『日本全国津々うりゃうりゃ』宮田珠己

●今回の書評担当者●丸善書店津田沼店 沢田史郎

  • 日本全国津々うりゃうりゃ
  • 『日本全国津々うりゃうりゃ』
    宮田 珠己
    廣済堂出版
    1,620円(税込)
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 一体全体、こういう作品をどう紹介すれば良いんだろう? 窒息寸前まで馬鹿笑いさせられた本は過去に幾らでもあるが、こと宮田珠己さんの如き才能は、ちょっと他には見当たらない。

 例えばタイトル一つとっても、氏の作品には刮目すべきものがやたらと多い。巧いこと言ってるようでいてその実まったく意味不明な『ジェットコースターにもほどがある』(集英社文庫)をはじめ、力む必要の無いところで無駄に力んでる感満載の『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)やら、どこから出た数字だか根拠不明な『52%調子のいい旅』(旅行人)やら、そもそも「だいたい」もへったくれも無いでしょうと思わず突っ込みたくなる『だいたい四国八十八ケ所』(本の雑誌社)やら、やらやらやら。そして今回が、『日本全国津々うりゃうりゃ』だ。「うりゃうりゃ」って何、「うりゃうりゃ」って(笑)。

 そして中身。旅慣れた宮田さんのことだから全国の珍景、奇景を巡って楽しく紹介してくれるんだろう、などと思ったあなたは、宮田珠己という作家をまだ知らない。そんなどこにでも転がっているような旅行記など、あのタマキングが書くものか。それが証拠に、旅の同行者たる担当編集氏の紹介で早くもタマキング節全開である。何しろ

【テレメンテイコ女史は本連載の編集者兼旅のコーディネーターである】

 ときたもんだ。テレメンテイコ??? と疑問に思う間も無く、氏は続けてこう言い放つ。曰く

【テレメンテイコというのは、もちろんテキトーに私がつけた仮の名で(以下略)】

 ちょっと待てコラ(笑)。テキトーにつけた仮の名って。しかも「もちろん」って全然「もちろん」じゃないし、副詞の使い方間違ってるし、でも、それ言ったら『ジェットコースターにもほどがある』だって「ジェットコースター」が形容詞化してるし、って言うか、そもそもテレメンテイコって要するに何?(笑)

 作品の冒頭、言わばプロローグにあたる項で既にしてこの調子である。以下は推して知るべし、であろうが、タマキング初心者の為に今少し。

 例えば第一章では、名古屋方面のナントカいう寺に、親鸞聖人に擬した人形を見物に行くのだが、楽しみにしていたその人形を前にして、氏の説明は以下の如くである。即ち

【説明看板を読むのが面倒なので事情はわからないが、何らかの理由により門前払いをくらった親鸞聖人が(以下略)】

 ちょっと待って、ちょっと待って。面倒って何!? 何らかの理由って!? それを見るためにはるばる名古屋まで行ったんだよね? ちゃんと読もうよ、看板ぐらい。ってか、読者に説明する気全くないよね、その言い方(笑)。

 とまぁ、本書に限らず宮田さんの作品にはこういった常人離れした表現が頻出するのだが、とにかく何しろ、これまでタマキング節に触れずに生きてきた可哀そうなそこのあなた、騙されたと思って読んでみたまえ。但し、くれぐれも時と場所を選ぶこと。ごはん食べながらとか、絶対ダメだよ。後片付けが大変だから。

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丸善書店津田沼店 沢田史郎
丸善書店津田沼店 沢田史郎
1969年生まれ。いつの間にか「おじさん書店員」であることを素直に受け入れられるまでに達観致しました。流川楓君と身長・体重が一緒なことが自慢ですが、それが仕事で活かされた試しは今のところ皆無。言うまでも無く、あんなに高くは跳べません。悩みは、読書のスピードが遅いこと。本屋大賞直前は毎年本気で泣きそうです。読書傾向は極めてオーソドックスで、所謂エンターテインメント系をのほほ~んと読んでいます。本屋の新刊台を覗いてもいまいちピンとくるものが無い、そんな時に思い出して参考にして頂けたら嬉しいです。