
作家の読書道 第215回:相沢沙呼さん
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が2019年末発表のミステリランキングで3冠を達成、今年は同作が2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となり、さらに『小説の神様』(講談社タイガ)が映画化されるなど、話題を集める相沢沙呼さん。そんな相沢さんが高校生の時に読んで「自分も作家になりたい」と思った作品とは? 小説以外で影響を受けたものは? ペンネームの由来に至るまで、読書とその周辺をたっぷりおうかがいしました。
その2「最近泣いたアニメ作品」 (2/7)
――それまで、国語の授業とか作文の課題は好きでしたか?
相沢:自分ではあまり憶えていないんですが作文は別に嫌いじゃなかったらしく、母親に訊くと「昔から得意だった」と言うんです。確かに、作文を書いて教室で朗読して褒められる、みたいな流れが気持ち良かったことは若干思い出せる。具体的に何を書いたかは全然憶えていないんですけれど。
――趣味が多いとのことでしたが、アニメとか漫画とか映画とか、他のメディアで夢中になった作品はありましたか。
相沢:実は漫画はそんなに読んではいなくて。「週刊少年ジャンプ」を買ったことがないんですよ、僕。
――ええっ? 人生で一度も?
相沢:雑誌で読むのではなく、コミックス派なんですよ。僕の世代だと小学校くらいの頃に『ダイの大冒険』とか『るろうに剣心』、大学くらいになると『DEATH NOTE』とかをコミックスで追いかけていました。友達は「ジャンプ」を買ってましたけれど、それを借りて読んでも、連載の途中なので話が分からないと思っていました。
アニメは、高校生くらいの頃に深夜アニメを夜更かしして見ていた記憶があります。僕の場合、アニメの影響はわりと強い気がしますね。写実的なカメラワークというよりはアニメーションで見るようなカメラワークを意識して小説を書いているので。
ただ、もちろん「エヴァンゲリオン」とかは刺さってますけれど、影響を受けているかというとあまり受けていない気がする。なにか、誰か特定の人というよりも、アニメーション文化そのものに影響を受けた気がします。それに、小説を書くことへの影響については、「こういう話作りたいな」とか「こういう演出で小説書けないかな」と思うのは最近のアニメですね。昔はそんな「小説にしてやろう」みたいな意識は全然していないで見ていたので、だからあまり記憶もないんですけれど。今はどうしても仕事の目線でどんな作品も観てしまいます。ピュアな心で見たいんですけれど。
――では、最近見て「これは」と思ったアニメは。
相沢:「宇宙(そら)よりも遠い場所」っていうアニメがかなり良かったですね。全12話、まさかの毎回泣く。女子高生が南極に行くという話で、ミステリ界隈でも見た人はみんな泣いています。
――南極に行くまでの困難と闘う姿に泣けるのか、一緒に行く仲間たちとの友情で泣けるのか......。
相沢:もう、すべてですね。主人公の一人がまず、南極に行くために100万円を貯めるという......結構コミカルなんですが、脚本がキレキレなんですよ。それで毎回泣く。
――ものすごく興味を掻き立てられました。
相沢:いかんな、読書の話を全然していない......(笑)。