第215回:相沢沙呼さん

作家の読書道 第215回:相沢沙呼さん

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が2019年末発表のミステリランキングで3冠を達成、今年は同作が2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となり、さらに『小説の神様』(講談社タイガ)が映画化されるなど、話題を集める相沢沙呼さん。そんな相沢さんが高校生の時に読んで「自分も作家になりたい」と思った作品とは? 小説以外で影響を受けたものは? ペンネームの由来に至るまで、読書とその周辺をたっぷりおうかがいしました。

その7「話題作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』」 (7/7)

  • ハコヅメ~交番女子の逆襲~(11) (モーニング KC)
  • 『ハコヅメ~交番女子の逆襲~(11) (モーニング KC)』
    泰 三子
    講談社
    693円(税込)
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  • しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)
  • 『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)』
    妻夫, 泡坂
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  • 生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)
  • 『生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)』
    妻夫, 泡坂
    新潮社
    605円(税込)
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――さて、今大変話題になっている『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は殺人事件が起きますし、これまでの相沢さんの作品とはまた違いますよね。推理作家が霊媒師の助けを借りながら事件を解くという......いや、あらすじは何を話してもネタバレになりそうで危険なんですが。なにかきっかけがあったのですか。

相沢:一度、より多くの読者にリーチするような、エンタメに振り切った作品を書いてみようかなって思ったんです。これまで書いていた話は、どちらかというと狭い範囲のマイノリティの人たちに深く刺さる作品を書いてきたつもりだったんです。それと、僕は基本的に読書する人たちってマイノリティと思ってきたんですが、そうとも限らないなと思ったんですよ。これまで書いてきた小説は、そっと大切にはしてくれるけれど、「ねえねえ、これ読んでみてよ」とはなりにくいんじゃないかなとも思いました。それで、エンタメを純粋に楽しむ層にも届くような作品を書いてみることにしました。

――そうだったんですか。

相沢:マジシャンの前田知洋さんも、いま結構僕と遊んでくれるんですけれど、「演じるマジックをどう選ぶか」みたいなことを話してくれて。より多くの人たちに喜んでもらうマジックを選ぶためにはどうすればいいか、みたいなことですね。話を聞きながら、「そういうふうに真剣に、どういう作風を選んだらどういう人たちに届くかってことを考えたことがなかった」と思って。特定の人たちに深く刺さる話ももちろん大事だけれど、より多くの人に届けるのならば、人に話したくなるような何かのある作品づくりというのを1回やってみるべきかなって。自分らしくない作品になってしまうかもしれないけれど、なんやかんや言っても自分らしさは残るだろうと思ったし、今までやったことのない部分に挑戦してやってみる、というのがありました。

――そう思って、本当にここまで話題になる作品を書けるのがすごいですよね。「このミステリーがすごい!」2020年国内編1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリーの3冠達成で、13万部突破ですよ?

相沢:本当にありがたいことです。読んでくれないことには何もできないですから。
 これは結構スラスラと書けたんです。筆が遅い僕にしてはかなり早く、2か月もかからなかったと思います。担当編集者の河北君からは「『小説の神様』の続篇を書け」と言われていたのに、なにも相談せず、一人で勝手に考えて、プロットを組み立てて、何の事前告知もなく原稿を書いて送りました。読んだ河北君は「これはいけますよ」と言ってくれたんですが、どう宣伝するかで結構時間がかかりましたね。下手したら多くの人には読んでもらえない可能性のあるあらすじとタイトルなので、届くべき人のところに届かない可能性も高かった。読んでもらえたら面白がってくれる人は多いだろうとは思ったんですけれど、本当に、読んでもらえるかどうかが分からなくて。

――装丁も「すべてが伏線。」という帯もよかったですよね。『小説の神様』も5月に映画が公開になるし、お忙しいとは思いますが、いま1日のタイムテーブルってどうなっていますか。

相沢:いま、生活リズムが崩壊しきっていて。基本夜型人間なので、夜のほうが仕事も効率がよくてですね、ついつい夜起きて、朝寝るみたいなことになってしまうんです。本当は普通に夜寝て朝起きるのが身体の調子がよいので、それに戻りたい。

――読書はしていますか。

相沢:最近はもう、手品の本ばっかりです。手品のいい本ってあんまり翻訳されないので、洋書を読みます。そんな英語は得意じゃないので、機械翻訳を駆使しながら、ちょっとずつ読み進めていくしかできないので、時間がかかります。あと、『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』という漫画がめちゃくちゃ面白いです。交番のおまわりさんの話なんです。

――さて、エンタメに振り切った作品がここまで話題になって、今後どういうふうな作品づくりをしていくか、どう考えていますか。

相沢:どうすればいいんでしょうか(笑)。......まあ、『medium』の続篇を書こうという話にはなっています。何パターンかやりたいことはあるんです。

――マジックが上手なミステリ作家といえば泡坂妻夫さんですが、泡坂さんの『しあわせの書』や袋とじの『生者と死者』のような、本自体に仕掛けのある本を作ってみたいとは思いますか?

相沢:仕掛けのある本はやりたいですね。袋とじとかになると電子書籍にできないという問題もありますが......。でも、『medium』もマジック的な仕掛けのある本として作ったつもりですし。

――ミステリ以外にも、『小説の神様』のような作家デビューした少年少女の葛藤が描かれてる青春小説があったり、他にもライトノベルなど幅広く書かれていますが、今後もいろいろと書いていきますよね。

相沢:そうですね。最初はライトノベル作家になりたかったものですから、あまりミステリ作家になるビジョンが自分になくてですね。一応ミステリ作家としてデビューしましたし、ミステリも読むのがすごく好きなので書いていきますけれど、やっぱりライトノベルを読んで育っているので憧れもあるし、育ててくれたものに恩返ししたい、という気持ちもあります。もちろん青春小説にも挑戦し続けたいです。

(了)