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WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年3月の課題図書 文庫本班

わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい
わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい
鴨居羊子 (著)
【ちくま文庫 】
税込861円
2007年1月
ISBN-9784480422972
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  鈴木 直枝
 
評価:★★☆☆☆
 昭和20年代、女版俺様物語だ。
 娘の結婚しか頭にない母親、芦田首相を取材する夕刊紙記者という安定職を捨ててまで成し遂げたかった夢って?月給1万7千円の時代に1万円もするペチコートなどの下着製造販売をし、商売の勝利者に登らんとする一人の女性・鴨居羊子の自伝である。
 我が強くてがむしゃらで自分好き。友達としてはご遠慮願いたいが、経営者の才覚は優れていたに違いない。幾度となく襲う窮地を「な、みんながんばろうな」と姉御口調で語る友、「アッというヤツをやっとくんなはれ」と値段度外視で商談にのる取引先。鴨居の気持ちの強さに人が惹きつけられ、個が社にそして石津謙介・宇野千代の仕事をするまでのなる。これでもかこれでもか。現状に満足せず自分の人生を生ききったと言えるが、後半、時代の先駆者ゆえに持つ「孤」と対峙して生きるのは致しかたないことなのだろうか。 
「わたしはただ、自分の身にまとうマンネリがこわいのよ」これが彼女の根底だろう。これ以上に鴨居を体現した言葉はないだろう。

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  藤田 佐緒里
 
評価:★★★☆☆
 最近はカワイイ下着がたくさん売られている。原宿なんかじゃ路上にまで下着姿のセクシーマネキンが出されていて、男の子は困るだろうなぁなどと思ってしまうくらい堂々と、下着がたくさん売られている。カワイイ下着は乙女の証、世のおばあちゃんたちが見たらぶっ飛んでしまうような大胆な下着も若い世代にはかなり浸透している。ピーチジョンの社長なんか今や超有名人、億万長者である。
 しかしもちろんそんなカワイイ下着は昔からあったわけではない。本書の著者、鴨居羊子さんは下着界において「下着の革命児」とも言えるであろう働きをした女性である。そもそもこの人は新聞記者だったのだが、下着を作らねばという使命感にかられて記者をやめ下着を作ることを決意した。いやぁなんてありがたい人なのか。ありがとう、鴨居さん。
 そしてありがたいだけでなく、文章が上手い。エッセイをこんな風にきちんと書かれると、なんだか一つの小説のように読めてしまうのだわ。ちょっとビックリなタイトルだが、とても素敵な本です。

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  藤田 万弓
 
評価:★★★★★
 彼女はパンクだ。彼女が、閉塞的な下着業界に殴りこむかのような色鮮やかで、
デザイン性溢れる下着を登場させたおかげで私たち女子は今日も男を誘惑できるし、
純情少年は夜な夜な妄想にふける楽しみ(?)を覚えられたわけです。
 やはり、私自身が20代ということもあって、鴨居さんが新聞社を辞めて‘チュニック’を設立するまでのくだりが一番お気に入りです。
会社が軌道に乗ってきたあたりは、ロールモデルにしたい。
 外では強気な鴨居さんも、家の中では母親を恐れていた。
「徹底した母との対立のおかげで、私はたぶん、新しいものをつくる意欲がおきたにちがいないし、
反逆の魂みたいなものが、育てられていったにちがいない。
生はんかな友達づらをした母親よりよっぽど明治の母親の気骨を敵ながらアッパレだと私は今も思っている」
(「スキャンティ生まれる」より)
 男社会の中で商才を発揮する鴨居さんはかっこいい。でも、時折見せるもろさに少しほっとする。
 新しいことをはじめるきっかけが欲しい人はぜひ読んでみてください。

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  松岡 恒太郎
 
評価:★★★★☆
 オットコマエである。そしてエネルギッシュである。鴨居羊子さんとは、なんとまあ魅力的な女性であろうか。
 時は昭和の三十年代。女性下着に魅せられて後先考えず新聞記者を辞めた彼女、事務所もお金も無いけれど、何をおいてもまずはこれだ!とばかりに社名を決める。かくしてある時は友人のマンションでガーターの金具と格闘し、またある時は一流デパートでの展示会を成功させ、そして時には愛犬鼻吉を蹴飛ばし、暇を見つけてはヨット黒潮丸で港港を彷徨い、さらに遥かエーゲ海では少年と恋に落ちゃったりする。
ことある毎に壁にぶち当たる彼女。そりゃそうである、ど素人が理想だけ掲げて猪突猛進しているワケだから。しかし彼女はその度に、この壁を越えなければ勝利者になれないぞ!と、必死のパッチで壁をぶち破ってゆく。 
 ユーモアを解し、正しい日本語を操る昭和の女性の痛快エッセイ、読み応え十分です。

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  三浦 英崇
 
評価:★☆☆☆☆
 さすがに底本が1973年刊行となると、まず、記載されている内容について、明らかに古くささを感じざるを得ない、というのが、この本を読んでいて、ざらざらした引っかかりを覚えた第一の点です。

 次に、あまりに無邪気に自分の成功ぶりを称え、自分と仲の悪い人間を遠慮なくケチョンケチョンにしておきながら、自分に降りかかった不幸については、身も世もなく泣き叫ぶ。33年も経ってから、この本を読むことになった読者としては「おいおい表現の自由にも程があるなー、昭和40年代ってのはー」と思わざるを得ません。これが引っかかりの第二。

 本人にはたぶん、悪気は無いのだろうけど、読んでいて心地よくなれるような文章では無いですし、ここから何かしらの感動を得ようと思っても、それは無理がありすぎる、と思うのです。どうやら、著者も亡くなって既に10年以上も経過しているようですし、これ以上責めたところでどうなるものでもないですが。  

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  横山 直子
 
評価:★★★★★
「とにかく、私はつくりたいのである。何かを。」
新聞記者を経て下着会社「チュニック」を設立した鴨居羊子さん、彼女の一代記である。

なんと魅力的な女性がいたものよ!と、熱病に浮かされるような気持ちで読みきりました。
ほとばしる情熱、小気味の良い行動力、その反面シャイな部分もあり、振り幅の激しい彼女の生き様に惚れ惚れしました。
一坪の事務所から出発した彼女の会社運営に、大阪の商いの現場を垣間見たようで読んでいて本当にワクワクしました。
プライベートでは映画の西部劇を見るのが好きで、フラメンコに夢中になり、同居する大きな犬をこよなく愛する羊子さん。
そして司馬遼太郎をはじめとする彼女の交友関係の広さにも圧倒されました。
決して人生楽しいことばかりじゃないけれど、自分の目の前に楽しいことを掲げて生きる!
そんな彼女の生き方がかっこいいなぁ〜と思いました。
それにしても彼女の手がけた「チュニック」の下着たちのイラストには正直ドギマギしました。
私のこれまでの人生にはとんと縁のなかった世界です。
実に魅力的でした。一度手にとって見てみたいものだと…。  

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