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2月 6日(火)

 やばい、と思ったときには時すでに遅く、涙と鼻水がドッと出て来てしまった。

 中場利一さんの新刊『シックスポケッツ・チルドレン』(集英社)を読んでいたら、涙が止まらなくなってしまった。大阪の漁師町を舞台にした不良の物語だから設定的には『岸和田少年愚連隊』と似ているのだが、もうちょっと物語的になっており、特に6章あたりからの完成度は素晴らしい。小道具も利いているし、何よりおとんがカッコイイのなんの。岸和田ファンにはもちろん、中場さんを読んだことのない人には特にお薦めの作品だ。

 昼飯にラーメン屋に入ると、そこは太麺と細麺を選べるお店で、僕はすぐさま好きな太麺を頼んだ。ところが隣りに座った若者は、店主から「どっちにしますか?」と聞かれても、うーんと唸り黙り込んでしまう。おい! 太麺か細麺でそんなに悩むな。と思っていたら「どっちがおすすめですか?」なんて店主に聞き返し、店主も鬱陶しく思ったのか「どっちも一緒です、お客さん好みですね」と突き放す。それでもしばし悩み、やっと出した結論は「細麺で」。お前には自己主張とか決断力とかないのか!と頭を叩いてやろうかと思ったら「麺は堅めで」と付け足しやがったからビックリ。そこはこだわるのか…。

 川崎を営業。駅直結の大型商業施設ラゾーナが出来て以来、まったく人の流れが変わってしまったが、書店さんの売れ行きも当然その人の流れに左右されるわけで、既存店は大変だ。蒲田、大森、大井町と営業し、夜は角川書店さんのご厚意で映画「バッテリー」の試写会に参加させていただく。

 本を読んで映画を見ると、大概ガックリしたりするのだが、この「バッテリー」は登場人物もだいたい想像どおりのキャスティングだし(瑞垣が素晴らしい!)ストーリも原作を大切にしているのが伝わってくる出来映えで、充分、楽しめた。そしてそして何より小説『バッテリー』の僕にとっての一番大切なところ、それは巧の一直線な気持ちから伝わってくる「お前は今のままでいいのか? 妥協して生きてないか?」というメッセージが映画からもしっかり伝わってきたので大満足。最後の方は試写室にすすり泣きの声がもれていたが、涙腺を刺激されるシーンも少なくない。「バッテリー」読者の皆様、ぜひどうぞ!