3月30日(金)
朝、起きたら眼が開かない。目やにで塞がってしまっている。指でこそげ取り、どうにか眼をあけ、顔を洗うとまぶたが腫れている。妻がそんな僕を見て、「最近死相が出ているよ」と呟く。仕方ないじゃないか、本屋大賞が終わるまでは。
その腫れぼったい目で4月5日搬入の『本屋大賞2007』の見本が出来上がったので、直行で取次店回り。前日、〆作業をしていた際、分厚くなった注文短冊を見て、事務の浜田が笑いかけてきた。
「うれしいでしょ、杉江さん。こんなにいっぱい注文が集まると取次店さんで堂々としていられるでしょう」
確かにそうなんだけど、注文と仕入れ部数は比例するわけでもなく、何枚かの注文短冊しか渡さずに「5000部希望」とかいう出版社はいっぱいあるし、電話での部数確認を盗み聞きしていると実用系の本はほんと文芸書の部数の比でないぞ。本日も何気なく聞いていたら、折り紙の本が取次店一社で7000部とか答えていてビックリ。今時そんなの初版を刷れる作家がどれほどいるというのだろうか。ここ最近ことあるごとに書店さんから言われるが、まさに文芸書は専門書や人文書と変わらないところに来ているということだろう。
お茶の水から始まり、飯田橋、市ヶ谷、そして最後は板橋へ。
板橋のK取次店さんは、レッズ仲間がたくさんいて、できればしょっちゅう顔を出したいのだけれど、実は本の雑誌社はこのK社やO社とは直接取引がなく、こうやって数がまとまったり、発売日をずらさないようにしたい書籍のときくらいしか顔を出せない。
ちょうど仕入れにレッズ仲間のAさんやUさんがいらしたので無駄話をしていると、なんとそこへ同じくレッズ仲間のN出版社のUさんもやってくるではないか。ここはどこだ? 埼玉スタジアムか?
しかしK取次店さんには読書倶楽部があって、その倶楽部では共有の貸し出し本棚があって、読みたい本や読ませたい本があったら利用できるようだ。その棚を眺めていたら読書倶楽部のTさんがやってきて「○○読みました? 面白かったですよ」なんて次から次へと書名をあげていく。サッカー話をできるのもうれしいけれど、こうやって本の話ができるもとてもうれしい。
その読書倶楽部の棚に僕の大好きな『世界爆走』丸山健二著(文藝春秋)がささっていたからなおうれしい。僕の無人島に持っていく本は、このエッセイ全集と短篇全集なのだ。
K取次店さんから北赤羽まで歩くと、川沿いの桜が満開になっている。そういえば去年もここで見本出しのあとしばし花見をしたはずで、もはや本屋大賞がこないと僕の春はやってこないという感じ。桜を見、この4年の歳月を振りかえる。長いようで短い4年。しかし眼が痛い。