『極大射程』スティーヴン・ハンター

●今回の書評担当者●マルサン書店仲見世店 小川誠一

  • 極大射程 上 (扶桑社ミステリー)
  • 『極大射程 上 (扶桑社ミステリー)』
    スティーヴン・ハンター,染田屋 茂
    扶桑社
    838円(税込)
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  • 極大射程 下 (扶桑社ミステリー)
  • 『極大射程 下 (扶桑社ミステリー)』
    スティーヴン・ハンター,染田屋 茂
    扶桑社
    838円(税込)
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 静岡県沼津市マルサン書店小川と申します。

 実は黙っていたことがあって......アクション・ミステリー小説も好きなんです! スイマセン。別に隠していたわけではないのですが。

 たぶん最初に読んだ作品はJ・C・ポロックの『樹海戦線』だったと思います。魅力的で凄みのある男たちが次々登場する、読みごたえのある作品です。冷戦時代の大国間謀略戦に特殊部隊を入れ込んだアクション・ミステリー小説は、時代のせいもあり大勢の人たちに支持されました。そこに描かれていた男たちが持っている不屈の精神に読者が共感したのが大ヒットの理由だと思います。現在絶版状態なのが悲しいですが。

 この作品の現代版ともいえるのが今回ご紹介いたします『極大射程』です。"このミステリーがすごい! 2000年海外部門1位!"ということで初めて手に取った覚えがあります。やはりこのランキングは気になりますよね。

 さっそく読んだ。読みだしたら止まらない! 面白すぎる。なぜ面白いのか。

 常々私が感じているのは、「面白い本にはリズムがある」という事だと思っているのです。悲しかったり嬉しかったりと作品から受ける印象はそれぞれ違いますが、共通するのはテンポよく次のフレーズを読者と一緒に歌ってくれる作品。このハーモニーの中心に最後まで読者を居させてくれる作者は最高の演奏家でもあり指揮者でしょう。

 しかもニクイことに盛り上がる場面には必ず壮絶な銃撃戦があるのです。見せ場を心得た最高のエンターテイメント小説ですね。しかも最後の最後に待っているどんでん返しはジェフリー・ディーヴァーも真っ青w ええっ! そんな大事な場面で......あっこれ以上は言えません。未読の方がいたら悲しくなってしまうので。

 スティーヴン・ハンターはこのシリーズの他にも名作はたくさんありますが、私がイチオシなのはこの作品の主人公「ボブ・リー・スワガー」が活躍する〈スワガー・サーガ〉。他にもベトナム戦争を迫真の描写で生々しく描いた『狩りのとき』もおススメです。というか、この『狩りのとき』がスティーヴン・ハンターの最高傑作かもしれません。

 たった一人、いや二人で敵の大部隊を釘付けにし、味方基地を全滅から救った英雄的行動は何度読んでも飽きることがない。そして驚くほど登場するハンドガン・ライフル・スナイパーライフルなどなどの詳細な描写と説明はそれに使用する弾丸の形状にまでも及び、ミリタリーマニアにも十分読み応えがある作品に仕上がっています。

 まだこの作品を読んでいない幸運な方へ。これからモノスゴイ感動があなたを待っています。明日の会社帰り、書店に立ち寄ってぜひ扶桑社海外文庫の棚を見つめてください。そしてこの作品の面白さを友人・知人に伝えてもらいたいのです。

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マルサン書店仲見世店 小川誠一
1968年生まれ。SF・冒険小説が大好き。最近は読むスピードが落ちているのが悩み。