WEB本の雑誌

4月11日(水)

 レプリカとレインコートを鞄に詰めて出社。おっとチケットも忘れちゃいけない。今夜はAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第3節上海申花戦なのだ。

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 通勤読書は、本屋大賞が終わってストレス解消とばかり書店さんをうろつき、装丁と帯に惹かれて購入した『湖の南』富岡多惠子著(新潮社)。大津事件を描いた歴史小説というわけではなく、過去と現在を行き来する不思議な小説(エッセイ?)なのだが、これが面白いのなんの。

 帯に「琵琶湖のほとりで、昔」とあるとおり、ある種、昔話のように語られる大津事件。しかし、すべての昔話に普遍性があるとおり、この大津事件の犯人である津田三蔵は、13歳で明治維新を経験し、とくに家柄が士族だったから価値観の転換をもろに受けたであろう。それは今、明治維新ほどわかりやすくはないものの、価値観の転換期を迎え、彷徨う世の中を生きる、僕たちに相通じるものがあり、深く考えさせられてしまった。

 そういう部分の面白さに加え、手紙などから立ち上がってくる津田三蔵の暮らしが、とてもリアルで、この時代の暮らしを知る上でも充分楽しめる。いやー味わい深い、良い本だなぁ。

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 高田馬場を訪問するとBIG BOXで古本市が開催されていた。本誌「古本屋セドロー君の午後」でお馴染みの向井透史さんがいらっしゃるかと思って覗いてみたが、ご不在の様子。残念無念。

 A書店のNさんに「ダーツやりませんか?」と誘われる。ダーツはケーブルテレビで見たことはあるのだが、やったことはない。やってもいいかもと思うけれど、僕、大森望さんに呆れられるほどの負けず嫌いで、おそらくそういう顔を仕事の相手に見せては、まずいのではないか。しばし悩む。

 その後は池袋へ移動しジュンク堂さんを訪問。田口さんはご不在だったのだが、Kさんとお話。来週金曜日のトークイベント「どれだけ読めば世界文学ワンダーナイト」は、おかげさまで満員御礼だとか。うれしいかぎり。

 そのKさんが「杉江さん、『別離のとき』ロジェ・グルニエ(みすず書房)読まれました? いた田口が絶賛していたんですよ。そうそう赤い表紙の本ですよ」

 うーむ、赤い表紙だから僕に薦めているのだろうか? いやいや田口さんがそんなオススメするなんて珍しい。今までそんな風に薦めていただいたのは『体の贈り物』や『あなたに不利な証拠として』くらいではない。ならば相当面白いのでは。というわけで赤い表紙の『別離のとき』を購入し、赤い人たちのいっぱいいる場所へ向かう。