WEB本の雑誌

6月18日(月)

 通勤読書は『行かずに死ねるか! 世界9万5000km自転車ひとり旅』石田ゆうすけ著(幻冬舎文庫)。7年5ヵ月かけて自転車で世界一周した青年の話。

 35歳の僕が読むと青臭く感じる部分がないわけではないのだけれど、それが青春だし、それが旅だし、逆にいうとその青さを素直に書くあたりが本書の魅力になっている。また、ひとり旅ではあるけれど、多くの人と出会い、著者が成長していく姿に思わず感動してしまう。10代、20代の子が読んだらきっと著者同様に世界に飛び出したくなる本であろう。ただしこの著者がロンドンで気づくように、決して「死んではいけない」と思う。

 営業はまず新宿へ。
 紀伊國屋書店新宿本店のKさんに資料をお渡ししつつ、エッセイ・随筆棚の作り方についてお話。かつてほど作家がエッセイを書かなくなり、多くの書店さんがこの棚の並べ方に困っているのだ。ノンフィクション棚も含め、著者順がいいのか、ジャンルでくくった方がいいのか?などいろいろと話す。時代ごとに本屋さんの棚割りを比較したら、面白いのではなかろうか。

 その後は、一路、吉祥寺に向かうが弘栄堂書店Oさんと啓文堂書店Mさんもお休みで残念無念。

 気を取り直してリブロに向かい担当のYさんと話していたら、なんと元・渋谷店勤務だというではないか。その時代の渋谷といえば「めくるめくめくーるな日々」の矢部さんから仕事を教わったのではないですか?と伺うとビンゴ! こんなところにも矢部さんのお弟子さんがいらっしゃるとは。しかもYさん、矢部さんの教えを忠実に守っているそうで、なんとなんと矢部さんが第7回で書かれた「本叩きタコ」を受け継いでいた。猛烈に感動。

 その後、ブックス・ルーエさんを訪問するが、こちらも文芸担当のMさんがご不在で残念無念。そのまま帰ろうかと思ったが、いつ頃からかルーエさんの2階の文庫売り場が気になるようになっており、なんか面白いことやってないかなぁとほとんどお客さん気分で寄り道をする。

 するといきなり正面に佐藤亜紀が積まれていてそこに手書きのPOPが付けられているではないか。僕も『ミノタウロス』(講談社)を読んで以来どっぷり佐藤亜紀にはまっているので思わず嬉しくなってしまった。

 壁棚に目を移すと、こちらは「文藝別冊」や「ユリイカ」あるいはコロナブックスとともに、その作家の単行本や文庫が並べられていてちょっと他のお店では見たことがない棚づくりをされている。非常に面白い棚だと思う。

 酒飲み書店員の幹事長でもある松戸の堀江良文堂の高坂さんの文庫棚も、メジャーリーグのような棚があり、そこには人気のある作家の文庫とともに単行本が並べられていて、一目瞭然の楽しい棚であるのだが、その過去版というか文芸版といえばいいだろうか。いやー2階に上がってきて良かったと棚を眺めていたら、かつて文芸書の担当をされていたときにとてもお世話になっていたKさんに声をかけられる。

「面白い棚ですね」と感想を漏らすと「こいつが一生懸命やっているんだよ」と担当の花本さんを紹介していただく。花本さんのお名前は新文化のHPで連載されている『ルーエからのエール』楽しく読ませていただいていたので一方的に存じていたのだが、仕事でご一緒する機会がなかったので初対面。緊張しつつ名刺交換をさせていただく。

 壁棚の話を伺うと「催事場のように考えていて、なんかやってないかなと楽しみにしていただけるようになるといいなと思ってます」とのことで、まさに僕なんかその企みに思い切りハマった一人。「文藝別冊」系の棚の隣では鉄道系の本が並べられているのだが、ここには鉄ちゃんカミングアウトブームを巻き起こしたコミック『鉄子の旅』を中心に、新書や単行本、そして文庫が並んでいて、こちらも間口が広く、しかし花本さんが「コミックから入った人とかが、内田百けんの『阿房列車』まで辿りついてくれたらうれしい」と話されるように、奥行きがある。

 ちなみに新文化HPに書かれているとおり、これから弘栄堂さんなどともに吉祥寺書店共闘計画『吉っ読』を立ち上げ、酒飲み書店員や不忍ブックストリートのような展開をされていくとか。

 ブックオカもそうだけど、何だかいろんなところで本にまつわる新たな展開が起こりだし、しかもそれらがほとんどチェーンや会社という枠を越えた、現場から動き出しているところが面白い。こんな業界他にないんじゃないかと思いつつ、帰社。

 やっぱり本屋さんって面白いんじゃない?