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12月16日(木)


 分娩台に横たわる妻の上に置かれている時計を見ると、いつの間にか日付をまたいでおり、破水したと叩き起こされた朝の4時から約20時間が過ぎようとしていた。経産婦は楽よなんていっていたのはウソのようで妻は先ほどから何度も「痛~い」と叫び、僕の腕に爪を立てつつ、強く握りしめてくる。男である僕はどうすることもできず、助産婦さんの声に合わせ「ヒーヒーフー、ヒーヒーフー」と妻にリズムを伝えつつ、出血、赤ちゃんの異常とトラブル続きだったこの妊娠のひとつひとつを思い出していた。

 そう初夏の頃。この日誌で「あきらめざるえない」と書いた赤ちゃんが、僕ら夫婦やお医者さんの予想を良い意味で裏切り、夏を越え、秋を過ぎた頃には回復し、そして冬を迎えたこの前々日の14日には37週目の検診日で、もういつ生まれてもおかしくないと言われていたのである。あの赤ちゃんがここまで育つなんて…。とーちゃんもかーちゃんもお前の力を信じてやれなくて、毎日毎日泣いてばかりいたんだ。ごめんな。

 助産婦さんのかけ声が「ヒーヒーフー、ヒーヒーフー」から「ハァッ、ハァッ、ハァッ」に変わり、出産が佳境を迎えていることを知る。妻の汗を拭きながら「もうすぐだよ」と声を掛けたが、視線を合わせるのがやっとらしく、言葉は何も返ってこなかった。妻よ、お前もほんとに大変だったけど、もうひと踏ん張り、頑張ってくれ! 赤ちゃんも今、一生懸命頑張っているぞ!

「ハァッ、ハァッ、ハァッ~」
「お母さん、もうすぐですよ、頭が出てますよ」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ~」
「お母さん、顔をあげて! もうすぐよ」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ~」
「おめでとうございまーす、ハイ、どっちかな?」

 妻の股の間に立っていた助産婦さんが、生まれたばかりの赤ちゃんを受け取り、捻るようにして正面を妻に向けた。そこには立派なちんちんがついていたのだが、僕も妻も、もう男でも女でもどうでもよくて、生まれて来くれれば十分だった。

「ごめんね。あきらめそうになっちゃって…」
「生まれて来てくれて、本当にありがとう…」

 妻の胸の上で、その名のとおり真っ赤な赤ちゃんが「フェ~」と泣いた。
 その泣き声を聞いて、妻と僕は号泣した。

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 いろいろとご心配をおかけしましたが、どうにか無事出産までたどりつきました。あの夏以降、何が起こるかわからない状況だったので、出産について書くことは控え、結果的に騙すような形になってしまい、本当にどうもスミマセンでした。

 そして励ましのメールをいただいた皆様には、どう感謝を返したら良いのかわかりません。ただ、冗談抜きで皆様の励ましを頼りに、ここまで歩いてくることができました。本当にありがとうございました。