9月25日(火)
暑さもだいぶ引きだす午後5時時頃になると、マックロクロスギエが顔出す。こいつはカニのようなかたちをしていて、僕の思考のなかを横歩きしながら、ささやくのだ。
「もういいんじゃない。もういいんじゃない。もういいんじゃない。」
年々マックロクロスギエは数を増やし、僕を攻めてくる。
上司も部下もいないひとり営業マンには、報告書もなければ、査定もない。だからその日の営業を終わりにしてまおうと思えばいつでも辞められるのである。また体力的にキツイ日もあれば、精神的にキツイ日もある。長年仕事を続けているれば、そういう日に手を抜く方法だって知っている。帳尻を合わすことは可能なのだ。
ただし、その帳尻合わせは数字の上だけのことであって、自分自身の不完全燃焼な気分は帳尻合わせしようがない。酒に逃げても一緒だし、サッカーを観ても自分自身は騙せない。そうやって手を抜いた日は夜寝るまで、いや翌日目覚めても気分が悪い。その気分の悪さが翌日の営業に影響し、子供や妻に当たってしまうこともある。結局、悪循環もいいところで、結果やノルマなんて関係なく、とにかく自分自身が満足できる営業を毎日しようと心がけている。それでも毎日夕方になるとマックロクロスギエが頭のなかを走り回る。
「もういいんじゃない。もういいんじゃない。もういいんじゃない。」
駅のホームに立って、会社方面に向かう電車をみるとマックロクロスギエのささやきどおり「もういいかな」なんて考えている自分がいる。来た電車に乗ってもぐだぐだ考え続けていると、そこに天使のようなマッシロシロスギエが現れて、「やっぱり気持ちよく眠りたいよね」なんてフワフワした声で耳元で呟いてくる。そうなのだ。ここで妥協してはいけないのだ。
あわてて次の駅で飛び降り、書店さんに顔出す。そんなときに限って良いことがあったりするから不思議だ。本日はマッシロシロスギエが勝ち、完全燃焼するまで書店さんに飛び込んだのであった。