第106回:大島真寿美さん

作家の読書道 第106回:大島真寿美さん

大人の女性たちの人生模様から若い世代の成長まで、幅広い作品を発表、リズミカルな文体で現代の人々の人生を鮮やかに切り取っていく大島真寿美さん。実は幼い頃からジャンルにこだわらず幅広く本を読まれてきた様子。心に残っている本は? 劇団を旗揚げし、その後小説家を目指した経緯とは? 大島さんの気さくなお人柄により、とても楽しいひとときとなりました。

その6「新作『ビターシュガー』とその姉妹編」 (6/6)

ビターシュガー
『ビターシュガー』
大島 真寿美
小学館
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虹色天気雨 (小学館文庫)
『虹色天気雨 (小学館文庫)』
大島 真寿美
小学館
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戦友の恋
『戦友の恋』
大島 真寿美
角川書店(角川グループパブリッシング)
1,620円(税込)
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――最新刊の『ビターシュガー』は『虹色天気雨』の姉妹編。長年のつきあいの女性三人のお話ですが、最初『虹色天気雨』を書くときには、どういう"ふわふわ"があったのかと。

大島:もやーっと、子供預かっている女の人の話だろうなあと思ったんです。で、うんと静かな話になるだろうと思っていたら、ぜんぜん違うものになりました。

――三人のタイプの異なる女性像というのも、自然と出てきたものなのでしょうか。

大島:そう。子供を預かることになる市子さんも、あんなに人を引き寄せる人ではなかったし。

――『戦友の恋』もそうでしたが、くっつきすぎず、どこかドライな女の友情の形がすごくいいですよね。

大島:狙って書いているわけではないんです。私が書くと、ああいう距離感になるだけで。でも、関係というものは書きたいですね。面白い関係、いい関係、友達というひと言では言い表せないような関係。

――『虹色天気雨』は市子さんが子供を預かる話、『ビターシュガー』は市子さんが大人の男を預かる話になっていて。

大島:え! あっ! 今気づいた! そうだねそうだね、相似形になっているんだ! あーびっくりしちゃった。

――えっ。無意識のうちの設定だったんですか。

大島:それはまったく考えてなかった。市子の友達のまりが、恋愛してそうだなあって思ったところから始まったの。市子さんちの居候のことは、書き始めてから意識したんだもの。自分の実感として、四十歳をすぎてから恋愛相談が増えたので、今「四十歳恋愛説」を唱えているんですよ(笑)。それで、四十路に入ったまりさんの恋愛を書こうと思ったんですね。いろいろ経験した後で人を見る目も変わっているし、今までと違う恋愛をしそうだなと思ったし。でもそうかー。相似形かー。これはそういうシリーズなんだね。次を書くときの参考になったな。

――お、このシリーズは続いていくのでしょうか。実は彼女たちがどう年を重ねていくかすごく気になっていて。

大島:彼女たちの老後は書きたいですね。でもいきなり老後もなんなので、ちょっとずつ進めていこうかな、と。きっとこの人たちが老人になる頃には、「老後」のイメージが変わっていると思うんです。また違ったものが書ける気がする。すごく面白い「老後」を作ってくれそうなので、私も参考にしたいんです。

――それは楽しみです。でも書くにしても、老後はずいぶん先になりそうですね(笑)。では最後に、刊行予定を教えてください。

大島:来年の二月に、ヴェネツィアが舞台の書き下ろし『ピエタ』がポプラ社から出ます。そのあと、夏に小学館から連作短編を出す予定となっています。

(了)