評価:A 中学生の頃をなんだか思い出してしまった。部活仲間とシカト。奇妙な学校側の行動と親の態度。ヤンキーがたむろする場所、馬鹿野郎な級友たち。なんだかみんな懐かしい。それに、好きな女の子があの委員会だからぼくも、っていうのはもの凄い判るなあ。だから、あの頃のもやもや感もこの本は思い出させてくれた。ちょっとこの本はいろいろ考えさせてくれるんじゃないかなあ。もしかして、今立派な大人だって、中学生の頃なんかは、今の子供と全然変わらないんじゃないかなあとか。いやもうほんとうにいい本だったと思う。できれば新聞連載時のイラスト付きのほうも文庫化してくれないかと、勝手に希望もしたりして。
評価:C 警察だけでなく、この主人公の辛い立場は、個人的に充分理解する事ができたりして、異様に共感できた。密告したワケでもないのに、白い眼で見られたり、英雄視されたり。ただ、やっぱり気になるのは、主人公が思いを寄せる女性。なんかこの女性が厭な感じなんだよなあ。どうしても出てくるたびにむかついてしまったり、なんでこんな女性の為に、熱き主人公は戦うのだなどとも思った事もしばしば。正義や自分の誇りの為でなく、独りの女性の為に頑張るという主人公も確かにアリだと思ったが、やっぱりこの核になるはずの女性がムカつくため、ちょっと物語にはいりこめなかった。
評価:B さて、ひと息付きました、本番はこれからですよ、という小野不由美の声が聞こえてきそうだった。「十二国記」はいつまでたっても次の作品を読みたくなるのだが、またこの短編集でもそう。早く次の巻出ないかなあ。まあ、それはうっちゃっておいて、この本だけれども、相当良かったです。今まで描いていなかった、もしくは見えなかった部分を書いているのが堪らない。特にタイトルにもなっている「華胥」。今までに無い、滅び行く国の中心からの視点は哀しいの一言。ちょっと涙ぐみました。これはファンには堪らないのかもしれないけど。ただ、この本は初心者がいきなり読むのはいかがなものかなという典型ではないだろうか。
評価:B 最初からラスト寸前まで、酷い事が主人公に降り続けるという話は駄目だ。とにかく読んでいる最中にイライラして堪らない。電車に乗っているいるときもそうだし、家にいて読んでいる時もそう。こんな時になんかあったら大抵爆発してしまう、という単純野郎の自分には向かない物語だ(過去に「吉里吉里人」「最悪」で怒りつづけた過去あり)。超ムカツク役人軍団、自然もクソも無い都会、文句だけを言う人々。ああ、もう思い出すだけでムカツク。作者からすればありがたい読者かもしれないが、どうもなあ。といいつつ、大抵一気に読み終えてしまう自分が恐い。
評価:A これ実は最初ドラマで入りました。と、いう事で、若干主人公マコトがトキオなのですが、やはり本で読む方が抜群に面白い。輸入物ハードボイルドの焼き廻しでもなく、最近流行のノワールほど過剰でなく、重すぎず、軽すぎず、読んでいて妙に心地が良い本だった。なんだか石田衣良独特なんだよなあ。新しい国産ハードボイルド。個人的には一番長い、チーマーGボーイズvsレッドエンジェルスの話「サンシャイン通り内戦」よりも、阿呆なガキの安易でムカツク事件「エキサイタブルボーイ」が一番良かった。マコトの友人でヤクザになったサル。こいつの熱くて哀しい話が、いつおきてもおかしくないような事件を、面白い角度から見せつけてくれた気がしている。
評価:E 採点本の中にこの本が入っていた時、小躍りしてしまった。前から気になっていたんだよね。と、思いつつ読んでみると、なんというか、残念ながらEの評価をつけざるを得ないという感じ。なんたる悲劇だろうか。この本の中身では無いが、天国から地獄へという感じ。もともと猟奇的な殺人事件を追いながら、おかしくなっていくらしいぞ、エルロイっぽいぞという噂を嗅ぎつけていたのだが、読んでみればタダのエルロイの亜流。目新しさもなし、文章が早い感じなだけで、物語のスピード感がまるで無し。ここまでゆっくりでいいのか? とにかく期待していただけあって、このがっかり度は例えようが無い。
評価:A 不覚を取ったとしか思えない。無念と言ってもいいかもしれない。これ、読み終わった後でようやく気が付いたんだけど、無茶苦茶。そんな阿呆な、とか、んなワケねえだろの連発。なんであそこで大蛇がでてくるんだよ。どうして核弾頭売ってんだよ。と、今にして思えばてきとーな感じなのだが、読んでいる最中は恐ろしい事に全く何も疑問に思わず、しかも夢中になって読んでしまいました。よってAを付けざるを得ない。無茶苦茶だなと思いながらも最後まで行くか、途中で放棄するのが普通なのかもしれない。そんな他の採点委員の評価がちょっと恐い作品。
評価:D 著者の自伝的小説という事なのだが、ちょっと最後まで足場を見つける事ができずに終わってしまった。様々な有名詩人なんかを引き合いに出していたり、自作の良い詩が出てきたり、この辺りは面白かったのだけれども、なんだろうなあ。もしかすると、天才詩人を主人公にしている事に抵抗を感じているのかもしれない。自伝的小説って事は、自分の事を天才と言っているようなものでしょ。確かに凄い人のようだけど。それと、余りにも第三者的な書き方が、読者である自分を寄せ付けなかったのかもしれない。
評価:C ほとんど漫画。憎めない悪党ども、家出娘、娼婦なんかの追いかけっこなだけ。でも強力な技が二つ、この本にはあった。まずとにかく過剰な表現。例えば、「瞬時に原子レベルにまで破壊できそうな目つき」とか。 それと、登場人物があまりに個性的。阿呆な借金取立屋なんて、良かったなあ。それに、行く先々で出会う人、すれちがう人々、ちらりと出てくる人々も皆個性的。日本には余りないロードノベルというものを味わえました。ただ、ちょっと追っかけが長すぎる気がしないでもない。まあ、このいたちごっこが全ての作品なので、仕方ないけど。
評価:C 主人公が弁護する貧乏人をいじめる金持ちや、悪ガキどもと裏の話、どこがどう繋がるのか見えてこないので、確かに楽しめるかもしれないが、どうしてもだらだら続いているように思えて仕方がなかった。ただ、自分は、不思議な現象を当たり前のように受け入れていて、当たり前のように読者に納得させている所はなんだか良かったなあ。例えば主人公は旧友の亡霊を当たり前のようにみているし(しかも格好いい事をいったりもする)、依頼人の奥さんなんてなんでも見えちゃう。この話でこんな所で興奮するのはおかしいかもしれないけれど、この設定は面白かった。まあ、設定がいいからなんだといわれると、ちょっと困ってしまう。