第215回:相沢沙呼さん

作家の読書道 第215回:相沢沙呼さん

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が2019年末発表のミステリランキングで3冠を達成、今年は同作が2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となり、さらに『小説の神様』(講談社タイガ)が映画化されるなど、話題を集める相沢沙呼さん。そんな相沢さんが高校生の時に読んで「自分も作家になりたい」と思った作品とは? 小説以外で影響を受けたものは? ペンネームの由来に至るまで、読書とその周辺をたっぷりおうかがいしました。

その6「日本のミステリを読み続ける」 (6/7)

  • 午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)
  • 『午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)』
    相沢 沙呼
    東京創元社
    836円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

――そういう背景があったとは(笑)。さて、『午前零時のサンドリヨン』を1篇ずつ書いている間の読書生活はいかがでしたか。

相沢:やっぱり北村先生から日本のミステリを読み始めました。まず森博嗣さんにすごくはまって、S&Mシリーズ、Vシリーズをずーっと読んでいました。その後ようやく綾辻行人さんにいって、有栖川有栖さんを読んで......。やっとそっちに行ったか、という感じですよね。綾辻さんや有栖川さんで好きな作品というと、もう本当に、代表的な作品になってしまいます。マニアックなことを言いたいんですけれど。

――そうしたものを読むなかで、ミステリにおけるフェアな書き方を学んでいったのですか。

相沢:そういえば自分なりに大事にしているミステリのルールとかって、どういうところで鍛えたんだろう......。どこで培ったのか、まったくわかりません。でも、ディクスン・カーとかそのあたりからかな。やっぱりカーは密室を作るのがすごい人だし、密室ってフェアさが大事ですよね。ちょっとでもフェアじゃない記述があると、密室の謎が解かれた時に「そんなもんか」と思われてしまう。

――謎を見せるという点で、マジックとミステリに何か繋がりは感じますか。

相沢:そうですね。マジシャンってミステリ好きな人が多いし、マジックをやっていると、どういう要素があると不思議に見えて、どういう要素がないと不思議が損なわれるのかというのを研究しないといけない。その不思議さを成立させる要素を探っていくと、そこはやっぱりフェアさに繋がってくるんです。

――デビューが決まった後、プログラミングの仕事はどうされたのですか。

相沢:デビューした後、1年くらいで辞めました。26歳でデビューした後もプログラマーも続けていたら、忙しくて書けなかったんです。自営業だったので、いったん辞めてもプログラムの流行を追いかけてさえいれば仕事にはまたありつけるだろうと思い、とりあえず一度辞めて書くことに専念することにしました。その後もちょっとした案件のものはプログラムを組んだりしてましたけれど。

――デビュー後、多趣味な相沢さんが執筆とマジック意外に、はまっているものとかってあるのでしょうか。

相沢:うーん。あ、コーヒーを淹れるのは好きです。豆から挽いて、お湯を何秒上から入れて、2分30秒になるタイミングできっちり250mlになるようにするとか、変なこだわりがあります。

» その7「話題作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』」へ