評価:★★★★ ふとしたきっかけで部屋に転がり込んできたはいいが、家事はおろか外出も一切しない「どしゃぶりの女」。15万しかなければ15万の生活をし、100万あれば100万の生活をする「自己破産の女」。がらっパチだが家事は完璧にこなす「殺したい女」。始終泣いてばかりいる「泣かない女」……など、<女>を描いた11の短編が収められている。 帯に「女の生態と男の心理をリアルに描く」と書かれているが、本当にそのとおり。わたしは女だから、わりと「男の心理」の部分をかなり興味深く読んだのだけど、よくよく読んでみると、女という生き物への観察眼の鋭さに驚かされる。ありがちな物語のなかで吉田修一は、女の心理に踏み入ること無く、男にとって不可解な部分の輪郭だけをクリアにする。そしてわたしは主人公の男たちの視点を通して見ることで、男にとって不可解な「女」の行動は、実際のところ「女」自身は何も考えずに行動している部分だと改めて気付くのである。まさに生態? というのもわたしが女であるゆえの読み方だけど。男の人が読んだらどうなんだろう。ひたすら主人公たちに共感かも?
銀河のワールドカップ 川端裕人 (著) 【集英社】 定価1995円(税込) 2006年4月 ISBN-4087748073
配達あかずきん 大崎梢 (著) 【東京創元社】 定価1575円(税込) 2006年5月 ISBN-4488017266
鴨川ホルモー 万城目学 (著) 【産業編集センター】 定価1260円(税込) 2006年4月 ISBN-4916199820
主婦と恋愛 藤野千夜 (著) 【小学館】 定価1575円(税込) 2006年6月 ISBN-4093797374
果樹園 ラリイ・ワトスン (著) 【ランダムハウス講談社】 定価2310円(税込) 2006年5月 ISBN-4270001259
わたしを離さないで カズオ・イシグロ (著) 【早川書房】 定価1890円(税込) 2006年4月 ISBN-4152087196