●担当者●梅田蔦屋書店 三砂慶明

2019年4月4日更新

『伊丹十三選集 一・二・三』伊丹十三

 この本ではじめて伊丹十三を知る人は幸せだと思います。伊丹十三の文章をただ読むだけならほかの文庫でも読めますが、函といい、活字の組み方といい、書体といい、行間といい、手触りといい、手に取って読みはじめ... 記事を見る »
2019年3月7日更新

『地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録』ジョン・ル・カレ

 元スパイが自伝を書くのは、外部の人間が思うほど容易い業ではない、と本書の解説を書いた作家・外交ジャーナリストの手嶋龍一はいいます。「ひとたび情報の世界に身を置いた者には厳しい守秘義務が課されているか... 記事を見る »
2019年2月7日更新

『牛たちの知られざる生活』ロザムンド・ヤング

 書店員の間でよく知られている良い本の見分け方の一つに、装丁があります。もちろん好みや相性もありますが、特に細部までこだわった本で面白くなかったということはほとんどありませんでした。その理由はおそらく... 記事を見る »
2019年1月3日更新

『一日一文 英知のことば』木田元

 長い休みがあると、読めるかどうかは別にして、読み返したい本を鞄に入れて持ち歩きます。結局、荷物になるだけで徒労に終わるのですが、哲学者・木田元の絶対名著『反哲学入門』(新潮文庫)は、鞄の中にいれてよ... 記事を見る »
2018年12月6日更新

『ストリートの精霊たち』川瀬慈

 本書の主な舞台はアフリカのエチオピア北部の都市、ゴンダール。日本から一万キロ以上飛行機で飛び、エチオピアの首都アジスアベバから青ナイルの源のタナ湖を越えて、雄大な高原を見下ろし、さらに730キロ北上... 記事を見る »
2018年11月1日更新

『これは水です』デヴィッド・フォスター・ウォレス

 何の本だろう?  タイトルが気になって手に取ると、一頁目から引き込まれました。  本書はアメリカの大学の卒業式で行われたスピーチをまとめた本です。  アメリカのポストモダン作家、ウォレスがケニオン・... 記事を見る »
2018年10月4日更新

『海について、あるいは巨大サメを追った一年』モルテン・ストロークスネス

 沸き立つような興奮と、目の前に突如として広がる未知の世界。いままで人類がつむいできた神話や文学、古代地図を導火線に、次々と明らかになっていく未知のサメの正体──。  サメについて名前以外の何も知らな... 記事を見る »
2018年9月6日更新

『公園へ行かないか? 火曜日に』柴崎友香

 はじめて降りた駅の中華料理屋でかかっているテレビ番組を途中から見始めて、ドラマなのかそれ以外の何かなのか、しばらく経ってもよくわからないときがあります。『公園へ行かないか? 火曜日に』を読んでいたと... 記事を見る »
2018年8月2日更新

『蜜蜂』マヤ・ルンデ

 休みの日に草むしりをしていたら、蚊がいないことに気が付きました。あまりの暑さに蚊も生きられない世界になってしまったのでしょうか? 一匹の昆虫が世界からいなくなっただけで生態系は水面下で激変し、私たち... 記事を見る »
2018年7月5日更新

『はじめての沖縄』岸政彦

 本書は二十代のころ観光客としてはじめて沖縄と出会い、「そうとう気持ち悪いぐらい」沖縄に惚れ、なぜ熱病のように沖縄に恋い焦がれるのか「理由」を探究するうちに、それが一生の仕事になった社会学者の岸政彦氏... 記事を見る »
2018年6月7日更新

『火星で生きる』スティーブン・ペトラネック

 空を見上げても赤い点以上には見えない星、火星に、人々(特にアメリカ人)は想像をかきたてられてきました。 映画の古典「市民ケーン」を監督したオーソン・ウェルズは、まだ駆出し時代の1938年に、H.Gウ... 記事を見る »
2018年5月10日更新

『4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した』マイケル・ボーンスタイン&デビー・ボーンスタイン・ホリンスタート

 貨物列車でアウシュヴィッツに移送された数十万人の子どものうち、生きて収容所から出られた8歳以上の子どもは、たった52人でした。生存率0.052%以下の歴史上最悪最大の殺戮工場から、わずか4歳の子ども... 記事を見る »
梅田蔦屋書店 三砂慶明
梅田蔦屋書店 三砂慶明
1982年西宮生まれの宝塚育ち。学生時代、担当教官に頼まれてコラムニスト・山本夏彦の絶版本を古書店で蒐集するも、肝心の先生が在外研究でロシアに。待っている間に読みはじめた『恋に似たもの』で中毒し、山本夏彦が創業した工作社『室内』編集部に就職。同誌休刊後は、本とその周辺をうろうろしながら、同社で念願の書籍担当になりました。愛読書は椎名誠さんの『蚊』「日本読書公社」。探求書は、フランス出版会の王者、エルゼヴィル一族が手掛けたエルゼヴィル版。フランスに留学する知人友人に頼み込むも、次々と音信不通に。他、読書案内に「本がすき。」https://honsuki.jp/reviewer/misago-yoshiaki