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10月24日(金)

 昨夜は、ネット書店A社のHさんとK出版社のTさんと酒を飲む予定で新宿・池林房に向かったのだが、池林房の扉を開けたら、オーナーの太田トクヤ氏が立っていた。

「今日は貸し切りだからダメだよ」

 Tさんが予約を入れたはずなのに、それはないんじゃないか、ちゃんと調べてくださいよ。腹立ちながらトクヤ氏に食ってかかったが、「入れない」の一点張り。そうやって入り口で揉めつつ、満員だという店内をのぞくと、なぜか本の雑誌社のスタッフとWEB本の雑誌のスタッフが座っているではないか。本の雑誌社のスタッフは、私が会社を出るときにはまだ会社にいたので、まずはじめに私は四次元空間に入り込んでしまったのではないかと思った。

「なんで杉江が来たんだよ」

 発行人の浜本の叫び声が聞こえ、これは私をハブにした「WEB本の雑誌」のリニューアル飲み会が行われているのだと思った。たまたま両者が同じ日に池林房を予約したのだ。その瞬間ふざんけんじゃねーと怒鳴りそうになったが、あまりに情けないので別のお店に行こうと振り向くと、座敷に見慣れた顔がいるではないか。

 そこには日頃お世話になっている書店員さんと出版営業マンと元・助っ人がたくさんいた。
 時空がゆがみ、倒れそうになった。
 そして私は気づいたのである。
 そこが、私の出版記念パーティーの会場だと。

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 こんな日記を書いたり、その結果本を出してしまったりしたのであるが、私は目立つのが大嫌いである。だから本屋大賞の発表会では裏方に徹し、ほとんど会場に顔を出さないし、実は主賓になるのが耐えられず、結婚式も披露宴もしていないのである。

 それが本が出るとなったとき周囲の人間に「出版記念パーティしようね」と声をかけられたり、ライターであり川崎フロンターレ・サポでもある大橋博之さんから「私が幹事しましょうか?」と申し出をいただいても、いっさい首を縦に振らず、断ってきたのである。

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 そういう私に業を煮やした人たちが、池林房に集まってくれたようだ。

「泣け〜」と誰かが叫んだが、泣くどころか驚きで胸がいっぱいであった。今までの人生、人を騙す方にばかりいたので、この状況が頭で理解できても、気持ちの整理がつかない。

 それでも僭越ながら挨拶の指名をさせていただき、まずこの本が出る出会いを作っていただいた、地方小出版流通センターの門野さんに、乾杯の挨拶をしていただいた。門野さんはいきなりの指名にも関わらず、大きな声で祝ってくれた。

 そしてここに来ていない人も含めて、あまりに多くの方から届いたプレゼントは、なんと『「本の雑誌」炎の営業日誌』への手書きPOPをきれいにファイリングした「楽しい杉江」というファイルであった。本屋大賞の賞品で一番作家さんが喜ぶのが、会場いらしていただいた書店員さんなどによる手書きPOPなのであるが、まさにそれと同じものが私の目の前にあった。

 1枚1枚めくっていくと、なぜこんな人まで?と驚くような人からも届いていた。一人ずつ名前を挙げてお礼を言いたいところだが、とにかくみなさんありがとうございました。そしてPOP以上におそらくこのファイルを作るのが大変だったと思うのだが、こちらも本当にありがとうございました。

 そこへ編集長の椎名さんから電話が入る。もはや私の目は涙でいっぱいであった。「おめでとう。お前よくやってるよ」とほめてくれた。実はこの日の朝、沢野さんからも気持ちのこもったFAXをいただいていたのだ。私にはもう何も言葉がない。

 中締めの挨拶は、我が師匠のひとりである、リブロの矢部さんにお願いした。矢部さんは「ここに集まった書店員の力をあわせて、杉江君の本が重版がかかるようがんばりましょう」と声をかけてくれた。

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 本日、そんな話を上智大学の授業を終えた高野秀行さんに話すと「ね、本を出すといいことあるでしょう」と笑うのであった。その高野さんは、ブログで私のことを同士と呼んでくれたのである。

 私は、やっぱり、本の力を信じている。
 とことん信じているのである。

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