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平野 敬三の<<書評>>
鳥類学者のファンタジア
【集英社文庫】
奥泉光
定価 1,300
円(税込)
2004/4
ISBN-408747688X
評価:B+
1990年代の英ロック・シーンを席巻したストーン・ローゼズのギタリスト、ジョン・スクワイアは人気絶頂の最中、「90年代はオーディエンスの時代だ」と言った。後のインタビューで、そんな事を言った覚えはないと真顔で語りファンを失望させたが、ジョンの真意はともかくその発言は多くのリスナーの価値観を一変させたことは間違いない。音楽は聞き手との関係においてこそ存在意義を持つのだという考え方は、その後のロック評論にも多大な影響を与えた。ジャンルこそ違うものの、本書の著者もまた、音楽を語るということは音楽と聞き手との関係性を語るということである、ということに自覚的な書き手である。鳴らされている音そのものを語るだけではその音楽を語ったことにはならない。そんな思いが随所にあふれている。ここに書かれているのはジャズについてのあれこれだが、僕は奥泉氏の音楽観に大いに共感し、熱狂し、刺激された。小説としての魅力もさる事ながら、スケールの大きな音楽論としてもたっぷり楽しめる。
ぼんくら
(上下)
【講談社文庫】
宮部みゆき
定価 620
円(税込)
2004/4
ISBN-4062747510
ISBN-4062747529
評価:A
ハードカバーで読んだのは、確か『理由』で直木賞を取ったすぐ後で、もう一発現代ものを期待していた僕は、時代小説というスタイルにすごくがっかりした記憶がある。記憶というのは恐いもので、そのがっかりした気分しか後には残らず、『ぼんくら』は僕の中の宮部みゆきランキングでかなり下位の方に位置づけられていた。
再読、してみるものである。構成の妙について書いてしまうと読んだときの楽しみが半減しそうなので詳しくは触れないが、ミステリーと人情ものという、宮部作品の二大要素が最上の形で詰め込まれた名品だから、誰にでもオススメできる。子供たちのキャラクターがとりわけ強烈で、へんてこりんな言動の中にもどびきりの愛敬をにじませる彼らの存在が、この哀しい物語にどこかあたたかなものを感じさせるのだろう。と同時に主人公・平四郎の、己を真摯に見つめるまなざしも非常に魅力的だ。真実を知るのが本当に幸せなのか、という重い主題を「哀しさ」だけで塗りたくらないところがこの著者を多くの人が好む理由なのだと思う。
パレード
【幻冬舎文庫】
吉田修一
定価 560
円(税込)
2004/4
ISBN-4344405153
評価:AA
青春小説を装いながら、小説のタイプとしては貫井徳郎の『慟哭』に近い(また引き合いに出してしまった)。この衝撃のラストは読み終わってからもじわりじわりと効いてくる。うーん。この衝撃は初めから通して読んでいないと分からないから、未読の人に「こうこうこうでこんなにすごい小説だよ」と説明できないのがもどかしい。とりあえず、読め、そして語らおう、酒でも飲みながら。そんなことしか言えないのだろう。それで、語り合うのはきっと、まったく本編に関係ない、些細な場面や台詞なんだろう。希薄な、それでいていとおしい人間関係、そういうものを描いた小説は数あれど、そのいとおしさの中に潜む不気味さをここまで鮮やかに浮かび上がらせたものは、僕が知る限り本書だけだ。そしてここには、その不気味さが潜んでいるからこそキラキラ輝く風景があることも書かれてある。いま僕は、その他の課題文庫を放り出して、もういちど本書を読み返したい気持ちでいっぱいである。困った。
容姿の時代
【幻冬舎文庫】
酒井順子
定価 520
円(税込)
2004/4
ISBN-4344405056
評価:D
目新しい見解がひとつもない。エッセイとしてこれは致命的だ。なんでこれを本にできたのか、いくら考えても謎である。思えば、学生時代、特定の友人たちとはここに書かれているような人間ウォッチングを飽きることなくやっていた。コンパでも輪には入らずにそこでの人間模様を眺めて毒づいて爆笑しているような(当然、周囲からはひんしゅくを買っていたが)人たちが学食堂に集まって、だらだらと観察結果をネタに一日中ガハハハ笑い合っていたのである。だから、本書を読んで「ほんとほんと」と思うことはあっても、でも別にそれをもっと何倍もおかしく話せる友達いるし、なんてことも思ってしまう。特に書いてあることに異論があるわけではないが、というよりいちいち共感したりするのだが、エッセイは観察眼だけでは駄目なのだろう。まああの松尾スズキでさえ、まったく笑えないエッセイを書いてしまうこともあるのだから、なかなかに難しい分野ではある。
働くことがイヤな人のための本
【新潮文庫】
中島義道
定価 420
円(税込)
2004/4
ISBN-4101467234
評価:B+
日経から単行本で出たときにはやたらと売れたけど、はたして何人が「???」となったか心配である。だって、書店では平気で中谷彰宏なんかの隣に置いてあったのだから。……この本はビジネス書でもなければ、自己啓発本でもない。単なる「珍獣の見世物」である。中島の一連の著作での一貫した主張は「負の要素から目をそらすな」ということ。あの人が嫌いだということ、自分の致命的な欠点、自分の人生が空虚でつまらないということ、その他もろもろの「気がつかないふりをしておきたいアレコレ」を、自然なものとして向き合うこと。それが彼の思索の出発点となる。ただ、こう書いてしまうと「ありのままの自分を受け入れて自然に生きよう!」という類の自己啓発本と思う人がいると思うが、中島義道はそこで「ありのままの自分を受け入れる」ことの過酷さ・生き難さを徹底に見つめるのである。それがあまりに常軌を逸しているので毎回楽しみなのだが、今回もまた、珍しい小動物をながめる感覚で楽しく読めた。僕はこの人の本を読むといつも、いろんな意味で安心する。
ミカ!
【文春文庫】
伊藤たかみ
定価 580
円(税込)
2004/4
ISBN-4167679027
評価:A
まばゆいばかりの瞬間瞬間をぎゅっと閉じ込めた、本当に宝物のような一冊だ。子供の頃のことを思い出すとき、人は少なからず甘酸っぱさを混ぜ込んでしまうもの。嫌なことや辛いこともあったはずだけど、不思議にいい思い出があふれてくる。本書は、輝いていた「あの頃」を思い出すときの、甘酸っぱさと切なさをたっぷりと疑似体験できる傑作である。一応、児童小説という形を取っている(単行本は理論社から発売)が、大人が読んでこそのお楽しみがたっぷり詰め込まれているからご安心を。というより、優れた児童文学は、すべからく万人をとりこにする力を持っている。ミカもユウスケもコウジも生活委員の安藤も、そして謎の生物体(?)オトトイも、登場するすべてのキャラクターがいとおしい。今はやりの「純愛」には斜に構えてしまう僕も、子供たちの「小さな恋」にはものすごく弱いのだった。
弁護士は奇策で勝負する
【文春文庫】
D・ローゼンフェルト
定価 810
円(税込)
2004/4
ISBN-4167661608
評価:B
大事な場面でついつい軽口をたたいてしまう人ほど、実は内面は繊細だったりする。なんて、自分の願望も含めて言ってみたりする(僕も相当な軽口たたきなので)が、本書の主人公アンディを見る限り、あながち間違った法則ではないなと安心する。素直に謝れば良いものを、というか謝ろうと思っていながら相手を見たとたんにからかいの言葉が口をつく。まったく救いようのない男だが、こういう主人公だからこそ、息詰まるリーガル・サスペンスにぐっと幅が出るのだ。「これ以上にもどかしい状況はない。ローリーがやってきて同情を寄せてくれるが、いまのぼくはどんな人にも近くにいてほしくはない。ひとりになって、心の傷を舐めていたいだけだ。しかし、そんなことをローリーの前で口にはしない。もどかしさでいっぱいになってはいても、泣き虫小僧の性格は抑えこんでいるからだ」。長い引用になったが、こういう一文にぐっときてしまう人にはまずまず楽しめる佳作である。ただし、オビや解説の賛辞はちょっと褒めすぎ。