第97回:越谷オサムさん

作家の読書道 第97回:越谷オサムさん

一作ごとにまったく異なる設定で、キュートで爽やかなお話を発表している越谷オサムさん。新作『空色メモリ』は、地味だけど愛らしくて憎めない高校生の男の子2人が探偵役として活躍。そんな発想はどこから生まれるのか。辿ってきた読書道は、まさに男の子っぽいラインナップ。そして小説の執筆に至るまでの、意外な遍歴とは?

その5「デビュー前後からの読書生活」 (5/6)

亡国のイージス
『亡国のイージス』
福井 晴敏
講談社
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マークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド)
『マークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド)』
高村 薫
早川書房
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クライマーズ・ハイ
『クライマーズ・ハイ』
横山 秀夫
文藝春秋
1,697円(税込)
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――その時期は、本は読んでいたのでしょうか。

越谷:『亡国のイージス』はその頃だったかな。『らせん』なんかも。講談社文庫がミステリーを推していた時期で、『マークスの山』や『OUT』などが出ていて、ミステリー食わず嫌いも解消していきました。ただミステリーは読めるけれど書いたことはなかったし、『ボーナス・トラック』のアイデアが出てからは、それが書きたかったので、応募するとしたら日本ファンタジーノベル大賞しかないだろうと思っていました。

――そういえば、その頃はもうマクドナルドは辞めていたんですよね。

越谷:ファンタジーノベル大賞の13回と16回の間は、本の改装作業のアルバイトをやっていました。版元に返品されてくる本を、グラインダーで天地を削ったりしていました。受賞して、おかげさまでいくつか声がかかりまして、バイトしながらだと何年かかっちゃうだろうと思って辞めましたが、正社員だったら辞めていなかったかも。一応、その頃から出版業界にいたわけですね(笑)。いや本当に『ONE PIECE』をどれだけ削ったことか。その頃『少年ジャンプ』の漫画というのは、読者としてではなく、業者として接していましたね(笑)。

――デビューした時に越谷というペンネームにしたのは...。

越谷:応募要項にペンネームの欄があるので考えていて、たまたま。特に地元に対する愛着から、ということではないんです。

――執筆専業になってからは、生活サイクルはどうなりましたか。

越谷:いろいろなパターンがあるんですが、だいたい9時くらいまでに起きて、今は足を怪我しているのでやっていないんですが、某ナントカブートキャンプをやって(笑)、やらない日は掃除などをして、お風呂に入ってお昼ごはんを食べて、午後1時くらいから書き始め、夕食を取りつつ22時以降、0時くらいまでにはやめるようにしています。

――読書の時間は。

越谷:寝る時ですね。最近はネット書店で評判のいいものを選んだりもしています。相変わらず文庫落ちを待つタイプなので、3年遅れくらいで読んでいます。『クライマーズ・ハイ』が面白い面白い(笑)。

――今頃っ(笑)!

越谷:人に勧めようかと思ったら、もうみんな読んでいる(笑)。

――小説が多いのですか。

越谷:フィクションとノンフィクションと、同時進行で読んで、その合間に漫画も読みます。フィクション2冊だと、話がまざってしまうので。

第一阿房列車 (新潮文庫)
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内田 百けん
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――1冊ずつ読むのではなくて、2冊同時に読み進めるのですか。

越谷:こっちを読み疲れるとじゃああっちにしよう、という。『亡国のイージス』みたいな小説を読んでいて疲れてくると別役実さんや『阿房列車』を読むという。まあ『阿房列車』もフィクションといえなくはないけれど。

――内田百閒。それはいつくらいに読んだのですか。

越谷:デビュー前後ですね。すっとぼけたおっさんの系譜の先のほうにいる人ですよね。清水さんや別役さんもすっとぼけたおっさんで、その先っちょのほうにいる人を見つけた、と思いました(笑)。

――キングやグリムのほかは、海外小説は。

越谷:エルモア・レナードの『グリッツ』などは素晴らしく面白いと思ったのですが、昨日文庫の棚から出してぱらぱらとめくってみたら、あんなに面白いと思ったのはなんだったんだろう...と(笑)。面白かったはずの軽口なんかが、結構モタモタして感じられたんですよね。20代の頃から僕の傾向が変わっているのかなと思ったんです。

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