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2008年12月 年越し蕎麦ためらい号 No.306

 雑誌が売れないと叫ばれる前から、雑誌につきもののおまけといえば、なんといっても付録であった。少年誌の永遠不滅な組み立て付録から、最近はオークションで高値で転売される!と噂の女性誌のブランド・グッズまで、とにかく色々な付録でいっぱい。まあ、こんな付録で客寄せしていいのか、という疑問もないわけではないが、こんなに種類が豊富なら、もしかして人は雑誌の付録だけで生活できるのでは? というわけで、本の雑誌12月号の特集は「雑誌の付録で快適生活!?」。一カ月間に発売となったすべての雑誌の付録に読者の欲しい付録を合わせ、人間は雑誌の付録だけで生きられるのかを徹底調査するのだ!

 新刊めったくたガイドは三橋曉がディーヴァー節炸裂の番外篇『スリーピング・ドール』の頭脳戦に息をのめば、牧眞司は家族四代の歴史を遡行し現実を多重露出する傑作を前に乳母車の免許制を提言!?  大森望が山田正紀渾身の本格SF巨編『神獣聖戦』2100枚の完結を寿げば、宇田川拓也は傑作二連発の初野清を熱烈推薦! 永江朗が岡崎祥久の新日記文学で日常をシャッフルされたかと思えば、東えりかはオタクでシゲキックスな『在日米軍最前線』に驚愕! そして北上次郎は志水辰夫『みのたけの春』を今年のベスト1と絶賛! さあ、師走も間近のこの時期に出たベスト1は年末まで突っ走るか。1月号のベスト10特集も楽しみに待ってくれぃ!

 今月の特別読み物はシンポ教授の温故知新インタビュー番外編。中島梓や連城三紀彦、泡坂妻夫らを生んだ、伝説の探偵小説誌「幻影城」の元編集長・島崎博にインタビュー! ではなく、一緒に神田神保町に行って古本を買おうツアーを敢行したのだ。故郷の台湾から四半世紀振りに「幻影城」の聖地・神保町に姿を現した島崎編集長は、さて、何を買うのか。古本旅男・北原尚彦に古本女王も同道し、いざ、出発! さらに『童夢』を読みなおしてみた吉野朔実に安藤忠雄を「辺境建築家」と命名する高野秀行、北京、盛岡、ホーチミンと重さに負けず本を買いまくる鏡明と連載も絶好調。おこた出したら加湿器も、お酒はやっぱりぬるめの燗、付録はなくても心は錦、の「本の雑誌」12月号で、リーマンもサブプライムもどーんとぶっ飛ばすのだあ!

目次

今月の一冊

吉野朔実劇場/読みなおしてみる 吉野朔実
よさこい少女マンガ格闘記/熱血100%じゃない女子のバレーマンガ ビンゴ本郷
ブックス・墨瓦蝋泥加/妄想・性癖ごちゃまぜの素敵にアホな報告書 宮田珠己

特集:雑誌の付録で快適生活!?

☆一カ月間に入荷した雑誌の付録を全チェックして、人間が
生活するにふさわしい雑誌の付録とは何かを徹底調査するのだ!

赤パンツこそ最大のヒット作だ! 白川浩介
読者アンケート/こんな付録が欲しい!

トヨザキ社長の「寄らば斬る!」/化け物小説家・村田沙耶香にワクワク 豊崎由美
ヒーローたちの荒野/結城昌治の初期と高城高の晩年 池上冬樹
旅と本の重さ 鏡明
南の話/あの『調書』 青山南

サイコ・スリラーから一歩踏み込んだホフマン『心神喪失』 穂井田直美
神谷下級貴族と怨念の一条その重み 神谷竜介
書店から読者まで一蓮托生の本の未来 田口久美子
読みごたえたっぷりナンシー・クレスの宇宙SF三部作開幕! 山岸真
自民党のさらに上いく新潮新書の情報戦略 近藤庄太郎
未来に向かう新出版社二社が面白い! 柴口育子
法華経は強烈な文芸スペクタクルである! 渡邊十絲子
地方新聞社12社が共同出版する「限界集落と地域再生」 川上賢一

坪内祐三の読書日記/露鵬と白露山を黒人歌手の家につれていったのは白鵬だった!? 坪内祐三
ミーツへの道/ミナミのママ 江 弘毅
高野秀行の辺境読書/“辺境建築家”安藤忠雄のおそるべき仕事 高野秀行
自在横丁/
 ・今月の林カケ子 林カケ子
 ・ミミ中野のこれいただくわ ミミ中野
 ・古本屋セドロー君の午後 向井透史
温故知新インタビュー番外編/「幻影城」島崎博さんと神保町で一日遊ぼう! 新保博久
岸和田DNA/ドイモとコイモ 中場利一
ハードボイルドとコージーの楽しい融合なのだ! 大矢博子
ピーター・チェイニイ四十年ぶりの邦訳 吉野 仁
弩級の不快爆弾『悪霊の棲む日々』をくらえ! 霜月蒼
史上もっとも独創的で残酷な誘拐の記録 柳下毅一郎
掲載図書索引

続・棒パン日常/謎のお客さん  穂村弘
三角窓口/本のタトゥー・ブームを歓迎する! 他
長島千尋のうきうき道場  長島千尋

「鬼平犯科帳」の弁護士的読み方 木村晋介
歩く旅/穂高神社の奥の院 沢野ひとし
今月のお話/北や西へ充実取材 椎名誠
後記

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