9月8日(月)
「杉江さん、もうすぐ死ぬんじゃないですか?」
月曜の朝イチにかける言葉か? と思わないわけでもないけれど、僕自身もどこかでそう思っていたりするので、浜田のその問いかけに頷きそうになってしまった。
「金曜日は大好きな高野秀行さんと宮田珠己さんとカヌーに行くし、来月には本も出るし。人生そんな良いことばかり続かないですよ」
確かに人生はそう良いことばかり続かないだろう。水戸の黄門様も言っている。
しかし浜田よ、良いことばかりじゃないんだよ。我が浦和レッズは3位で、しかもその順位以上に内容が酷い。それからもはや休刊相次ぐ出版業界にいること自体、苦しみ以外のなにものではないであろう。それでも僕は、開高健氏が残した言葉を胸に、奥歯を噛みしめ、頑張っているのだ。
「明日世界が滅びるとしても今日あなたはリンゴの木を植える」
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町田のY書店Sさんが明後日から産休に入られるというので、あわててご挨拶へ。
「大好きだった『マイナス・ゼロ』広瀬正(集英社文庫)を最後に売れたのがよかったです。でも『ムボカ』原宏一(集英社文庫・9月刊)は間に合わなくて残念。産休中に松本清張を全部読もうと思ってます」
また売り場で再会しましょうと約束し、町田の他の書店さんを営業。そして新横浜のS書店へ向かうが、売り場に着いた瞬間にYさんの公休日だと思い出す。何をしているんだオレは。
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通りがけの電器屋で、欲しいと思っていた腕時計を発見したのであるが、文字盤というか本体が想像以上に大きく、購入を見送る、って買う金もないのだが。
腕時計で思い出したが、高野さんと宮田さんと一緒に行った那珂川の帰り、道に迷い北関東自動車道真岡インターに辿り着けず、困ったのである。そこでナビゲータの宮田さんが「これ、北に向かってますよね、西に行きたいんですよ」と行った時、助手席に座っていた高野さんが腕時計をピコピコし、「今、南に向かってますよ」と答えたのだが、なんだかその瞬間、辺境作家の辺境作家たる瞬間を垣間見たというか、あっ、高野さんはほんとうに探検している人なんだと実感したのであった。