コラム / 高橋良平

日本SF戦後出版史・脇道篇
「ラヂオの時間」

 さる2月、TBSラジオの毎週日曜の夜9時からの30分番組、"聖教新聞プレゼンツ"《ラジオシアター/文学の扉》で、海野十三原作のラジオ・ドラマが放送された。1日が「宇宙女囚第一号」、8日が「千年後の世界」で、脚本はシキナツコ、番組案内役の中嶋朋子とゲストの俳優カミノタカシが役をふりわけて演じた----カタカナ名前は、聴き取ったまま不明のため(失礼)で、漢字を確かめようと図書館で新聞のラ・テ欄にあたったところ、朝・毎・読の3紙はおざなりの番組表にタイトルの《文学の扉》の文字があるのみ、日経新聞にいたっては多チャンネルのテレビ欄はあっても、ラジオ欄がない!

 いやまあ、それが日本でいま、ラジオというメディアがおかれている状況を端的に示しているのかもしれない。けれど、東日本大震災以降、地デジ化のちょっと前から、やむなくラジオ一本槍になり、主にTBSと文化放送を聴いていての実感は、いまの新聞やTVを目にしなくても、なんら不自由は覚えない......にしても、ここ最近デビューしたアイドルやタレント、可愛い娘ちゃんには、めっぽうウトくなっちゃったけれどね。

 ともあれ、ネット情報洪水のこの時代、ラジオ番組について知るには、各局のホームページをのぞけばいいのだろうが、くだんの海野十三ドラマは、まわりのSFファンに聞いたところ、誰も知らず聴き逃していた。いや、それをいうなら、映画やTVの映像SFは、映像自体をDVDなどで観ることもできるし関係出版物も多いが、ラジオ・ドラマに関しては、1970年代以降は門倉純一さんがほとんどチェックしているし音源すら保存しているから安心とお任せにしても、それ以前、どんな番組が放送されたのかといった一次資料の調査も遅れているのが現状。まずは、新聞のラジオ欄をコツコツ調べるしかない。

 そんなデータの一助にと、ぼくが小学校高学年から、ラジオを聴きながら宿題をやっていたころに聴いていた《二十一世紀への道》の、新聞のラジオ欄から書き写したエピソード・リストを以下に掲げておこう。朝・毎・読のラジオ欄には、番組開始時から終了時まで案内らしきもの見つからず、作・演出も不明なものばかりの情ない不完全リストだが、NHK放送博物館の資料が閲覧可能になったら、調査を続行したいと思っている。


《二十一世紀への道》
*NHKラジオ第一放送 毎週日曜日 18:30 〜 (30分番組)
1963年
4月1日「選ばれた男」(作・藤本義一)出演:梶本潔、端田宏三・他
  14日「ある奇蹟"心臓移植"」出演:松岡与志雄・他
  21日「わたしは動物としゃべった」出演:山内雅人
  28日「死に挑む(21世紀の外科手術の展望)」出演:松岡与志雄
[5月5日〜7月28日(野球中継)*以降、雨傘番組に]
8月4日「第三の動物達」
  11日「野蛮号帰投せず」出演:桜田千枝子
  18日「オズマはこたえた」出演:武田国久・他
 [25日〜9月29日(野球中継)]
10月6日「宇宙進出のために」
  13日「鉄路のゆめ」出演:山内雅人、東京放送劇団
  20日「砂漠に雨が降る」
  27日「人造人間ローザ」出演:永野達雄、楠年明
[11月3日「船乗りクプクプの冒険」(原作・北杜夫)]18:00 〜(1時間番組)
11月10日「わが子に未来を」(原作・眉村卓)出演:端田宏三、桜田千枝子
  17日「宇宙の男たち」(原作・星新一)出演:山内雅人
  24日「バニステリアの秘密」出演:柳川清、北村英三
12月1日「真珠色のボタン」出演:ぶどうの会
  8日「不信の時代」出演:玉生司郎、林美智子
  15日「ボレロ1991」(原作・光瀬龍)出演:東京放送劇団、東唱
  22日「火星の土の中から」出演:岩田直二、梶本潔
  29日「そして誰もいなくなった」出演:武田国久
1964年
1月5日「宇宙住宅1号」出演:林美智子、端田宏三・他
  12日「恐怖の翼」出演:木下秀雄、須永宏・他
  19日「開拓者」(原作・眉村卓)出演:楠年明、梶本潔、永野達雄・他
  26日「消えた漁村」出演:厳金四郎、桜井英一・他
2月2日「人工心臓の男」(原作・小松左京)出演:谷口完、阿木五郎
  9日「失われた感情」出演:桜井英一、山田靖、八木光生
  16日「文明の遺産」出演:森本たか子、高桐真
  23日「星から来たSOS」出演:久米明、小沢重雄
3月1日「感情養成所」出演:飯沼慧、端田宏三
  8日「お天気に国境はない」出演:金内吉男
  15日「メロスから来た少年」出演:端田宏三・他
 [21日(休)「現代の青年像」]
  29日「人間復活祭」出演:溝田繁、西山嘉孝
4月5日「21世紀病」出演:東京放送劇団・他

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