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この作品は、そんな熱さ(暑さ)とは対極にありながら、でも、読後すぐに、鉄道に乗りたくなる、という、不思議な効果をもたらしてくれます。
『伝染るんです。』をはじめ、読者を不条理で奇妙な世界に突き放し、不安な気持ちになりつつも、つい笑ってしまう、そんなギャグを提示し続けているコミック界のトップランナーが、淡々と旅をして、淡々と鉄道への想いを語る。その語り口の熱の無さこそが、かえって、旅を愛し、鉄道を愛し、電車を愛している著者のありようを感じさせてくれます。合間を飾る吉田絵も絶妙。
旅先でおもしろいものを見つけるのが、やたらうまい。 例えば、電車内にあるプレートの文字に目を留める。「手歯止めよいか?」 よいか?と問われても…。 佐野駅では、昔の新幹線の鼻と思われる黄色い丸いものが何の説明もなく置いてあるのを発見! その写真を見て、私は笑いが止まらなくなった。 前月の重松さんに続き、吉田さんも私と同年代! まったくもって同窓会でも開きたいノリだが、小学生の娘を持つ気持ちなど今回も共感する場面が実に多い。 娘さん同行のエピソードは、吉田さんの父親ぶりあたふた加減が見え隠れして、なんとも魅力的だった。
そして吉田さんの激しく話をそれるところがなんともいい。 もちろん彼独特のイラストも満載で、旅の醍醐味をぐっと深めてくれた。
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