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もっとも、御題こそ下賤ではあるものの、中身はさすがに週刊誌よりは志も高く、文章にも格調ってものがあります。無意味に高いプライドだとか、何かと出てくるみっともない言い訳だとか、端々に現れる周りを見下した態度だとか、誰とも噛み合わないディスコミュニケーションぶりだとか……これだけイライラさせられる主人公を生み出せるのは、才能以外の何物でもありません。
どんなに知識と教養があっても、魂が腐ってると、堕ちたところから這い上がるにはえらい苦労が必要、というお話。ゴシップ好きな方なら、あるいは楽しいのかもしれません。俺にはちょっと……
しかしである。この物語は酷すぎる。ほかにはとても共感できるところなどなかった。 彼の人生の転落のきっかけは、軽い気持ちから教え子と関係を持ってしまったことから始まる。 大して抗うことなく辞任を受け入れた彼は、一人娘の住むケープタウンにひとまず身を寄せた。 娘は農園経営者として足場を固めるべく努力している最中なのだが、彼女に次々に降りかかる不幸な出来事は読み進められなくなるほど衝撃的だ。 ラウリーはひたすら娘を心配し、この地から離れるようにと説得するのだが、「わたしの人生で決断するのはわたしよ」と娘に言い切られる。
これでもかと親子して転落していく中、ラウリーがふと垣間見た畑仕事をする娘のシーンが、私には忘れらない。 まるで風景画に溶け込んだように、おだやかで美しく、そして力強い感動的なシーンだった。 これは一体なんだろう。 「女には順応性がありますから」と作中のどこかのセリフを思い出しはしたが、それにしても…。
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