少グロテスクだったり、大人向けの表現(笑)もありますが、そこを丸めて絵柄を全体に少し暗くした程度。映画のキャスティングがいかに絶妙だったか、アニメだけでなく原作とぜひ照らし合わせてみて頂きたい!

主役である鬼太郎のウエンツ瑛士もかな~り良かったんですが、個人的にツボだったのは、大泉洋のねずみ男と田中麗奈の猫娘。Blogの読者にも「大泉洋、ネズミ男にしか見えへん!」「田中麗奈、あんたは猫娘や!」というコメントがありましたが、まったくその通り。他にも子泣き爺の間寛平や、声のみの出演となった一反木綿の柳沢慎吾、ぬりかべの伊集院光の配し方も実にお見事。そして何より、「顔のみ出演」という異例の配役となった輪入道(わにゅうどう)の西田敏行......。堤幸彦という監督は作品によって評価がわかれがちですが、キャラクターを活かす力は日本の映画監督のなかでも間違いなくトップクラス。好き放題にキャスティングさせるとここまでハマるのかと思えるほど見事なキャスティングでした。

逆引きのような読み方ですが、その配役の妙味を楽しむためにも映画を見た方はぜひ一度コミックスを読んでほしい。映画やアニメだけからはわからなかった、キャラクターが持つ微妙な味わいが感じ取れるはずです。水木しげるの画風は、最初は少しとっつきにくいかもしれませんが、読み進めるうちにやみつきになる味わいがあるはず。紙芝居作家として世に出てから60年以上。しかも戦中に左腕を失ったにもかかわらず、いまなおプロのマンガ描きとして活躍している。ぜひとも一度は原作に触れてみてほしい。マンガ、アニメ、映画といったジャンルの垣根を越えたパワーが感じられるはずです。

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