年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
大場 義行の<<書評>>
文庫本 今月のランキング
一覧表に戻る
Queen

「旅涯ての地」
評価:A
最近会社でいろんな事をしているせいか、外に出ていない。もちろん旅行なんて行ってない。その寂しさを少しは紛らわせてくれたのかなと思う。マルコ・ポーロなんかがいる時代の、西の涯ての国に来てしまったなと、素直に感じてしまった。オモシロイのが、当時の人々が居ると思っていた悪霊、悪魔、神様なんかが、当たり前のように出て来ちゃう所。平気で手がある魚が捕れたり、バジリスクなんて化け物もいるし、しかも結構さらりと書いてたりもする。そんな風に様々な生活様式、宗教、人種なんかをごっちゃごちゃと鍋で煮て、飲まされた感じがした。しかも後味も不思議と良かった気がしている。
旅涯ての地 【角川文庫】
坂東眞砂子
本体 各571円
2001/6
ISBN-4041932068
ISBN-4041932068
●課題図書一覧

「Twelve Y.O.」
評価:C
ゲーム感覚。もしくはアニメ感覚。「亡国のイージス」もそうなんだけど、不思議な匂いがぷんぷんして、個人的にはどうしても深く入り込めないんだよなあ。熱い男が出てくる事は出てくるが、なぜか熱く描写されるのは兵器の方だったり、人物の行動を熱く語るのではなく、本当に熱く語っているのは軍事関係の蘊蓄の方だったりするんだよなあ。結構読みやすく、さらりとしているけれど、どうしてもこの辺りがひっかかってしまう。その辺り好きな人には堪らないと言える本なのかもしれない。
Twelve Y.O. 【講談社文庫 】
福井晴敏
本体 648円
2001/6
ISBN-4062731665
●課題図書一覧

「双頭の鷲」
評価:A
これはもう文句のつけようが無い。とにかくオモシロかった。熱い男ども女どもの物語で感動し、熱くなり、そしてその先にあるむなしさに呆然とする。知られざる戦の天才ゲクラン元帥のキャラクターに最初はとっつき難かったが、馴れてくると、もうダメ。一緒になって喜んだり、泣いたりしてしまう。それにあの黒太子エドワード、太陽王シャルル五世など有名人もいい感じだし、もうほんと楽しめましたです。それに、なんとなくだけど、佐藤賢一の人柄のせいか、文章に温かみがあるところもいい。参考文献はみな原書という所といい、この温かい文章といい、なんか佐藤賢一にはまりそうな予感がしてしようがない。
双頭の鷲 【新潮文庫】
佐藤賢一
本体 各781円
2001/7
ISBN-4101125317
ISBN-4101125325
●課題図書一覧

「小説中華そば「江ぐち」」
評価:C
小説って書いてあるけど違うじゃんと云うのは置いておいて、ああ、こんな事よくやったなと思い出してしまった。いきつけのラーメン屋についてあれやこれや言い合うやつ。おやじさんは巨人大好きで、負けると機嫌が悪い。息子さんはアイスビール好きで自分と同い歳くらい。全く同じ事してるよ、こいつ、という事でほんと懐かしい。ラーメン屋の三人の従業員の得意技、どこら辺に住みついているのか、などなど。でも、それは自分たちの事を思い出させてくれただけ。この本は、他人の思い出なので、余り入りこめなかった。それにちょっと脱線が激しすぎて、読み飛ばし気味になってしまいました、ごめんなさい。たぶんこの本は、古き良き不毛な時代を過ごしていなかった人向けだと思う。
小説中華そば「江ぐち」 【新潮0H!文庫】
久住昌之
本体 486円
2001/6
ISBN-4102901027
●課題図書一覧

「バルタザールの遍歴」
評価:D
一つの肉体に二つの魂、しかも「ひどく頭が痛んだ。バルタザールが飲み過ぎたのだ」となると、どことなく退廃的な匂いがぷんぷんしてくる。そうなると普通はわくわくしてしまうのだが、読んでみると悪童日記日本版。確かにいいなあと感じる文章が散りばめられていて、「格好いいぜ」とは思うけれど、内容的にははまれなかった。衝撃度も少ないし、オモシロイ登場人物も出てこない。というか、主人公の双子に面白味が欠けているのが、決定的。どうしても最後の最後までこの佐藤亜紀ワールドに入り込むことが出来なかった。
バルタザールの遍歴 【文春文庫】
佐藤亜紀
本体 600円
2001/6
ISBN-4167647028
●課題図書一覧

「ああ言えばこう食う」
評価:C
食に関するエッセイかと思ったけれど、読んでみると妙齢のご婦人方の井戸端会議本だった。かけあいの意味も最後までよく判らんかったし、なんで二人のイラストは違うんだろう。しかも文章が軽すぎる。と、なんだかんだ言いつつも、三百人分のクッキーを焼いた事件で笑い、あの壇流クッキングの開祖様が、実は細かい人だったとか言う爆弾発言に驚いたりもしてしまった。結構実はさらりとだけど、楽しめる本かもしれない。満員電車の中や、日曜日の午後辺り、そんな感じの時にてきとーにぱらぱらめくるにはいいと思っている。
ああ言えばこう食う 【集英社文庫】
阿川佐和子・檀ふみ
本体 514円
2001/6
ISBN-4087473317
●課題図書一覧

「夜のフロスト」
評価:A
この分厚い本を見れば、この本がいかにごちゃごちゃとした事件を抱えていて、しかもスピーディーさを持ち合わせて居ないかという事がすぐにでも判るはず。でも、この主人公フロスト刑事が、もう最高。阿呆みたいな台詞満載なんだけど、さらりといい事言ったりもする。しかも、こんなキャラクターの為か、凄惨な死体が大量生産されるミステリなのに、余りそれを感じさせないという不思議さ。とにかくずっと読んでいたいと思わせるキャラクターではなかろうか。あれ、そんなんでいいのかという解決もある事はあるし、重すぎるのも確かだが、とにかく何もする事の無い休みの日には最適のいい、ミステリだったと思う。
夜のフロスト 【創元推理文庫】
R・D・ウィングフィールド
本体 1300円
2001/6
ISBN-4488291031
●課題図書一覧

「赦されざる罪」
評価:C
赤ちゃんが盗まれるというショッキングな事件だし、隠された重いテーマがあるにも関わらず、それよりも面白そうなのは主人公家族。主人公の妻の出産、娘の健気な奮闘など。と、なると、やっぱりシリーズ最初の方から読んでいないと、この本の楽しみは激減になるのではないだろうか。どんな妻なんだろう、この娘はどんな感じで成長してきたのだろう、この巻の前にはどんなエピソードがあったのだろうと色々思ってしまう。今の状態では、この本はイマイチ楽しめないけど、シリーズ最初から読んでみれば相当印象が変わるはずとしか言いようがありませんです。
赦されざる罪 【創元推理文庫】
フェイ・ケラーマン
本体 1260円
2001/6
ISBN-4488282091
●課題図書一覧

「エンデュアランス号漂流」
評価:A
冒険野郎どもの素晴らしさにただただ号泣。最近泣きすぎのような気もするけど、ほんと泣きます。しかも号泣。南極冒険に出かけた命知らずの冒険野郎どもが、流氷に閉じこめられた為、船を捨て、脱出。いつ溶けるか判らないような氷の上を移動し、ペンギン喰らって食糧難を乗り越え、助けにくるのか判らないまま、生きようとするのだ。余りに過酷な条件なので、最初は実感が湧かなかったが、そこは写真が付いていて親切。最初に出てくる氷の海に横たわる船の写真もそうだけど、数多くの写真が信じられないような光景なので、ただただ呆然となるはず。実は今でも信じられなかったりして。それにしても男どもが結構あっけらかんとしてたりというのも驚き。冒険野郎ども万歳という感じの素晴らしいノンフィクションだった。
エンデュアランス号漂流 【新潮文庫】
アルフレッド・ランシング
本体 781円
2001/7
ISBN-4102222219
●課題図書一覧

「クリスタル」
評価:D
ヴァクスのアウトロー探偵バークシリーズは久しぶり。でも、やっぱりと云うか、かつての勢いが無いので、残念。しかも、今回は、シリーズでも異色のキャラクターである、凄腕暗殺者ウェズリーをひっぱり出してきている。1巻から、凄腕という噂と名前だけは出てきていたが、登場したのは4巻目というウェズリー。彼のインパクトは半端じゃなかったんだけど、本書はそのインパクトにすがる感じが否めない。いいキャラクターの名前を出せばいいというものでもないだろうし、やはり、初期の頃感じた熱意というか、そんな所が余り感じられなかった。
クリスタル 【ハヤカワ・ミステリ文庫】
アンドリュー・ヴァクス
本体 980円
2001/6
ISBN-4150796106
●課題図書一覧

戻る