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日本全国どこのローカル都市と置き換えても成り立つ、普遍的な舞台設定。新設されるテレビ塔の下で繰り広げられる、劇的ではなくても、後になって振り返ると「ああ、あの頃は良かったねえ」と思えるエピソードの数々。
植物の色や形、鳥の声といった自然の描写もまた、丹念な筆致で背景の草木を描き込む、上記の作品を彷彿とさせます。
派手な事件が起こる訳でもなく、知的好奇心をかきたてるでもないですが、週に一回くらいは、ほっとできる時間が欲しい方に。
東北のある都市、鉄塔の周辺に暮らし合わせた人々の日々を丹念に綴った長編小説だ。 小説家の夫と草木染作家の妻、この二人を中心に物語は進んでいく。 「これだ」「間違いない」 この二人、妻が拾ってきた鳥の羽を一緒に図鑑のページをめくりながら捜す夫婦なのだ。 住まい周辺をさえずっている鳥の声にも敏感だ。 傍目には幸せを絵に描いたようなこの夫婦にも、読み進めていくうちに、取り巻く環境や過去の出来事について霧が晴れるように判りはじめ、時に胸が締め付けられた。 それは自身の病気のことだったり、別れて暮らす家族の心配ごとだったり、消えない過去の辛い出来事だったり…。 だからこそ目に映る自然の美しさ、馴染みの喫茶店で過ごす時間、出入りの洗濯屋さんのまじめな仕事ぶりに救われる。
映画のタイトルのようだが、「喜びもあり、哀しみもあり」そして鉄塔家族の日々は続く。 しかし、上下二巻が私には少し長すぎた。
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