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階段途中のビッグ・ノイズ
越谷 オサム(著)
【幻冬舎】
定価1575円(税込)
2006年10月
ISBN-9784344012462
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
小松 むつみ
評価:★★★★
若いっていいよね。
これほどまでに、熱く夢中になれるものをもてた青春はなんと幸せなことだろう。
うまいとか、下手だとか、売れるとか、売れないとか、そんなありきたりの、評価や結果を蹴散らしてしまうほどの絶対的な高揚感と、充実感が満ち溢れている。
すべてを忘れて一直線に音楽に取り組む姿は、はちきれそうなほどのパワーと、理屈抜きの牽引力を持って、周囲の人々さえも変えていく。飄々と無関心にも見える校長の深い愛情や、規則第一主義の融通の利かない教師の頑なな心の行方、頼りなげだがいつもそばにいる顧問の秘められた静かなエールなど、とりまく大人の脇役たちも秀逸である。
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川畑 詩子
評価:★★★★
廃部寸前の軽音楽部。部室ももらえずに暗くて蒸し暑い階段で細々と練習を続ける彼らは「一発ドカンと」かますことができるのか。
まるっきり映画の「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」じゃん、とずっと思いながら、それでも四人の男の子たちから目が離せなかった。へなちょこな若者が、好きなことのためにがむしゃらに頑張る。これはもう、だめでしょう。反則です。少なくとも私的には……。ひとりぼっちと思っていた者に少しずつ仲間が集まってくる過程。バンドの楽しさに目覚めるところ。彼らの頑張りが周りの壁をすこしずつ溶かすところ。気が弱くて事なかれ主義だった子が、最後の砦を踏ん張って守り抜いて、一生懸命に自分の気持ちを語り出す時の感動。もう本当に定番中の定番だけど、やっぱり心躍らずにはいられないのだ。このパターンは、青春とノスタルジーのエキスだから強いのだ。
ひらながで表記された洋楽の歌詞がナイス。男子高校生のロック魂がほとばしる!って感じでした。
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神田 宏
評価:★★★★★
いつの時代も青春はロケンロールなのだ!先輩の不祥事で廃部寸前の高校軽音楽部に一人残された啓人の奮闘努力を描いた青春活劇。拙いテクニックに悩みながらもメンバーを募り、杓子定規な教師の妨害に見舞われても、メンバー間の軋轢にギクシャクしても、恋の予感に戸惑っても、時代の趨勢がヒップポップ、ダンスミュージックでも、ストラトキャスター片手に、ラモーンズだ!グリーン・デイだ!KISSだ!クイーンだ!とばかりにビートを刻む。その姿は、大人になった僕たちの誰もが夢見る、在りし日の理由もなく熱かった青春時代、あの「プールに漂う塩素の匂い。屋上から見上げた夏空。夕暮れの堤防」を呼び起こします。「田高マニア30」(文化祭)で演奏する彼らの姿にはホント目頭熱くなりました。そして「キノコ頭」の顧問、カトセンこと加藤先生がいいキャラ出してます。くるぞ、くるぞと思わせて、キター!講堂を埋め尽くす観客のコール。まさに青春だ。パンクロッカーが何でクイーン?なんて難しいこと言ってないで、そのハイブリッドなところが若さなのさ。
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福井 雅子
評価:★★★★
やる気の無い先輩が起こした事件のせいで廃部寸前の軽音楽部で、啓人は幽霊部員だった伸太郎に引きずられて仲間を集め、学園祭のステージを目指す。まとまりのないバンド仲間、変人の顧問、劣悪な練習環境、気になる女の子への届かない想い。思い通りにならない状況を乗り越えて夢を現実に変える高校生たちを描いた作品。
これぞ青春小説である。一生懸命なんてカッコ悪い……というポーズをとりつつ本当は熱くなれるものを求めている年頃の高校生たちを、力まずにとても自然に描いている。そのせいか、読んでいて気恥ずかしくなることもなく、「あの頃」の熱い気持ちを懐かしく思い出しながら清々しい気分で読める。心の奥にしまい込んでいた「純粋な気持ち」を、久しぶりに引っ張り出してみるのも悪くない──そう思ったら是非手にとってみてほしい一冊。
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小室 まどか
評価:★★★
もともと弱小だったうえ、先輩たちの不祥事であわや廃部かという軽音楽部を、たったひとり残った部員啓人が、幽霊部員だった伸太郎の強引な後押しで立て直し、仲間を見つけて文化祭のライブをめざす――。
即廃部をかけた条件付きの状態から出発して、ひとりふたりだった部員の熱意が、徐々に仲間を集め、共感を呼び、文化祭という高校最大のイベントに向けて走り出す……というのは、帯に引かれているウォーターボーイズやスウィングガールズ然り、青春部活モノによくある設定のように思える。このお決まりのパターンって、時代劇みたいなもんで、それはそれで結構心地いいし、わかっちゃいるけど感動しちゃったりもする。でも、そうなるか食傷気味になるかはやはり作家の演出次第なわけで、その点、素直に引き込んでくれるつくりになっている。
演奏技術に関してもわりと細かい記述がされているが、きっとバンドとか洋楽に詳しかったらもっとおもしろいだろうし、青春はロックだぜ!ってアツい気分に浸れるんだろうなぁ。
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磯部 智子
評価:★★
爽やかな良い話に違いないのだが、この適度さが過剰な私の感情に合致しない為、これもまた「青春、かもしれない」で止まってしまう。しかしツボにはまればはまるだろうなと総花的にも考える。ストーリーはいたってシンプル、啓人は自分には関係の無い上級生の不祥事で廃部寸前に追い込まれた軽音楽部の部員。幽霊部員の伸太郎に引っ張られ校長に直談判するが…事なかれ主義の担任や女性体育教師の描き方がステレオタイプだが案外現実もこういうとことに留まっていると結構納得する。部の存続と文化祭への出場を目標にする啓人たちも個性があるのか無いのか、常識的な範囲内で描かれ強い共感も無い代わり反発も無い。なにかモタモタしたようなあの頃を懐かしく思い出させる空気を感じるのだが、どうしてもこの緩さが素通りして行き、何処までも等身大のこの物語が、たまたま私のサイズでは無かったと言うことで、沸点に達することなく読み終えた。
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林 あゆ美
評価:★★★
軽率な先輩がとった行動のために、軽音楽部が廃止になる!? それはダメだと若人たちは立ち上がる。そう、まっすぐな青春エンタメ小説です。
安心して読みすすめられ、大きなサプライズもなく読了。それぞれの人物がきちんと描かれ、生徒も先生もキャラクターがしっかり立ってます。ゆるい校長先生は、とびきり素敵。めちゃくちゃな先生にふりまわされながらも自己主張していく生徒たちの健気さに胸打たれ、読後感はさわやかでした。
個人的には展開が読めすぎてしまうのが、ものたりないところ。
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