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というのが率直な感想である。 芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作の本書。受賞した理由が分かる気がした。 宝くじがあたり会社を辞め、孤独の殻に閉じこもる主人公、河野。彼に居候を申し出る役立たずの神様、ファンタジー。セックスレスだが心のつながりだけを頼りに河野はかりんと付き合う。そして、報われない恋心を抱き、唯一ファンタジーに懐かしさを覚えられなかった元同僚の片桐。 孤独をテーマに寄り添うように紡ぎ出される人間関係と‘ファンタジー’の世界。現代社会を切り取る実験作であろう。心意気はとても感じる。だが、世界の再構築に関しては川上弘美の方に軍配を上げたくなってしまう。 作者自身の生い立ちと作風は鏡である。芥川賞受賞と共に新聞などで取材を受けた彼女の記事を読んでいるからか、素直に作品に溶け込むことができなかった。 作者の背景を知りたい気持ちはあるが、知りすぎても弊害が出るのかもしれない。
仙人になるための教科書みたいなお話です。曰く、求められない限りは、決して人の心の奥底に踏み込まない。自由を享受する代わりに孤独を受容する。背負い込んだトラウマは、いっぺんに解決しようとせず、時の風化作用を待つ……
淡々と、飄々と、日々を過ごす河野の姿を、羨ましいと思いつつも、俺にはたぶん、こんな人生は3日と耐えられないだろうなあ、と思いました。優しさだとか、悲しみだとかに対峙した時、節度を持って行動するには、俺はまだ枯れ方が足りないので。
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