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WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年9月の課題図書 文庫本班

反社会学講座
反社会学講座
パオロ・マッツァリーノ (著)
【ちくま文庫】
税込798円
2007年7月
ISBN-9784480423566
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  荒又 望
 
評価:★★★☆☆
 自称イタリア人の著者が、自らに都合の良い統計データと社会学的想像力、要するに「こじつけ」に満ちた社会学に反旗を翻す。
 自分は天邪鬼だ。ちょっとひねくれている。基本的にシニカルである。そんな自覚がある方は、きっと楽しめるはず。日本人は勤勉? 昔は良かった? 少子化は社会をダメにする? みんなそう言うけれど、本当に? そんなモヤモヤが解消して大いに溜飲が下がること請け合い。ところどころに仕込まれた小ネタも風刺が効いていて、終始にやにやしっぱなしで読み終えた。ふざけた著者略歴からは単なるパロディかと思わせるが、かなり本気で各種文献をあたっている。かといって、いたってシリアスなわけでもない。本作のスタンスがいまひとつつかみきれなかったのだが、面白いので良しとしよう。
 既存の社会学に物申す、ということで本作は登場したが、おそらく本作に物申したい向きも多々あるはず。『反・反社会学講座』が出て、さらに『反・反・反社会学講座』が出て…とエンドレスに続いていったら面白い。著者曰く、思い立てば誰でも社会学者を名乗れるとのこと。どなたか奮って挑戦を!

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  鈴木 直枝
 
評価:★★☆☆☆
 一見、引いてしまう本だ。イタリア生まれの30代、天パのひげもじゃという謎の著者は、顔写真すら載っていなくて余計に怪しさを匂わせる。自身の職業を戯作者と名乗るあたりも謎めいている。現在幕張在住の彼は、今の社会学を「川の流れを見る学問・社会的現象のみを扱う」と痛烈に言う。父の仕事の関係で世界中を転々としたという経歴からか「そんな見方もありかい!」という視点の違いを随所に感じた。日本に「ふれあい」と名のつく施設の多いこと(確かに…)=日本人のふれあい好きを指摘し、そこに役人の「こうあらねば」という押し付けを感じること。欧米人も日本人も劣らずふにゃふにゃだとか、石川啄木の二枚舌でいい加減なことを絶賛したり。けれど、人は正しさではなく楽しさで動くことや生きている人間にとって大事なことは「自分」「近所」「今」と両断する潔さもある。ますます不可解な人間だ。
 休日に講演を聞く感覚で楽に読める。ふむふむと読める反面、「で?」と突っ込みを入れたい面もある。最終章で自立についてまとめた箇所には、真面目ひと筋の日本人をうまく俯瞰している。頑張りすぎる傾向の人にマッサージ効果があるかも。

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  藤田 佐緒里
 
評価:★★★★☆
 大学時代、他の授業はさっぱり理解できずにすぐに諦めたのに、社会学の授業をいくつか取ってみたら、すっげー面白い学問で、これならあたしでもできる! と思いました。私は自分の脳が社会学向きなのだと信じて、社会学の方面でならいくらでも偉くなれるし、コメンテーターくらいはできるのではないかという気がしたのですが、この本を読んで、バカなあたしがそう思い込んでしまった理由がようやくわかりました。
 社会学、あたしの性格そのものの学問なんじゃねーか!
 どこがあたしの性格そのものなのかというと「第一回なぜ社会学はだめなのか」を読めばわかります。反社会学講座によると、社会学の一般的な研究方法は、
1 気に食わない人間・こてんぱんにしてやりたい人間を見つける。
2 そいつらがなぜ気に食わないのか結論を出す。
3 それを裏付ける結論だけを収集、そして煙に巻く。
4 手ごろなデータがなければ海外にも目を向けてみてごまかす。
5 とりあえず本を出す。
簡単に説明するとこんな感じです。なんたるテキトーさ!! このテキトーさ加減があたしの性格とマッチしていたから得意分野だと勘違いしたのね、と腑に落ちました。
 それはともかく、ほんっとに面白い本でした。笑えてものすごくよくわかる。パオロさんの人柄あふれる毒舌たっぷりの痛快な一冊です。

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  藤田 万弓
 
評価:★★★★★
 非常に面白い本でした。意地の悪い私にはピッタリ! 語り口は軽妙で、自虐的要素も満載の著者。文体ににじみ出るキャラクターの濃さは、個人情報満載のプロフィールでも裏付けられています。「そこまで聞いてないよ」と突っ込みたくなる著者の略歴(?)には、執筆業と講師の傍らで立ち食いそば屋のバイトもしていると書いてあります。うーん、興味深い。全20回に及ぶパオロ氏の社会学講義は、今まで私が受けた社会学の授業の中で一番面白かった。世の中で(特に新聞など)一大事のように扱われる事件や社会問題を一つづつ取り上げて、検証し直すその姿勢は学問のあるべき姿だと思いました。例えば、「成績不振の原因は活字離れによるものだ」というニュースに対し、読書調査報告書を統計にし、「本を読まないことが問題なのではなく、何か一つに長時間没頭すると勉強する時間がなくなるから成績が落ちる」という普通に考えれば当たり前だが、誰も指摘しなかった結論に到達したりする。世の中のイメージによって頭が固くなってしまった私には目からうろこが落ちる真理が次々に披露され、大変満足のいく一冊でした。

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  松岡 恒太郎
 
評価:★★★★☆
 読み終えてまず考えた、著者のパオロ・マッツァリーノとはいったい何者ぞと。
巧みな日本語を操る怪しいイタリア人パオロ・マッツァリーノ、反社会学の名のもとにおかしな日本社会を鋭く切りまくる。日本人よりも遥かに日本を熟知しているイタリア人、いったいこやつは何者なのかと。
 しかし内容は、理屈なしに面白い。いささか堅苦しい題名に手を引っ込めてしまう人がいるとしたら、全くもって勿体ない話である。
 怪しいイタリア人が、その知識と統計学を駆使し、ユーモアー満載で展開する独特の社会学は圧巻。なるほどと唸ったり、そりゃまた飛躍しすぎだと突っ込んだり、読み手の側は忙しいったらありません。
 中でも「ふれあい」という言葉を好む日本人について書かれた「ふれあい大国ニッポン」や、昨今の年金問題を三年も前に問題提起していた「スーペー少子化論争」はお薦め。
 日本の常識は、果たして世界の非常識だったのか?

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  三浦 英崇
 
評価:★★★★★
 「もうダメだー」と声高に煽り立てるのが好きなマスメディア、結構ありますよね。それに同調して「もうダメだー」と書きまくるネットの人たちも山ほどいます。

 でも、その「ダメ」な理由は、本当にちゃんと検討された根拠なのでしょうか? って突っ込まれた時に、案外、あやふやで曖昧だったりすることも多いんじゃねえかな、とふと思ったりする、そんな意地悪で知性があって醒めたあなたに、この本は最適。

 「キレやすい若者、って言うけど、別に今に限らず若者はキレやすいし」とか「日本人の勤勉さは歴史的伝統だって言うけど、その伝統っていったい何年くらい?」とか、社会学がまことしやかに提示してきた主張を、データに基づいてひっくり返す著者。情け容赦なくて、かつサービス精神溢れる筆致に、非常に好感が持てました。

 「反」社会学こそ「真」社会学、って言ったら、きっと著者はすごく嫌がるんだろうなあ、と思いつつも、一応言ってみよっと。

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  横山 直子
 
評価:★★★★★
この夏はパオロ先生の「反社会学講座」を受けることにした。
イタリア生まれの30代、天然パーマでひげもじゃの風貌をした彼は、文庫本を一冊手渡すとドロンと消えてしまった。

その内容が面白いのなんの!
今、まさに私が生きている日本社会って、こういう見方があるのだな、こんな事実があったのだなとビックリするやら、感心するやら。
少子化問題や凶悪少年犯罪の件もデータから導き出す真実の姿に目からうろこが何枚も剥がれ落ちました。
フランスには正社員しかいない、江戸時代には町人の約4割はフリーターだったと書かれてあって、「へぇ」と思ったり、まぁ、パオロ先生はなかなか辛辣に日本の現状を斬り、発言をし続けますが、「と、エラそうな顔でいう。」とか「いじわるなんですね、私は。」なんて言葉が挟まれると、読みながらにんまりしてしまう。
いずれにせよ本文中にもあった『真実はひとつ、解釈は無数』だなぁ、と読後に思う。
そうそう、単行本誕生から三年経っているので、その間の補講が各章ごとにあり、文庫本ならではのお得感あり!です。

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