9月3日(月)
7月の上旬あたりから、書店店頭を営業で廻っていると「8月は面白い本が出るから」なんて話題になっていた。ここ数年、文芸書は書店さんにゲラを配ることが多くなり、こうやって1ヵ月前くらいから面白新刊情報が転がりだす。
それにしてもあまりに多くの書店員さんが「面白い」と興奮しているので、ついに我慢できなくなり、いったいそれは誰の何って本ですか?と伺うと『サクリファイス』近藤史恵(新潮社)だというではないか。自転車小説で、ちょっとミステリーで、リリースが妙に熱くて、絶対、杉江さん好きですよ!
そういわれても、そのときは目の前に本があるわけではなく、どうすることも出来なかったのだが、国際ブックフェアの会場で、その本の編集者とバッタリ会ったら、こちらから話す前に『サクリファイス』の話をされ、そのまま止まらなくなってしまった。このまま話を聞いていると、僕は一行も読む前にすべてわかった気になりそうだったので、「何でもいいからゲラ下さい」とお願いすると噂通りの熱いリリースとともに、ゲラが届いた。本来はゲラで本を読むのが嫌いなのだが、今回は我慢できず、一気読み。多くの書店員さんが騒いでいたのがよくわかる。面白い!!! いや面白すぎる。
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しかし今日は、本の内容については、2007年を代表するエンターティメント小説だと断言し、脇に置いておく。
今日書きたいのは内容のことではなく、こうやって作家さんが面白い本を書き、編集者がそれを傑作だと信じ、書店さんにゲラが配られる。それを書店員さんが惚れて、ついに店頭に本が届き、並び出してからの問題である。
この面白さをどう伝えれば良いのか? いやどう伝えれば売れるのか?ってことだ。
編集者はビックリするくらい熱いコメントを帯の裏に書いている。書店員さんはすでにPOPを立てたり、看板を作ったりしている。書評家もこれから各紙誌で取り上げていくだろう。出版社は新聞やネットに広告を打つかもしれない。この本に関わっている人間は誰も手を抜いていないのである。できるところで、できるかぎりのことをしているのだ。
しかししかし数年前であれば、そういう努力によって、単行本の小説もベストセラーになったし、本好きの間で騒がれることによって10万部までは行ったと思うのだ。ところが最近は、あの作家も、あの作品も、そんな数字まで届かず、ある書店員さん曰く「だいたい思った部数の80%から70%って感じですかね」という状況なのだ。
どうしたら本が売れるのか?
多くの書店さんから聞こえてくるのは「面白い本はあるのに…」であり、それは僕自身も同様の気持ちである。えっ? あの本がそれしか売れてないの? 驚くような部数を告げられることばかり。
その「面白い本」の情報が、内輪から外に出て行かないのである。いや違うかもしれない。外に伝えているのだけれど、それでも買うところまでなかなか行かないのである。
ならばテレビで取り上げられればいいのか? それとも最近よく言われる口コミがでかいのか?
広告も新聞で良いのか? ネットが良いのか?
うーん、正直言って、僕、この10年で一段と本が売れる構造がわからなくなってきている。
ひと昔前なら、あの賞を獲れば何万部(何十万部)とか、あのベスト1なら何万部とかいうのが、まったく通用しなくなってきているし、大手新聞の書評に出ても反応がなかったり、あるいは人気作家といえでも、前作の売れ部数が次作で通用しない。
何が変わったのか、僕にはわからない。でもこの10年で本の読まれ方、いや買われ方が変わったことだけはわかる。そしてこの先は……、まったくわからない。
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そんな最近の嫌なジンクスを打ち破り、『サクリファイス』がひとりでも多くの読者に出会えることを祈る。小説の力を見せてくれ。