コラム / 高橋良平

日本SF戦後出版史・脇道篇
「ラヂオの時間(その2)」

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装丁・間村俊一

 ラジオのSFドラマについて、まとまって書かれた本は、ぼくの知るかぎり、探偵作家・川野京輔こと上野友夫氏の『推理SFドラマの六〇年----ラジオ・テレビディレクターの現場から』(六興出版/ 1986年2月刊)くらいしかない。

 その川野さんが、NHK広島放送局時代、ディレクターとしてほぼ初めて手がけた連続ラジオ・ドラマについて、〈日本探偵作家クラブ会報〉第106 号(1956年3月)に「空想科学ドラマ演出記」と題して報告している。

〈四月の新書版から、広島のNHKでは毎週月曜の子供の時間に空想科学ドラマ「地球よ永遠なれ」を三〇回に渉って出す事になった。鬼怒川浩氏の作で私が演出を受持ち既にその第一回を四月二日に放送したが、私は、この「地球よ永遠なれ」を空想科学ドラマの決定版にしたいとはりきっている。/物語は、太陽系の宇宙以外の宇宙にある黄金星と呼ぶ星の生物が地球を侵略しようとし、地球では、原子人間など科学兵器でこれに対抗しようとするもので、その間に円盤ロケット、原子潜水艦、等々が現われ、少年の夢をかき立てようとしている。更に探偵物らしく、私立探偵が現われたり、地球人で、怪星人のスパイをする人間など現われ、ハランバンジョーを極めている。/このドラマの企図で一番苦心したのは、ドラマのねらいをどこにおくかと云う事だった。余りにも映画や小説でS・Fはやり過ぎ、どれもこれも似たりよったりである。そこで私達は、黄金星を地球の未来の姿だと見たてた。科学が高度に発達し、すべては機械化され人間はグータラになる。自然の山河も草木もない。そこで黄金星の王者は、地球の自然を愛し、自然に還りたい慾望のまゝに地球への侵入をはかるが、最後には自らの科学の力で滅びていく。緑の地球よ永遠なれ----と云うテーマにした。/作者の鬼怒川氏も始めての空想科学物なので大いにはり切り、ドラマの本読みテストにも立会って色々と意見をのべられたりした。/演出上の問題では、ナレーションを多くして、会話と会話の間をもたせず、ぐつぐつとたゝみ込んで行く方法をとった。音楽もダイナミックに、生のまゝ音の塊としてぐっと出す事にした〉

 この《地球よ永遠なれ》の記事を読んで、真っ先に反応したのが矢野徹氏だった。1953(昭和28)年の春から秋にかけての半年間、世界SF大会に招待されるなど、アメリカSF界にどっぷり浸り、帰国後、ますますSF普及熱に燃えあがっていた矢野さんは、よき理解者・同志を発見した想いで、上野さんに熱烈な手紙を送ったに違いない。

 半年続いた《地球よ永遠なれ》の翌年、上野さんは、同じく鬼怒川浩・作の4回連続ドラマ《海底超特急》を制作ののち、矢野さんの書いた《小さな壺》を演出して11月9日に放送。58年3月15日に子供向けの《耳鳴山由来》、5月21日に〈水爆戦争が起り、偶然、地下壕で生き残った人達と、水爆のために血球のない人間となってしまった人々との恐ろしい闘いを描いた〉(『推理SFドラマの六〇年』より)《血球なき人々》と、矢野さん脚本のドラマ2本を、上野さんは広島支局で放送している。

 さらに、上野さんは、矢野さんに勧誘されて〈宇宙塵〉(科学創作クラブ)に参加し、〈一篇だけ少年物を発表したことがあるが、それは本誌ではなく別冊附録という形をとったために、今は古本屋でも探すことは不可能らしい。「ロケットの怪紳士」という題名だけは分かっているが、今は手許にはない〉(同前)とのこと。

 松江に転勤してからの58年の8月、〈宇宙塵〉同人に全面協力をあおぎ、毎週土曜日夕方の15分番組《松江子供劇場》で、2日「霧の夜」(作・光瀬龍)、9日「私の月世界留学」(作・小隅黎)、16日「井戸のなか」(作・星新一)、23日「宝さがし」(作・坂田治=矢野徹)というラインナップのSFドラマ特集を組んだりしている。翌年、放射能をあびて巨大化したお化けクラゲが宍道湖に出現する「くらげ」(作・矢野徹)を放送し、オースン・ウェルズが"アメリカを震撼させた夜"の伝説的なラジオ番組のミニ版的パニックを起こしたりしたのち、60年6月、東京の芸能局ラジオ文芸部勤務となる。

 そして、上野さんの東京でのドラマ演出第1弾となったのが、星さんにアイデアとプロットを考えてもらった「第五氷河期」だった。

1962年8月10日(金)NHKラジオ第一放送 11:05 〜(30分番組)
《ラジオ小劇場》「第五氷河期」
〈星新一の原作を脚色した空想科学ドラマ。五百年後の世界は、原因不明の寒波に襲われ氷原に変っていた。そしてわずかに生残った人々が寒々と生活しているところへ人工冬眠からめざめた現代の男がさまよい出た。その男は人工ダイヤの製造業者だった〉(朝日新聞・当日朝刊ラ・テ欄より)*出演:大下秀雄、新道乃里子、他

『推理SFドラマの六〇年』は、現場の人間ならではの興味ぶかい裏話にあふれ、ぜひ、ご一読をおすすめするが、客観的な資料を補足しつつも、あくまでも上野さんのメモワールであり、当たり前ながら、SFラジオ・ドラマに関しても網羅されてはいない。
 それを補完する一助に、これまた資料調べの際に気がついた新聞記事を、TVも含めて書き写しておこう。

1963年
4月11日(木)讀賣新聞夕刊・ラ・テ欄
「テレビにSFブーム/NHK教育もシリーズ製作」
〈ことしにはいってからテレビ番組みにSF(サイエンス・フィクション)ものの進出が目立っている。フジの「鉄腕アトム」をはじめ、NHK総合の「銀河少年隊」外国映画でもフジの「宇宙船XLー5」NHK総合「宇宙家族」とちょっと数えても五本。なかでも〉「アトム」「宇宙家族」は視聴率調査のベストテンにはいる人気番組み。/これに加え、おとなだけの鑑賞にたえ、しかもテレビ・ドラマの新境地をと、NHK教育の創作劇場が四、五月をSFシリーズとして製作にかかるので、ちょっとしたSFブームである。/この"SFシリーズ"は①宇宙落語「賢明な女性たち」(作)星新一(出演)桂米丸②ドラマ「21世紀のルンペン」(作)小松左京(出演)谷口完ほか③ドラマ「真実の物語」(作)柾木恭介(出演)井川比佐志④ドラマ「銀河鉄道の夜」(原作)宮沢賢治というラインアップ。作者に星新一、小松左京という当代のSF作家、演出も和田勉はじめ新鋭を起用している。第一回は十三日〉
*「真実の物語」(出演:矢野宣、水原英子・他)について、新聞の紹介文は未見だが、5月11日に放映されている。

4月13日(土)NHK教育テレビ 20:45 〜(30分番組)
《創作劇場》「宇宙落語『賢明な女性たち』」
〈今夜の創作劇場は、星新一原作の空想科学ショート・ショート。桂米丸が出演し、カメラワークで落語家を画面化するという新しい試み。地球上空へ宇宙船が現れ、男どもを見捨てた女性を吸いあげてしまい、残ったのは愛しあう木村夫婦だけ。ところが宇宙船からは美しい女性が男性を求めて降りてきた----〉(朝日新聞・当日朝刊ラ・テ欄より)
4月27日(土)NHK教育テレビ 20:45 〜(30分番組)
《創作劇場》「秘密製品」
 小松左京・作/ 出演・谷口完、武周暢
〈産業スパイ沖田は、世界電子工業の新製品の秘密を探るため、東洋電子から頼まれ、工員となって潜入する。東洋電子とは無線機で連絡をとっていたが、ある日、突然連絡はとだえる〉(朝日新聞・当日朝刊ラ・テ欄より)

4月28日(日)TBSラジオ 22:30 〜(30分番組)
《星への誘い》
〈「SF作家の星氏招き」日曜日の夜、楽しい星座の話題と美しい音楽ですごす三十分間。今夜はSFすなわち科学小説の作家星新一氏をスタジオに招き、南十字星のそばで光る星座ケンタウルス座についての話題を中心に展開する。(構成)草下英明(語り手)鳳八千代。/[曲目]「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」(スリー・サンズ)▽「ワイオミング」(マントバーニ楽団)▽「アー・ユー・ロンサム・トゥナイト」(ヘルムート・ツァハリアス楽団)ほか〉(讀賣新聞・当日朝刊テレビ欄より)

5月25日(土)NHK教育テレビ 20:45 〜(30分番組)
《創作劇場》「人間の中の流星群」
〈「人間の中の流星群=宮沢賢治作"銀が鉄道の夜"から=空想科学のテレビ詩」宮沢賢治の原作を単なる憧憬的物語りとしてではなく空想科学の側面からとらえ現代に再構成するテレビ詩への一つの試み。/純一少年は交通事故で親友謙太を失った。謙太の形見は手製の天体望遠鏡であった。彼はそれをもって広大な宇宙の世界をのぞく。いつのまにか銀河鉄道の車内に、彼は自分と謙太を発見した。乗客は自分のほかに政治家、青年、山師、修道女ー。/特殊撮影フィルムを随所に入れる。装置は非現実的で、これらを広角レンズでとらえ、人間の表情のクローズアップと対比させながら、個々の状況の詩をつくりだそうとする。(脚本)三枝睦明(演出)秋山成次。/[出演]純一(池田秀一)老人(下元勉)政治家(村上冬樹)青年(山本学)山師(林昭夫)修道女(富田恵子)母(杉山徳子)謙太(宮城照松)ほか〉(讀賣新聞・当日朝刊テレビ欄より)

10月3日(木)NETテレビ 22:45 〜(15分番組)
《短い短い物語》「悪人と善良な市民」
〈今夜は星新一得意のドンデン返しのスリラー・コメディー「悪人と善良な市民」。/独身男が自分を呼ぶ声で目をさました。だが、声の主は見えない。ベッドに戻った彼はカーテンのかげをみてギクリ。ピストルが彼の胸もとをねらっているのだ。/しばらくして姿を現わしたのは彼のまるで知らない男だ。「私は模範社員だ。なぜ殺すのか」と叫んでも、男はニヤニヤするばかり。(脚本)藤田伝(演出)星野和彦[出演]男A(西村晃)男B(大辻伺郎)〉(讀賣新聞・当日朝刊テレビ欄より)

11月3日(日)NHKラジオ第一放送 17:05 〜(30分番組)
《こどもミュージカル》「宇宙船にのったカグヤ姫」
〈内海晃一・作、野里元士・演出。カグヤ姫の物語を空想科学小説的に解釈してミュージカルに脚色したもの。/カグヤ姫=子安令子、竹取りのおきな=柳川清、竹取りのおうな=津島道子ほか〉(毎日新聞・当日朝刊ラ・テ欄より)

11月19日(火)NHKラジオ第二放送 21:00 〜(45分番組)
《月から兎が飛んで来て》
〈「異色の空想科学ドラマ」/NHKは今夜ラジオ第二放送で芸術祭参加ドラマ「月から兎が飛んで来て」(後9・0)を放送する。昨年立体放送劇「はらいそう」(田浦一郎・演出)で芸術祭賞を受けた福田善之氏が、音のもつ不思議なたのしさを存分に駆使して書いた異色サイエンス・フィクション・ドラマで、野球解説でおなじみの苅田久徳氏や歌舞伎の中村芝翫氏が特別出演するのもききもの。/ある晩高速道路をすっ飛ばすスポーツカーのラジオが放送終了を告げる君が代を放送中、突然大相撲中継が流れてきた。アナウンサーは、いまはなき名アナ和田信賢氏で、取組はすでに引退した吉葉山と大内山の一番。しかもこの種の事件がつぎつぎとおきる。現在と過去が転換したのだ。全人類は恐怖のウズにまきこまれる。ある遊星から使命を受けてやってきた兎のしわざなのだ。演出・後藤義郎。/月から来た兎=伊東幸子、政治家A=天野有恒、同B=安東千恵夫、同C=岡部雅郎、同D=藤代健太郎、政治評論家=加藤武ほか〉(毎日新聞・当日朝刊ラ・テ欄より)
〈「月から兎が飛んで来て/SFドラマ、現代を風刺的に」/福田善之氏が現代を風刺して書いたサイエンス・フィクション「月から兎が飛んで来て」。/ある夜、高速道路をとばすスポーツ・カーのラジオの放送終了をつげる君が代に突如として故・和田信賢アナの声で吉葉山と大内山の一番が混信する。特急列車のイヤホンから東条首相の開戦布告の声が流れ、ビュッフェで出したポタージュがスイトンに変わったり、飛行機の乗客が富士山付近をとぶB29の編隊をみたり、というぐあいに、この幻聴覚現象は世界中に広がる。警視庁は緊急捜査会議を開き、学者たちはなんとか科学的に解明しようと懸命になる。(演出)後藤義郎。/[出演]伊東幸子、天野有恒、安東千恵夫、岡部雅郎、山田昌ほか〉(讀賣新聞・当日朝刊ラジオ欄より)

1964年
1月1日(水)NHKラジオ第一放送 18:10 〜(50分番組)
《モグッチョ・チビッチョ宇宙へ行く》
〈「二ひきのネズミが活躍」ネズミの国の大小説家モグッチョ先生と、週刊サンデーマウスの記者チビッチョくんの二ひきのネズミの活躍するミュージカル・マンガ「モグッチョチビッチョ宇宙へ行く」。/モグッチョ先生がついに書いた大ミュージカル「食うほどすてきな商売はない」が、ネズミの国のネズミ国立劇場で、大統領出席のもとに上演されることになった。しかし、いよいよ開幕になると、奇妙な事件がつぎつぎとおこりはじめた...。(作)井上ひさし(音楽)宇野誠一郎〉(讀賣新聞・当日朝刊ラジオ欄より)
(出演・藤村有弘ほか)

1月19日(日)TBSラジオ 21:00 〜(45分番組)
《ラジオ劇場》「最後に笑う」
〈人間の世界制覇を狙う野望と科学万能を信じる人類の悲劇をゴキブリにたくして風刺的に描く。松谷みよ子・作。ビルの洗い場やキャバレーの床下にひそむ全ゴキブリに集合の声がかかった。報告によれば、核戦争が起こって人類が死に絶えた時、ゴキブリだけは生き残っているという。/出演は建川くみ、平井道子、立岡光、田中信夫ほか(織本順吉)〉(毎日新聞・当日朝刊ラ・テ欄より)

2月8日(土)NHKラジオ第二放送 21:30 〜(30分番組)
《ラジオ小劇場》「星とコンクリート」
〈「ある日、突然に/平和な生活に危機/平凡だが、平和なある団地の生活。その平和な生活は、B号館五階に住む若い母親がZ号館に住む奥さんといっしょにマーケットで買い物をすませ、帰ってくるまで続いた。/若い母親はB号館に帰っていつものようにコンクリートの階段を上がって四階から自分たちの住む五階にのぼったはずなのに、どうしたことか屋上に出てしまった。部屋に残した子どもといっしょに五階がなくなってしまっているのだ。若い母親は得体の知れない恐怖に包まれ、屋上から四階にかけおりた。/S・F作家小松左京の短編"蟻の園"をラジオ向きに脚色したS・Fスリラー。平凡な生活の連続がふと断ち切られた時に、人はどのような反応を示すかを描いた「星とコンクリート」(脚色)土井行夫(音楽)斎藤超。/[出演]妻(土佐林道子)その夫(阿木五郎)子ども(三井洋子)団地の管理人(西山嘉孝)Z号館の奥さん(香月京子)語り手(酒井哲)ほか〉(讀賣新聞・当日朝刊ラジオ欄より)

2月11日(火)文化放送 12:25 〜(15分番組)
《ラジオ寄席》「懸命な女達」
〈桂米丸の出演で、空想科学ものの落語「懸命な女達」。サイエンス・フィクション作家・星新一原作をもとにまとめたもの。/ある日、突然宇宙船がほかの天体からやってくる。そして、そのスピーカーは「美しい地球上の女性たちよ、こんなせまい地球なんかつまらない。私たちの星にいらっしゃい」と甘く呼びかける〉(讀賣新聞・当日朝刊ラジオ欄より)

6月12日(金)NHKラジオ第一放送 23:30 〜(30分番組)
《趣味の手帳》
〈「S・F作家小松左京氏の語る空想の楽しさ」今晩と明晩の二回にわたってS・F作家の小松左京氏に「空想の楽しさ」を聞く。竜宮城の三日間がこの世の三百年だという話は、リップ・ブァン・ウィンクルとともに、いわば現代の時間旅行ものの原型だと考えられる。このように古くからあった幻想文学、怪奇文学の類には、多かれ少なかれ科学フィクションの芽があるという。このSFが科学の進んだ現代にどうして生まれたか。そしてそのはたす役割は何か。人類の夢をはぐくみ、空想を育てる苦心などを話してもらう〉(毎日新聞・当日朝刊ラジオ欄より)

1965年
1月3日(日)NHKラジオ第一放送 18:00 〜(1時間番組)
《輝け地球よ》
〈「子ども向けのSF/片道ロケットで月調査」将来性と科学性、人間愛をテーマにした明るいこども向けサイエンス・フィクションドラマ。一九七〇年二月三日、突然月にせん光がひらめいて地球のすべての電波が障害を受けた。地球をとりまいて浮ぶ十八個の宇宙ステーションをコントロールすることもできなくなり、国連から月調査隊が派遣された。往復出来るロケットはなく片道ロケットで四人の隊員を月に運ぶ。宇宙の広さと地球の存在の大きさを四人の国籍のちがう宇宙パイロットのたたかいの中に描く。作・山元護久、出演・露口茂、中谷一郎、塚本信夫、入江洋佑、語り手・加藤和夫〉(朝日新聞・当日朝刊ラジオ欄より)
〈「地球上の電波が障害/こども向けS・Fドラマ」作・山元護久。将来性と科学性、人間愛をテーマにした明るいこども向けS・Fドラマ。一九七〇年二月三日、突然、月にせん光がひらめき、地球のすべての電波が障害をうけた。地球をとりまいて浮ぶ十八個の宇宙ステーションをコントロールすることもできなくなった。このため急いで国連から月調査隊が派遣された。だが、地上には月まで往復可能のロケットはなかった。井口イサム=露口茂、医師アレフ=塚本信夫、米軍中尉ゴードン=中谷一郎、ソ連軍中尉ニコライエフ=入江洋佑、リカ=標滋賀子、ペドロ=金井大ほか〉(毎日新聞・当日朝刊ラジオ欄より)
2月6日(土)NHKラジオ第二放送 21:00 〜(30時間番組)
《ラジオ小劇場》「ゼロ・アワー」
〈「太陽系宇宙の破滅」バーで二人の男が一杯やっていると、突然不思議な緊急爆発予告の放送がラジオから流れだす。大空襲がはじまり軍人や特高、復員兵から彰義隊、尊王の志士までなだれこんでくる。太陽系宇宙の突然の破滅によって地球は爆発し、二人の男は飲んでいるまま状態で"死の世界"においこまれることになる。そして宇宙に充満していた戦争で死んだ悲惨な人たちの思い出にとりかこまれる。/空想科学のアイデアを使って過去の戦争への責任を改めて思いおこさせようとする小松左京の書きおろしドラマ。演出・長与孝子、出演・北村和夫、露口茂ほか〉(朝日新聞・当日朝刊ラジオ欄より)

7月17日(土)NHKラジオ第一放送 11:05 〜(20分番組)
《物語「博士の不思議な薬」》
〈星新一作の短編空想科学を三編連作の形で----。話は三つとも奇抜な薬を発明する博士の実験室に強盗がはいり、新薬を盗み出すという設定。その結果の意外さが三つとも違うという構成である。語り手・本郷淳〉(朝日新聞・当日朝刊ラ・テ欄より)

8月28日(土)NHKラジオ第一放送 20:16 〜(44分番組)
放送劇《なんでもサービス会社》
〈「人の幸福はどこに」一九八〇年。極端な機械化が進み、人間らしい感情などが稀薄になっている時代にあって、人間のしあわせがどこにあるのかをさぐる空想社会ドラマ。/春山奈々子(中島葵)は"なんでもサービス会社"の相談係。いつも機械に監視されている悩みを持った人がよく相談にくる。だがある日、奈々子は結婚の相手を機械にズバリと答えられて、かえって味気なく感じるようになる。邦光史郎作。出演はほかに門之内純子、楠年明ら〉(朝日新聞・当日朝刊ラジオ欄より)

 最後に、蛇足になるが、〈讀賣新聞〉1964年1月19日朝刊のテレビ欄に、「岩波映画がテレビ進出」という記事があった。
〈(リード文)岩波映画がテレビ劇映画製作を始める。放送は東京十二チャンネルで、放送開始と同時にシリーズもの二本を出すが、中心になって働くのは「不良少年」「充たされた生活」「彼女と彼」の監督羽仁進氏。教育映画や科学映画をおもに、じみな製作を続けている岩波映画だけに、テレビ劇映画に進出してどんな成果をあげるか、ことしの話題になりそうだ。なお羽仁氏のテレビ劇映画の演出は初めてである〉
〈(本文)二つのシリーズとは、ひとつは少年もので「ハローCQ」(仮題)もうひとつはSF(サイエンス・フィクション)で題名は未定だが、各話単発形式だという。(中略)第二のSFは星新一、都筑道夫、小松左京らSF作家や技術者グループに協力を求めて、いわばおとなが見ておもしろいものをめざすという。/「タイムマシン、原子力もそうですが、失語症とか脳の入れ替え手術とかいった人間の生理、心理のふしぎまで広く扱いたい。一種の文明批評になるようなもの、ふしぎでおもしろく、そして何か見る人の日常生活に新しい側面を見いださせるようなシリーズがねらいです」といっているが、いちばん問題なのは脚本であろう。/「アイデアが大事ですね。外国の作家の原案、原作も使います。書きおろしだけでやりたいところですが...。それと科学映画を作ってきた岩波映画の技術を使って特殊撮影もいれますし、原子炉、手術など実写も使います」/おとなの見るSFテレビ映画という未開拓のものと取り組む冒険だけに羽仁氏も慎重である。/二本とも一月下旬に撮影開始の予定で、脚本、作品の質には羽仁氏が責任を持つ計画である〉

 このSFシリーズの企画は潰れてしまったが、もし実現していれば、66年1月2日にTBSでスタートする《ウルトラQ》の、よきライバル番組になったかもしれない。

(高橋良平)

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