6月16日(月)ROCKIN'ON JAPAN

読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド
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読むのが怖い!―帰ってきた書評漫才 激闘編
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読むのが怖い!Z―日本一わがままなブックガイド
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「SIGHT」(発行:株式会社ロッキング・オン)で大森望と書評対談を始めたのは2001年の夏号からだ。99年の創刊からその直前まで、二人とも個別のジャンル書評を書いていたのだが、その夏号から本を持ち寄って対談をすることになった。

 それはこれまで『読むのが怖い!』(2005年)、『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才~激闘編』(2008年)、『読むのが怖い! 日本一わがままなブックガイド』(2012年)と、3冊にまとまっている。

 で、先日、その対談があったので渋谷まで出掛け、ロッキング・オンの応接室で本をめぐって議論したあと、近くの寿司屋に行った。毎回打ち上げしているわけではないが、たまには一献というのも悪くはない。そのときどうして昔話になったのかよくわからない。現在の担当である兵庫慎司君を前にして飲んでいたので、音楽雑誌の話をしたくなったのかもしれない。私、ほとんど音楽を聞かないから、音楽雑誌を読んだこともない。ネタはひとつだけだ。

 ずいぶん前、突然浜本が「目黒さんのことが出てますよ」と雑誌を持ってきたのである。二人で会社に泊り込んで仕事をしていたころのことだ。奥のソファで寝ているのかなと思ったら、雑誌を読んでいたらしい。

 浜本が差し出すその雑誌を見ると、北上次郎の文庫解説についての見開き記事だった。宮部みゆき『魔術はささやく』(新潮文庫)の巻末に寄せた北上次郎の解説について、音楽ライターらしきその人が書いてくれている。ようするに褒めてくれたのだが、その褒め方が独特だった。

『魔術はささやく』の文庫解説は、「何故このAメロの部分でギターのアルベジオが鳴っているのか」とか、「中村一義〔犬と猫〕の『ど~おお~?』のあとでタムが2回ドンドンと叩かれるのにはどういう必然があるのか」なんて書いているようなものだと言うのである。聴けば、「このドンドン大事だなあ」とは思うけど、その必然を文章にするなんてことは出来ません、と言うのだ。

 その譬えが私には全然わからないのだが、あまりにもわからないので強く印象に残った。文庫解説に書いた文章を活字で褒められたのが初めて、という嬉しさもあったけれど、音楽に譬えるというのが凄く新鮮で、いやあずいぶん昔にこういうことがあったんだよ、たしか「『ニューミュージック・マガジン』だっと思うけど、と渋谷の寿司屋で言った。

 そのときの見開き記事は浜本にコピーしてもらったのだが、そのうちに紛失してしまったので手元に残っていない。ようするに自慢話ですね、と横にいた大森望は言ったけれど、その突っ込みの相手をすると長くなるのでその日は無視。

 すると目の前に座っていた雑誌「SIGHT」の兵庫慎司君が「それ、『ニューミュージック・マガジン』ではありません。『ROCKIN'ON JAPAN』です」と言う。

 えっ、なんで君がそんなこと 知ってるの?
「その記事、書いたのぼくです」
 えええっ、君だったの!

 同じようなことが前にも一度あったことを思い出す。ある版元のPR小冊子で某作家と対談したら、話が全然かみ合わず、これをおこすのは大変だろうなあと思ったら、送ってきたゲラを見てびっくり。その作家が言ってないんだけど言いそうなことをそのとき立ち会った編集者が全部創作して見事に対談を作ってしまったのだ。プロの芸というやつである。

そのときは飲み屋で業界の編集者十数名と飲んでいたのだが、昔はこんなにすごい編集者がいたんだよと言うと、目の前にすわっていた編集者が「北上さん、それ、ぼくです」と言った。えっ、君だったの!

 名前と顔をまったく覚えない私に問題があることはわかっている。ホントに私、覚えられないのだ。後日、兵庫君がその記事をFAXしてくれた。「ROCKIN'ON JAPAN」の1997年8月号だった。そうか、あれは17年前だったのか。いや、それだけの話なんだけど。