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中原 紀生の<<書評>>
ふたつの太陽と満月と
【集英社文庫】
川上健一
定価 630円(税込)
2003/8
ISBN-408747609X
評価:B
全米で一番古く、一番物騒かもしれないNYのパブリックコースで繰り広げられる、スキンズ(賭け金)付きの六つのゴルフ・マッチ。そこでほんとうに賭けられているのは、実は人生の意味であったり、人格であったり、一人の女をめぐる友情であったり、生きのびるための偽装であったり、父と息子の和解であったり、幼い日の淡い記憶であったりする。主人公はそれらの勝負に立ち会い、時には自らが(婚約者を奪っていった友との、十数年ぶりに再会した父親との、過去のどこかですれちがったはずの謎の美女との)闘いの当事者になる。「ゴルフは宗教だ!」──作中のある人物が叫ぶこの言葉に共感できるほどのゴルフ・ファンだったなら、このアイロニカルでいながら爽快で温かく、そこはかとない懐かしさを漂わせた六つの物語に、きっと魂をまで揺り動かされるに違いない。心からゴルフを愛する者に、作者が贈った六つのプレゼント。なぜ続編がないのか、不思議だ。
カルチェ・ラタン
【集英社文庫】
佐藤賢一
定価 860円(税込)
2003/8
ISBN-4087476030
評価:A
まるで少女漫画か宝塚歌劇を思わせる人物群。発端部で、西欧中世、十六世紀のパリを舞台にしたシャーロック・ホームズ譚(ユーモア編)の趣をもつ小咄がいくつか続く。やがて物語は、宗教改革期の神学論争(主知主義対主意主義、カトリック対プロテスタント)を背景に、「人間の時代の新しい神」による陰謀をめぐって、「聖トマス・アクィナスの再来」と謳われる美貌巨躯の学僧マギステル・ミシェル、その教え子にして紅顔無垢の新米夜警隊長ドニ・クルバン、愛らしくも豊満な若き未亡人マルトや妖気漂う伯爵夫人アンリエット、さらにはプロテスタントの旗手カルヴァンにイエズス会の創設者ロヨラ、ザビエルといった実在の人物が入り乱れての大捜査戦が繰り広げられる。軽妙にして深甚な神学ミステリー。惜しむらくは、「神学的解決」に徹しきれず‘肉欲’によるあっけない事件解決に流れたことだが、それはまあ個人的嗜好でしかない。
一瞬の光
【角川文庫】
白石一文
定価 780円(税込)
2003/8
ISBN-4043720017
評価:A
とても初々しい。──橋田浩介。ジョン・スチュアート・ミルと同じIQ(190)の持ち主で東大卒。学業も図抜けスポーツも万能で「若い頃から私は外見のことを言われるのが嫌だった」という美形。38歳で資本金3千億円、従業員5万人の財閥系大企業(たぶん三菱重工業)の人事課長に抜擢され、社長の姪で美貌の瑠衣を恋人に持つ。過激なまでのエリートだが、空漠とした孤独な内面と押さえがたい破壊衝動を抱えている。熾烈な社内派閥抗争に敗れ、瑠衣を棄て、暴力にまみれた悲惨な家庭に育ち最後に植物状態に陥った香折との「生き生きと輝きに満ちていく一瞬」の幸福、「過去も未来もそして現在さえもない」静謐のうちの再生に賭ける。そんな(違った意味での)アンチ・ヒーローを世に送り出し、およそあり得ないシチュエーションを見事に描ききったことがこの作品のすべてで、だからこそ切なくも初々しい。読後、なぜか大藪春彦の処女作『野獣死すべし』が頭をよぎった。
イリヤの空、UFOの夏
【電撃文庫】
秋山瑞人
定価 (1)578円(税込)
定価 (2〜4)599円(税込)
2001/10〜2003/8
ISBN-4840219443
ISBN-4840219737
ISBN-4840221731
ISBN-4840224315
評価:B
1947年6月24日、公式に報告された中では最初のUFO目撃となったケネス・アーノルド事件以来、人々が安穏と日々の暮らしを営むそのすぐそばで「戦争」は行われていた。中学2年生で新聞部所属の浅羽直之が住む基地のある街に転校してきた伊里野可奈は、特殊な能力をもつ戦闘少女だった。やがて戦いは最終局面を迎え、逃避行を続ける直之と可奈には過酷な運命が待っていた…。こんなふうにまとめるとシリアスな雰囲気が漂うけれど、ほんとうはちょっと滑稽で可笑しくて、そのくせ妙に切ない不思議な軽さをもって綴られる物語。読後感は、悪くない。悪くないどころか、駒都えーじの映画ポスターの趣向を凝らした口絵やイラストにあらためて見入ったり、各巻に差し挟まれた番外編や、エピローグで丁寧に書き込まれた後日譚をじっくり反芻したりと、何度でも物語の余韻を確かめることができる本の造り方がいい。登場人物のキャラやギャグにすんなり入っていける年齢だったらと思う。
サマータイム
【新潮文庫】
佐藤多佳子
定価 420円(税込)
2003/9
ISBN-4101237328
評価:A
小学五年生の伊山進と一つ年上の姉の佳奈。進より二つ年上で、ピアニストの母親と二人で暮らしているどこか大人びた浅尾広一。夏休みの最後の日、三人で一緒に食べた塩辛いミント・ゼリーの思い出。喧嘩したまま別れた佳奈と広一。そして六年後、大学生になった広一との再会(「サマータイム」)。その数年前、進の自転車と佳奈のピアノが初めて家にやってきた頃、まだ幼女の面影を宿す佳奈のある日の出来事(「五月の道しるべ」)。佳奈と別れてから三年後、やがて新しい父親となる男と広一との出会い(「九月の雨」)。十四歳になった佳奈と調律師・センダくんとの、氷の鍵盤が奏でる「絶対零度の音」がとりもつ「義理でもないけど、LOVEでもない」関係(「ホワイト・ピアノ」)。四季それぞれのイメージに彩られた四つのショート・ストーリーが綴る、思春期というにはまだ早い、あの特別な時間だけがもつ壊れ物のようなつかのまの煌めき。自転車とピアノ。二つのマイ・フェイヴァリット・シングス(私のお気に入り)に託された、切ないほどピュアな世界。何か大切なものが、ひっそりと編み込まれている。
まぐろ土佐船
【小学館文庫】
斎藤健次
定価 600円(税込)
2003/10
ISBN-4094080171
評価:B
全長四四・五メートル。幅八・五メートル。深さ三・四メートル。ちょうど百十五坪の四階建てビルに相当する狭い空間に、二十人の気の荒い男達が五年もの長きにわたって監禁状態での生活を続けていく。著者がコック長として乗り込んだ土佐のマグロ船、第三十六合栄丸での一七七○日は、かくも過酷で壮絶な日々だった。けっして大仰にならず、劇的な効果をねらった身振りは極力禁欲し、マグロ船の男達の栄光と悲哀、その家族との交情、彼らを取り巻く経済や国際情勢まで、淡々と力強く叙述しきったノンフィクション(真実の物語)。「この二年間、地球をめまぐるしく走り回ってきた。海の色など、どこも変わらない。自分はいつも同じ場所にいるのではないか、という錯覚にとらわれたりする。」──原著と文庫版の二つの「あとがき」に綴られた後日譚(もう一つの真実の物語)が、読後の余韻を深いものにしてくれる。
猫とみれんと
【文春文庫PLUS】
寒川猫持
定価 530円(税込)
2003/8
ISBN-4167660571
評価:B
五・七・五に七・七をつけくわえただけで、突然、そこに盛られる世界が変容してしまう。俳句が、自分と世界の関係を客観的に観察し、時にコスミックな空間感覚をもって描写することに長けた言葉の容れものであるとすれば、短歌は、嫋々たる情念、内にこもった憾みや爆発寸前の歓喜とか官能を封じ込めるに適した、どちらかといえば時間的な感覚に根ざした表現様式で、ともに数打ちゃ当たる累々たる草稿群から何を選びどう推敲するかという選球眼と仕上げのセンスに勝負はかかっている。寒川猫持のまるでボクシング、言葉の格闘技のような自由奔放な息づかいと、融通無碍な言葉の配列がかもしだす世界は、私小説ならぬ私短歌、自伝短歌の芸風のうちに、軽妙洒脱、当意即妙の俳句的感覚を織り込んだ不思議なもので、俳句はこうで短歌はああだといった出来合の区分けを粉砕し尽くし、尾籠なギャグと俗な意匠をまとったそこはかとない悲哀をさえ漂わせている。一つ選ぶとすれば、「中年エレジー」の巻に収められた次の一首。形而下の女を愛す形而下の中年のボク形而上的に。
もっとハッピー・エンディング
【文春文庫】
ジェーン・グリーン
定価 860円(税込)
2003/8
ISBN-4167661446
評価:C
たまたまTVで放映されていたメル・ギブソン主演の『ハート・オブ・ウーマン』を観た後で、この本を読み終えた。ロマンティック・コメディというこの種のジャンルの映画は、出演している男優や女優の演技力いかんで、心にしっくり残ったりくだらない時間つぶしに終わったりする。もっとあけすけに言うと、好みの俳優かどうかで印象が決まってしまう。前回のアン・タイラー、いつぞやのデビー・マッコーマー、そして今回のジェーン・グリーンの作品はいずれも、家族や恋人や友人やライバルとの丹念に綴られた人間関係をベースに、別れと出会い、成功と挫折、そして新しい人生への漠然とした不安や期待を渾然と描いた、女性の「ライフスタイル小説」とでも言えるもので、結局、ヒロインやそれをとりまく友人、恋人たちにどれだけ感情移入できるかが勝負。で、『もっとハッピー・エンディング』は、ストーリーはよく出来ていて、異性愛に同性愛、友情に性愛と多彩に繰り出される人物の絡みも面白いのだけれど、やっぱりヒロインの人間像が掴みきれないまま終わってしまった。誰か好みの女優の容貌や声や振る舞いを想定しながら読んでみればよかった。
消えた少年たち
【ハヤカワ文庫SF】
オースン・スコット・カード
定価 (上)819円(税込)
(下)861円(税込)
2003/8
ISBN-4150114536
ISBN-4150114544
評価:A
全十五章の最後から二つ目、下巻の「クリスマス・イブ」の章で明らかにされる真実と奇蹟の出来事にふれずして、この作品の魅力、ディテイルや人物描写の見事さ(とりわけ、物語の本当の主人公ともいえる七歳の長男スティーヴィの可憐さ、純粋さの描写は絶品)と鮮烈な感動の質を語るのはとても苦しい。幼い子供たちを取りまく様々な危険や家族の絆への過敏すぎる反応、理不尽な世の中に対する慎ましさを失わない毅然とした姿勢。「屑屋のおっさん(ジャンクマン)」「魚屋のおばさん(フィッシュレデイ)」と互いを呼び合う若い夫婦の思考と行動を支えるある種の過剰が、この優れた「家族小説」(解説の北上次郎の評言)に深いリアリティをもたらしている。──物語の終盤に登場する、冷静沈着で人情の機微に通じたダグラス刑事の言葉が印象に残る。「わたしが言いたいのはね、とても悪いことをする連中がいて、それがあまりにも邪悪なことなので、この世界という布地が切り裂かれてしまう。そしていっぽうにとても心根のやさしい善人がいる。その連中は世界が切り裂かれたときにそれを感じることができるんだ。そういうひとたちには物事が見える、物事がわかる。ただあまりにも心根がやさしく純粋なので、自分に見えているものがなんなのかわからない。それが、おたくの坊やの身に起こっていることじゃないかと思うんだ。」
コウノトリの道
【創元推理文庫】
ジャン=クリストフ・グランジェ
定価 1,050円(税込)
2003/7
ISBN-4488214061
評価:B
様々な伝説によって、ヨーロッパから中東までいたるところでその特別な力が信じられているコウノトリ。オレンジの嘴を持った白と黒の鳥。ある年、アフリカから渡ってくるはずのコウノトリが姿を消した。謎の鳥類研究家から調査を依頼された青年ルイが、フランスからスイスへ、ブルガリア、トルコ、イスラエルから中央アフリカへと探索行を続ける。先々で起こる惨たらしい殺人。殺し屋から逃れ、自らもまた血で手を染め、つかの間の官能に心を休め、やがて国境をまたいだ奇想天外な犯罪のトリックを暴く。そして、秘められた自身の生い立ちの謎へと迫っていく…。コウノトリの渡りを題材とした壮大な仕掛けが素晴らしい。第一級のフィクションの香りが漂うが、ルイの冒険譚がただ物語の筋を追うだけでサスペンスの高まりと深まりに欠け、コウノトリにまつわるミステリーと「指紋のない男」ルイの過去をめぐる謎との関連づけがやや強引。