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WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年4月の課題図書 文庫本班

友だちは無駄である
友だちは無駄である
佐野洋子 (著)
【ちくま文庫】
税込609円
2007年2月
ISBN-9784480423092
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  荒又 望
 
評価:★★★☆☆
 子供の頃、学生時代、そして大人になってから。年代によってそれぞれ違う、友達との関係について著者が語る。
 年齢を重ねるにつれて微妙に変わっていく友達づきあいに関する著者の述懐。その時代その時代で、「うん、わかるわかる」とうなずきながら読んだ。そうそう、子供の頃って実は大変なんだよね、そうそう、皆それぞれに人生が始まっていくんだよね、と大いに同感。
 主に対話形式で書かれている。この相手は誰だろう、と想像するのも楽しかった。女友達との会話の部分では、仲が良くないと言えないような歯に衣着せぬ言葉がぽんぽん飛び出して、これまた楽しい。全体的に軽妙洒脱な語り口だけど、ところどころで胸がじわーっと熱くなるようなエピソードもある。読み終えて、あまりに月並みではあるけれど、友達ってやっぱり良いものだな、としみじみ思った。
 「友だちって時間かけないとおもしろくないんだよ」というひとことが名言。広くて浅い交友関係を求める人も多いだろうし、広くて深ければもっと良いのかもしれないけれど、やっぱり狭く深くがいちばん良い。そういう考えの人ならば、共感できる部分がとても多いはず。

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  鈴木 直枝
 
評価:★★★★☆
 残念だ。付箋だらけになってしまった本書をお見せ出来ないことが。
 幼児期を振り返る「子どもって、たいへんだったなあ」から始まり、上京し美術を志し、男と出会い、「おふくろ」と呼ばれるに到る今までの佐野洋子友だち談義書である。北京にチンチン電車が走るような昔にもいじめはあった。その中で「子どもは明日の運命を知らない」「オドオドすると確実にやられる」と当時を振り返る。いじめの加害者にも被害者にもなりながら。「そうそうそうなのよ」「やっぱりねー」と頷いて励まされ、いじめられたことを「よかった」と「人とつき合うことのデッサンだった」と言い切られると、タイヘンとか困ったと思い悩み、皺や白髪を増やしていることが徒労に思えてくる。時に急所を突くような辛辣な意見も飛び出す。が、こうしていい大人になって、怒ってくれる人すら身近にいなくなった私にはその鋭ささえも心地よく響いてきた。
 友だちにまつわる珠玉の言葉のオンパレード。人間関係に変化の訪れる春先、鞄に忍び込ませ、落ち込みそうになったら取り出して欲しい。教師の説教より佐野洋子。

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  藤田 佐緒里
 
評価:★★★★☆
 先月上旬、大学時代の無二の友人たち5人で卒業旅行としてグアムに出かけたのだが、青い海白い砂浜バカンス気分満載のグアムでしたことと言えば、昼も夜もなく飲み会飲み会飲み会飲み会…。これじゃ日本と、それも近所の安居酒屋と何も変わらん!!とは言え、詳しくは語らないがこれがあんまりにも楽しく、もうきっと私は一生忘れられないと思う。
 思えば今までずっと、こういうどうしようもないことを友人たちとし続けてきた。自分にとっては損ばっかりで、その友だちといることで何か利益を得られるというわけでは到底ない。でも、何も得られずともその友だちと一緒にいることが、どうしても私には必要なのだ。ただ酒を酌み交わすためだけにわざわざグアムに行くような無駄な友だちが、私には必要なのだ。
 新刊採点なのにちっとも採点していないけれど、この本は言わずと知れた佐野洋子さんのエッセイです。上記のような気分がもっとずっと共感できる言葉で綴られています。しばらく会っていない無駄な友だちに、今すぐ会いたくなります。

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  藤田 万弓
 
評価:★★☆☆☆
 本を読む時、よく思うことはあるジャンルに対して一定の量を読んでいなければわからない部分があるのではないかということ。
 そういう点において私はこの本の読者としては未熟であると思った。なぜなら私は絵本をほとんど読まないので、どうやって読んだらいいのかわからなかったのだ。
 でも、この本の著者は『100万回生きたねこ』という大ベストセラーの著者である。なにかすごいことが書いてあるのだろうとも思う。でも、いくら読んでも友だちに対する捉え方や彼女の使う言葉のニュアンスを汲み取れない。
 書評をしなくてはいけないので、客観的に読もうとするがわからない。もう何を書いていいのかわからなくなったので、センスがないことをさらけ出す恥もいとわず私は言います。
 よくわかりませんでした。それは、本の質がいいのか悪いのかさえも判断できないという意味で、です。むしろ他の方々が読んだ感想を聞きたいです。

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  松岡 恒太郎
 
評価:★★☆☆☆
 谷川俊太郎さんとの対話形式で進むこの本に、最初とても戸惑ってしまった。
 友達についての雑談がただただ記述されるのだけれど、それがなんとも的を得ておらず、どことなく後ろ向きに感じられ、しだいに読み進めるのさえしんどく思えてくるのだ。
 中学生、高校生のために書かれた本らしいのだが、おじさんが戸惑うのだから学生さんだって困るんじゃないかしら?との考えが頭をよぎる。
 結論、著者はよっぽどのひねくれ者か恥ずかしがり屋に違いなく、再三友だちは無駄だと言いながらも、あとがきへと続くラスト数ページにきてようやく正直な心の内を書き記す。
 そうやって大切であることをさらに引き立てて見せたつもりなんでしょうが、凡人にはやや難し過ぎました。
 言うには及ばず、結局友だちは無駄ではないってことですね。

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  三浦 英崇
 
評価:★★☆☆☆
 人生を効率重視でこなしてきた、社会人十何年生かの俺にとって、一番嫌いな言葉は、何と言っても「無駄」であります。このタイトルの第一印象が「あえて挑発的な題名付けて気ぃ引いとくかな」系の本? だったのも無理もないかと。
 ましてや「友だち」って言われましても……四捨五入して不惑の現在、思い当たる相手はええとええと。もっとも、じゃあ昔はいたのか?と問われれば、ますます凹むので勘弁して下さい。
 さて。俺を困惑させる2大ワードをタイトルに重ねておいて、著者が言わんとしてること。それは「無駄」の重要性、ひいてはやっぱり「友だち」の重要性であります。うーん。そりゃまあ、重要だってことは、心の奥底では分かってはいますが……
 でも、自分が相手を「友だち」だと思っていても、相手は何とも思ってなかった、なんて経験を重ね続けてると、この作品の本来の読者層たる中高生みたいに、素直に受け入れられなくて。ごめんなさい。

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  横山 直子
 
評価:★★★★★
 「私は元気で図々しかった」
 と子どもの頃の自分を語る佐野洋子さんが、友だちについて語り合う対談集。
インタビュアーは谷川俊太郎さんで、あとがきにそう書いてあるのをみて腑に落ちた。

 洋子さんの友達遍歴を読んでいる最中、私の脳裏にはいろんな友達の顔が浮かんでは消えた。
 30年ぶりくらいに思い出したクラスメートもいる。
 あれは確か私が10歳くらいの頃だった。同じクラスに不思議な感じのする静かな少女がいた。彼女の家は川のほとりで、庭には赤いぐいの実がたわわになる木があった。そこへ私は一人で遊びに行って、二人して糊に絵の具を混ぜて色つきの糊を作った。ただそれだけのことを実に鮮明に思い出した。

「無意味なことがすごく重大だった」とか「友情って持続だと思う」とか心に響く言葉がいくつも見つかった。
「私好きになっちゃったの」「あの人すごいのよ」
 友だちを語る洋子さんの弾む声が今にも聞こえてきそうだった。その彼女の直球が魅力だとしみじみ思う。
 そして広瀬弦さんのイラストがなんとも良かった。こちらの心を見透かされるようなライオンの表情に何度もドキリとした。

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