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割としょっちゅう、そんな事態に陥る俺にとって、この小説のヒロイン・のぶと、その夫・正一郎との心のすれ違いぶりは、他人事じゃなく、ぐさぐさと心に刺さりました。
そんな事態を少しずつでも解消してくれるのって、何も言葉とは限らず、例えば、美味しい食べ物だったりします。時に繊細だったり、素朴だったり、その味わいはさまざまでも、人の心を動かすのは、案外、食欲なのかもしれない、と思う次第。それは、時代が平成であろうが、江戸であろうが、決して変わらない真理。
そしてまた、のぶをとりまく人々の示す、気にはかけても踏み込み過ぎない、分を弁えた優しさにも、幾度と無く感銘を受けました。こういう大人になりたいです。 疑心暗鬼になって、心が飢えちゃってる方(含む俺)に是非。
淡雪豆腐、水雑炊、心太、卵のふわふわなど、なんだかしみじみ美味しさが伝わってくるような目次が並ぶ。 中でも一番私の心に残ったのは水雑炊だ。 のぶちゃんとお舅さんが夜半に二人で作って食べた。 それは味噌と青菜しか入っていないものだった。 実はこの時、のぶちゃんは夫とのあまりの気持ちのすれ違いに婚家を出ようと決めていたのだ。 想いを寄せていた人の妻になれたと喜んでいたのもつかの間の辛い現実だった。 だからこそ、この水雑炊からお舅さんがかわいい嫁をいたわる心が伝わってくる。
しかし、のぶちゃんが婚家を出るところで話は終わるはずはなく、大団円が待っています。 笑いあり、涙あり、江戸のお勝手風景を存分に楽しみながら、最後までどうぞ楽しんでください!
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