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今回、さまざまな哀愁を抱えて、昼となく夜となく走るのは、都心と郊外の住宅街を結ぶ私鉄。俺の家は、JRの線路際で、最寄駅も当然JRですし、作者の意図している京王、小田急(どちらだか分からない程度の認識だし)あたりの雰囲気というのは、想像するしかない訳ですが、人々の生活に密着したものであるからこそ、そこには、街の新陳代謝の過程で顧みられなくなってしまい、時には取り壊され、時には取り壊されることもないまま、かつての喧騒が感じられ、かえってもの悲しさを醸し出す、そんなあれこれが点在しているんだろうなあ、と。
できれば、もっと暖かい季節になってから読むことをオススメします。
若い頃を振り返るとき、子どものことをあれこれ心配するとき、そして年を重ねた親のことを思うとき、どのページを読んでいても、同年代の重松さんがつむぐ小説は何かしら思い当たる。 そしてそれをきっかけに自分の世界へとはまり込んでしまう。 連れ合いを見送り一人暮らしを続ける母が登場する表題作の「送り火」は特に印象深い。 「お父さんも、家族をいちばん大事にしてたひとだったから」 このセリフ、まさに母から何度も聞いた言葉でした。
私鉄沿線沿いに住むさまざまな家族のなにげない日常生活が教えてくれるもの。 それは日々のささやかな出来事がどれほど幸せであるかということ。 帰宅する家族を笑顔で迎えよう、そんな気持ちになる一冊。
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