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11月6日(火)

11月6日(火)

朝9時に出社し、メールの返事などを書いているとあっという間に10時になっていた。事務の浜田や松村が出社。コーヒーをいれつつ、本日の予定を確認していると事務の浜田が大きな声で松村を呼ぶ。この人、外部の人からの電話なぞには小さな声しか出せない典型的な内弁慶タイプで、内部の人間と酔っぱらったときだけ大魔神化するのである。

「松、松これ見て!」
「なになにおやびん」
「この広告見てよ。史上最大級の谷間をプレゼントするブラ、ブラリッチだって。うげげげげ。カップの内側にもうひとつカップが入ったダブルカップシステムだって。これは反則だろ」
「うへーすごいあげ底…じゃなかったあげ胸じゃん。すごいねー。買っちゃう親分」
「クリスマスギフトだって。うげげげげ」

嗚呼。文字というのはなんて素晴らしいのだ。これを読んでいる人のうち、関口鉄平のような妄想男子はもしかしたら朝から女性が下着話をしているとてもドキドキな会社なのではないかと興奮するかもしれない。しかしそれは文字の上だけであって、現実は私と関口鉄平がそのモクモクの想像を完全否定するほど、美しい話ではないのである。ムフフフどころか、怒り! そう怒りしか湧いて来ない。衝動的に辞表を書こうかと思った。

通勤読書は『錏娥哢(た)』花村萬月(集英社)。ここ1ヵ月、年末のベスト10用に積ん読になっていた本や、めぼしい新刊を必死になって読んでいたのであるが、最後の最後に超ど級のエンターテイメント作品にぶち当たる。それがこの『錏娥哢た』! 花村萬月が山田風太郎と半村良へのオマージュとして書いた忍者小説なのだが、これがもう荒唐無稽しっちゃかめっちゃか何でもありの作品で下品と言えば下品、しかし読みだしたら止まらない、物語世界を堪能。

営業は本日オープンとなったGRANTOKYOの大丸へ。店内は60代と思われる男性&女性でごった返していた。そして中のテナントは、僕のような頑張ってもGAPな人間にはまったく手の出ないブランドばかり。うーむ、お隣有楽町にできたITOCiA(イトシア)もすごい人出だったが、日本のどこかに金があるんだな。できれば本を買って欲しいのだが、そうはいかんのか。ドーナツの代わりに本を! 年輪バームクーヘンの代わりの本を! さっぱりわからないが、三省堂書店さんはとってもきれいなお店になって生まれ変わっていた。

八重洲ブックセンターにてKさんとお話。「うちのお店に合う」という理由で1階で展開し出した講談社文芸文庫と新潮の朗読CDは順調に売れているとか。また「面白い本見つけたんだよ」と教えていただいたのが『原宿ブルースカイへブン』遠藤夏輝(世界文化社)。「文章はまだ…ってところがあるけど、クールス世代にはたまらない」とのこと。

このKさんやその下で働くUさんのすごいところは、文芸誌や週刊誌をきっちりチェックしているところだ。○○新人賞読んだ? なんて単行本になる前からKさんは話かけてくるし、本日もUさんから「今年の吉田修一先生と桐野夏生先生は素晴らしかったけれど、今「週刊新潮」で連載している「さよなら渓谷」(吉田修一)と「週刊文春」で連載している「ポリティゴン」(桐野夏生)はもっとすごいんですよ。来年あたり単行本になるかと思いますが、期待してます」と教えていただく。

僕が八重洲ブックセンターでアルバイトしていたのはかれこれ16年以上前なのだが、いまだにここの先輩達にはまったく追いつけずにいる。悔しいけれど、僕にとっていつまでも目標。