
作家の読書道 第85回:佐藤賢一さん
中世や近世のヨーロッパを舞台にした歴史小説を中心に発表、歴史的人物を活き活きと描写し、史実の意外な裏側を見せて楽しませてくれる佐藤賢一さん。カエサルやアル・カポネ、さらには織田信長など、時代や場所を広げて執筆する一方、今月からいよいよフランス革命を真っ向から描く大作の刊行がスタート。そんな歴史のエキスパートの読書歴には、驚きがつまっていました。
その2「世界各国から資料を取り寄せる」 (2/6)
- 『双頭の鷲〈上〉 (新潮文庫)』
- 佐藤 賢一
- 新潮社
- 853円(税込)
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――西洋史を専門とされてから、その面白さに目覚めたということはありますか。
佐藤 : それまでまったく白紙に近い状態だったので、一気に入ってくると盛り上がるところがあって。手当たり次第、何でも吸収したい、というような。歴史も一生懸命勉強したし、関連する小説も読みました。
――卒論のテーマは。西洋史の資料って、手に入りやすいものですか。
佐藤 : 14世紀のフランス、百年戦争をやっていた頃について書きました。その後書いた『双頭の鷲』の時代背景と同じです。資料はわりとあったと思いますよ。やっているうちに洋書屋さんや業者に頼むなど、本の取り寄せ方も覚えてくる。大学院に進んでからは、資料として古文書を読むようになるので、パリならパリに古文書をコピーさせてくださいと手紙を出して、複写を送ってもらったりしていました。でもパリはコピー代が高いんですよね。1枚40~50円したと思う。でも地方の、例えばボルドーとかトゥールーズのほうにお願いすると「うちの町のことをやってくれるなんて嬉しい」という感じで、タダで送ってくれたりする。同じ資料なら地方に頼むようにしていました。
――トゥールーズにこういう資料がある、って分かるのですか。
佐藤 : 分かります。調べる方法があるんです。意外とヨーロッパのものがアメリカに入っていたりすることもありますよ。アメリカに国会図書館のようなところがあるんですが、先に為替を入れないと送ってくれない。10ドルの為替を入れて、それよりも金額がオーバーすると請求してくるのに、10ドル以下で済んでも返金してくれない。それでかなり損をしました(笑)。