3月6日(火)
昨日はせっかく早く帰ったのに、強風の影響で武蔵野線が止まっていて、結局家に着いたのはいつもと変わらぬ遅い時間。そして今日は朝から京浜東北線が止まっており、いやはや、通勤するのも大変だ。
しかしまあ、本はゆっくり読めるわけで、本日は『隠し剣 秋風抄』藤沢周平(文春文庫)を読了。深夜+1の浅沼さんに「恥ずかしいから今さら藤沢周平を読んでいるなんて大きい声で言わないように」と注意されているのだが、10代はサッカーボールと女の子ばかり追いかけていKて、本を読んでこなかったのだからしょうがない。
本屋大賞の佳境を迎えるこの時期になると、本屋大賞実行委員でもあり、当HPのシステム担当でもあるB社のSさんと頻繁に連絡を取ることになる。集計の結果やメルマガの配信、あるいは発表会の用意など、すでに4年目とはいえ、それぞれ確認しなければならないことがたくさんあるのだ。お互い思い出すと、電話やメールを送ることになる。
ちなみにこのSさんがいなければ本屋大賞は絶対生まれなかったわけで、そういう意味では、本屋大賞の育ての母みたいな人なのだが、僕と一緒で完全なる裏方なので、4月5日の発表会のあと、地味に乾杯する、というかホッとひと息つくのを目標に、これから1ヵ月、何度も何度も連絡を取り合うことになるだろう。
池袋のL書店を訪問し、我が師匠のひとり、Yさんと昼食。
新潮社が文庫で仕掛けている、志水辰夫の『行きずりの街』がバカ売れしているとか。いいなぁ、文庫は。次から次へと売るモノが出て。ああ、本の雑誌文庫があったら、あれもこれも文庫化して、営業頑張るのに…なんて思わず嘆いてしまったが、そうなったらとても一人営業ではもたないだろう。
そういえば先日打ち合わせでお会いした地方小出版流通センターのKさんから「もう単行本の文芸書は専門書と変わらない立場になってきているんじゃない?」なんて言われたのだ。確かに部数も専門書と大して変わらなくなってきているし、読んでいる人も相当限られる。売れ行きや浸透度から考えると、いわゆる一般書というのは、文庫や新書くらいなのではなかろうか。もはや小説やエッセイに1500円を出す人はかなりの少数派なのだろう。というか一般書であるはずの文庫ですら、電車のなかでは図書館シール付きの人が多く、うーん、いったい僕らは何を作っているのだろうか。
そのKさんとの話は、そんな嘆きで終わるのではなく「少部数の専門書として考えるなら、本作りの方法も変わってくるのではなかろうか」という建設的な話に進み、そういう意味でいうと昨日搬入となった小社の新刊『世界文学ワンダーランド』牧眞司著は素晴らしい本で、こういう方向でしっかり本作りをしていくべきだ、なんて結論に達したのであった。
その後は、今月2点目の新刊『笹塚日記 ご隠居篇』の営業が佳境を迎えており、池袋、神保町、新宿とジグザグ営業し、夕刻会社に戻る。そしてまたシステム担当のSさんとやりとり。今日は電車が通常通り動いていることを祈る。
<気になった本>
『作家の手紙』有栖川有栖ほか著(角川書店)
「36人の作家が誰かに充てて架空の手紙を書くという企画のなのだが、ぺらっと読んだ池上永一さんの手紙に思わず吹き出す。さすが天才!」