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3月31日(月)

 前夜、浦和レッズの2008年がついに明けた。良かった。
 けれど心の中にある重しが埋め込まれた。

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 2月の新刊で、祈る想いで編まれたチベットの写真集『風の馬』渡辺一枝著が朝日新聞書評欄で紹介され、朝から注文の電話がパタパタはいる。うれしい。けれどチベットは大変なことになっており、一枝さんの祈りは、深くなるばかり。

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 『本屋大賞2008』の事前注文〆切を前にして、バタバタの営業。

 とあるベテラン書店員さんから「杉江君、もう無理だよ。昔だったら社員3人にアルバイト何人もで見ていた売り場を、今は契約社員ひとりで見ているんだから。しかも新刊が毎日これだけ大量に届けば、それぞれの本に関心をもって仕事するなんてとてもじゃないよ。入ってきたもんを出して、出した分返品するくらいしかできないし、会社側は数字を見て、今日何箱返品を作れなんて言ってくるから、それこそ今時期だったら並べずに即返だよ。胸が痛いよ。それにそういう子たちの給料は月に十何万でしょ。一人暮らししていようもんなら、本なんて買えないじゃん」と恐ろしい現実を突きつけられる。

 心に浮かんだのは開高健さんが、ファンや知人に色紙を頼まれるとよく書かれたという言葉。

 明日、世界が滅びるとしても
 今日、あなたは
 リンゴの木を植える

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 夜、元本の雑誌社の編集者・カネコッチと6月刊行予定の高野秀行さんの新刊『ジャングルの旅はゾウにかぎる』の編集打ち合わせ。編集という仕事は営業同様そう簡単にできるわけではなく、私にできることはまだ限られているので、ベテランであり、一番信頼しているカネコッチにもろもろ相談とお手伝いをお願いしている。いつもどおり、カネコッチの鋭い指摘にタジタジとなり、そして自分のできなさ加減に激しく落ちこむ。

 そんなときは、我が最愛のハードボイルド作家ジョージ・P・ペレケーノスの新刊『変わらぬ哀しみは』(ハヤカワ文庫)を読む。まだ冒頭80頁だが、すでにペレケーノスらしい視線と、市井に生きる人々の人生の交差が始まっており、この後どう転がっていくのか、楽しみで仕方ない。

 一気に読みたいところだったが、家に帰ると、娘からの手紙が置かれていて、そこには「ポケモンのレベルアップをしておいてね!」と書かれていた。結局、あれだけ嫌がっていた小学校は皆勤賞で賞状を貰ってきたのだが、学校に行かせるため「休まず行ったらDSのソフトを買ってやる」と言っていたのをしっかり覚えていて、春休みの今、朝から晩までポケモンのゲームにハマっているのだ。しかしポケモンのレベルアップは面倒なようで、それは私に任されている。

 何が哀しくて深夜3時まで、たいして可愛くもないヘンテコな生きものをシンカさせなきゃいけないのか。ああ、でも結構楽しくなってきた……。

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