7月6日(火)
僕の前の前の前の代の営業マン、野口さんから荷物が届く。いつも野沢菜を送って来てくれるので、たぶん今年もと思いつつ荷物を見ると、届け先が僕個人宛になっているではないか? なんじゃ?とあわてて開いたところ、なんと「本の雑誌」の古い号がドーンと詰まっていたのである。いやはや、あひゃひゃ?である。
同封されていた手紙を読んでみたところ、野口さん、この『炎の営業日誌』を読んでいて、僕が見本としても社内に残っていない古い別冊を古本屋で購入していたのを知り、ならば自分が持っている古い『本の雑誌』も、自分が持っているよりも、次の世代の本の雑誌スタッフの手元にあった方が良いんじゃないかと送ってくれたのだ。ほんとにほんとにこんな大切なもの、ありがとうございます。
さっそくペラペラと10号やら15号やら、不定期刊の頃の号を読んでいると、その間に『本の雑誌 創刊10周年記念文集』というのが、挟まっているではないか? 何じゃこれ? こんな号というか文集の存在も知らなかったぞ!とあわてて取り出すと、いやはや本当に記念文集なんだな、これが。
創刊当時から10年間の間に本の雑誌に在籍していた助っ人さんが、それぞれ本の雑誌との付き合いや思い出などをつづっているのだが、いやはやこの文集が出された約15年後にその本の雑誌社で働いている者にとっては、胸にこみ上げてくるものがある。
事務の浜田なんて目に涙を溜めて「わたしたちが働いているこの小さな会社は、こんなにいっぱいの人の想いのなかにあるんですね」なんてことを声を震わせながらつぶやいていた。一瞬茶化そうかと思ったが、僕もまったく同じ想いで文集を眺めていたので、そうだねと素直に頷いた。
その後、発行人の浜本が出社してきたので『本の雑誌 創刊10周年記念文集』の制作秘話を聞く。
「阿部くんというのが、出始めのワープロで一日中打ち込んでいたんだよ、かわいそうだったなぁ。いやそれでこれね、売る気なんてまったくなくてパーティで配ろうと思っていたのに、あれよあれよと購入希望が届いて、確か増刷したんだよ。良い時代だったなぁ。あれ? 俺、何書いてる? 『僕にとって本の雑誌が思い出になる日はいつかやってくるのだろうか?』だって。教えてやりたいね、この頃の自分に。結局やめられなくて、思い出どころか、二代目の発行人にさせられるって」
そんなことを話していると、いつでも真っ黒な編集長椎名が顔を出し、輪に加わる。そして掲載されている目黒や浜本の写真を見つめ「うわー、気持ち悪いなぁ、見たくないなぁ」とつぶやき、逃げ出してしまった。椎名さん、あなたもずいぶん若いです…。
大騒ぎが終わり自分の席に着く。
向かいに座っている浜田がつぶやく。
「あの頃、会社に入っていたら楽しかったですかね?」
「うーん、どうだろう、今以上に金も貰えないしなぁ」
「でも、みんなすごい楽しそうですよね」
「……」
「あっ、自分たちで楽しくしなきゃいけないんですよね、今は私たちが当事者なんですから。もっともっと楽しい雑誌にして、楽しい会社にして。わたしがんばります。杉江さんもがんばってください」