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そういう願望を前提にした時、この連作小説の舞台である「雪沼」は「その周辺」の環境込みで、候補地としてかなり有力かもしれません。何より、住んでいる人たちがみんな、温厚で篤実で、俺の心をささくれ立たせるようなところが全然ないし。
小さな町営のスキー場に、こじんまりとしたレコード屋(実際売ってるのはCDだけど「レコード屋」の方がしっくりくる)。おなかがすけば、肩肘張らずに通える中華料理屋もあるし。
過剰な情報の奔流に溺れ、膨大な物量の圧迫で押しつぶされそうになった時、「雪沼」を思って心和ませることで、俺はこの都会で、仕事に追われたり、人間関係に一喜一憂しながら、まだまだ生きていけそうです。
雪沼という山あいにある町に住む人たち、その暮らしぶりが淡々と綴られる連作小説。 自分が十分納得いくように、人生をまっとうに生きている、そのささやかながらも、読んでいて心がしみじみ洗われるような雪沼の人たちの生きる姿勢がいいなぁと思った。
「やっぱりおかしい」と職業意識で思ったり、ふと聞いたクラシックにひどく心を打たれたり、一冊の本をきっかけに再就職が決まり「人生なにが起こるかわからない」と感じたり…。 あまりにあたりまえの光景が見る視線によって違うことに素直に驚いた。 文句なくお勧めの一冊。本を読む幸せをしみじみ感じる。
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