WEB本の雑誌

7月18日(水)

 僕には、新刊が出たら、何もかも放り出し、すぐに読み出す作家が4人いる。

 ひとりは言わずもがなの、我らの作家・金城一紀で、金城さんは7月27日発売予定で『映画篇』(集英社)という新作が出るのだが、その日は当然仕事もせず、読書に没頭するスケジュールを立てている。

 あとの3人は、明治・大正時代の小樽を舞台に傑作『ちぎり屋』(講談社)などの時代小説を書き続けている蜂谷涼と南米やかつての日本を舞台に宮崎駿を越えるくらいファンタジックな小説『アマゾニア』(中央公論新社)を書かれている粕谷知世。残念ながらこのふたりの新作情報は届いていないが、もし発売になればその日は当然仕事にならないであろう。

そして最後の一人が我らがエンタメ・ノンフ(エンターテインメント・ノンフィクションの略)の提唱者でありその雄・高野秀行である。その高野さんの待望の新作『怪獣記』が、ついに書店に店頭に並んだので、早速購入。「臨時休業」の札を立て、僕は山の手線の人となり、一気に読み進むのであった。

前作『アジア新聞屋台村』が自伝的小説だったのだが、『怪獣記』はまさに高野さんの王道である怪獣探しである。こんなものを王道にしている人は、川口浩亡き後、おそらく日本には高野さんくらいしかいないと思われるのだが、その真剣さは、川口浩の比ではない。

そして名作『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)ばりの探索が始まるのであるが、今回は今までの作品と違って不在の証明をしにいくのがミソ。高野さんが追い求めているのは<未知の未知動物>であって、<既知の未知動物>ではない。だから未知動物(UMA)ファンの間で語り尽くされているトルコの怪獣・ジャナワールのビデオが偽物であることの真実に迫ろうと勝手についてきた写真家や留学予定の仲間とともに旅立つのであった。現地では、まさに高野さんの才能のひとつであろう「とんでもないことが向こうから寄ってくる」が数々待ち受けているのである。

高野さんの著作はすべてそうなのであるけれど、バカだぁなんて笑っていると突然とんでもない真実を突きつけてきて深く考えさせられるわけなのだが、『怪獣記』でも笑うセールスマンの喪黒福造なみに、いきなり「ドーン」と打ち込まれてしまった。

いや、そんな小難しいことはどうでもよくて、とにかく40過ぎの男が、真面目に怪獣を探しにいくそのおかしさをひとりでも多くの人に味わって欲しい。間違いなく傑作。大傑作。

と山手線を3周して感動していると、浜田からメールが届く。
「仕事してますか!」

ドーン!!! こんなところに未知動物がいたなんて!! 人間GPSハマダーだぁ。