第87回:山本文緒さん

作家の読書道 第87回:山本文緒さん

昨年6年ぶりの小説『アカペラ』を刊行し、長年の読み手たちを感涙させた山本文緒さん。男女問わず幅広い層に愛されている小説の巧者は、実は幼い頃はあまり活字の本にピンとこなかったのだとか。では、これまでにピンときた作品はというと? 人生で1番好きな本から、ブログ本まで、現在の文緒さんの血となり肉となっている作品たちが分かります。

その5「新刊チェックが好き」 (5/6)

ジャージの二人 (集英社文庫)
『ジャージの二人 (集英社文庫)』
長嶋 有
集英社
463円(税込)
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赤朽葉家の伝説
『赤朽葉家の伝説』
桜庭 一樹
東京創元社
1,785円(税込)
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駅神 (ハヤカワ文庫 JA ス 2-2)
『駅神 (ハヤカワ文庫 JA ス 2-2)』
図子 慧
早川書房
691円(税込)
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グラスハート (コバルト文庫)
『グラスハート (コバルト文庫)』
若木 未生
集英社
514円(税込)
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夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))
『夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))』
ロバート・A・ハインライン
早川書房
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キス&ネバークライ(1) (講談社コミックスキス)
『キス&ネバークライ(1) (講談社コミックスキス)』
小川 彌生
講談社
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アメショっす!
『アメショっす!』
桃にゃん
主婦の友社
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うにの秘密基地 (AmebaBooks―スターPetシリーズ)
『うにの秘密基地 (AmebaBooks―スターPetシリーズ)』
うにまむ
アメーバブックス新社
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――さて、その後、読書の時間は。

山本 : 最近はあまりとれていないんです。生活サイクルは定まらないので、この時間に読む、という習慣はあまりないですね。寝る前か、料理の途中、何かを煮ている、温めている合間か、洗濯機をまわしている間、とか。読む必要があるときは喫茶店にも行きます。

――落ち着けるお気に入りの店があるのですか。

山本 : いえ、落ち着けないところがいいんです。ドトールでいい。ちょっと試しに開いてみたらとまらない、という感覚になれる場所がいいんです。

――ちなみに執筆のリズムは。

山本 : 夜型ではなくなりました。ものすごくつまっているときは徹夜したりもしますが、今は午前中は家事をしたりウォーキングをしたりして、午後、昼食の後、日が暮れるまでパソコンに向かっています。

――読む本はどう選んでいるのですか。

山本 : 送られてくるものは読みますし、同年代、同性の方のものはだいたい。それも勉強という意味ではなく、面白いから。『新刊ニュース』や『新刊展望』が好きで、新刊の一覧を見て、やっぱりタイトル買いをしますね。本屋さんに行くとついついたくさん買ってしまって、積まれたままになった本も。買ったまま読んでいなかった本では、今、自分のなかで長嶋有さんがブームです。まず読んだのが『ジャージの二人』。秘書が映画化作品を観てすごくよかったと言うので、私も観たいと思い、観る前に原作を読んでおこうとして、あのとぼけ具合にハマってハマって。ギリギリくさくないところにいっていて、うまくいえない味がある。説明しづらいです。そこから『パラレル』を読み、芥川賞を受賞したときに『猛スピードで母は』は買ったはず、と家の中を探して。はやく新刊も読みたいんですけれど、一応過去の作品を全部読んでからと思っています。ああ、一人の作家の人の全作品をおって読むことは多いですね。

――他に全部読んだ、という方は。

山本 : 桜庭一樹さん。『私の男』で直木賞をとられる前に『赤朽葉家の伝説』を読んで、すごいものがキター! と思いましたね。角田光代さんや唯川恵さんも全部読んでいます。少女小説を書いていた頃に知って、ライトノベルを好きになるきっかけを作ってくれたのが、ライトノベル出身の図子慧さん。今は『駅神』のシリーズが好き。すごく尊敬している作家さんです。それと、今もライトノベル畑にいる若木未生さん。『グラスハート』というシリーズがコバルトから出ていたんですが、今度その最終巻が幻冬舎コミックスから出るということをブログで発見して、今からコーフンしています(笑)!! こんなにすごい作品をなんでみんな知らないのかと思う。図子さん、若木さんにはダイレクトに、文章など書き方の影響を受けました。

――ところで、海外小説はあまり読まないのですか。

山本 : 翻訳文体がどうしてもダメなんです。春樹さんの訳なら、と読んだアーヴィングやカーヴァーもダメでした。昔読んだものでは『夏への扉』は印象に残っています。今、翻訳小説で読むとしたらカズオ・イシグロくらいかな。実際には面白い翻訳小説がたくさんあるのに、私が読まず嫌いなだけかもしれません。

――漫画もずっと、読み続けているんですよね。

山本 : 中年になったらやめると思っていたけれど、これはもう一生やめないでしょうね。たぶん、私より10歳くらい上の方だったら信じられないかもしれない。同世代の人なら、やめられなくて読み続けている人は多いと思います。

――漫画も変化というか、進化しましたよね。

山本 : 以前は中年の独身女性に向けての漫画なんてなかったですよね。やまだ紫さんの『しんきらり』を読んですごく大人、と思った記憶がある。最近好きなのは小川彌生さんの『キス&ネバークライ』。フィギュアスケートの話で、これがすごくいい。コミックスでじっくり読みたいから、連載では読めないくらい。

――考えてみると、相当数の蔵書ではないでしょうか。

山本 : 段ボール箱に入れて積んでいます。槇村さとるさん段ボール箱が何箱も積んであり、いくえみ綾さん段ボールがあり、岡崎京子さん、桜沢エリカさん...。伊藤理佐さんの段ボール箱もあります。

――そういえば以前、収納術の本を読むのが好きっておっしゃってましたね!

山本さん秘書・マシマロさん : 収納術の本の段ボール箱もあります(笑)。

山本 : もう、収納のことばっかり考えています(爆笑)。それと、ブログ本も好きです。ブログで見るのと紙で読むのはまた違うんですよね。それも猫ブログ。すごくクオリティが高いんです。今きているのは『アメショっす!』。これがすごく売れている。...もう少し言ってもいいですか。

――もちろんです!

山本 : 『うにの秘密基地』というのもいいんです。猫ブログって、普通の会社員の方とかが、猫の写真とそれに付随するコメント書いているんですが、ものすごくセンスがいい。しかも1日3回くらい更新してくれたりする。つまり1日3回、4コマ漫画のいいやつが読めるようなものなんです。しかも可愛い。

――ご自身も猫を飼っていますよね。

山本 : もちろん、自分も猫ブログをやりたいんです。でもカメラが嫌いなようで、可愛い顔が撮れないんです...。

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