1月13日(火) 書評家4人の2014年解説文庫リスト

〔大森望〕
1月『密室・殺人』小林泰三/創元推理文庫
  『混沌ホテル』コニー・ウィリス(大森望訳)/ハヤカワ文庫SF※
2月『空襲警報』コニー・ウィリス(大森望訳)/ハヤカワ文庫SF※
3月『変種第二号』フィリップ・K・ディック/ハヤカワ文庫SF※
4月『11 eleven』津原泰水/河出文庫
  『秘密結社にご注意を』新藤卓広/宝島社文庫
5月『L change the worLd』M/集英社文庫
  『SFマガジン700国内篇』大森望編/ハヤカワ文庫SF※
6月『きつねのつき』北野勇作/河出文庫
  『契約 鈴木いづみSF全集』鈴木いづみ/文遊社 *ハードカバー
  『さよならの儀式 年刊日本SF傑作選』大森望・日下三蔵編/創元SF文庫※
7月『小さな黒い箱』フィリップ・K・ディック/ハヤカワ文庫SF※
  『はい、チーズ』カート・ヴォネガット(大森望訳)/河出書房新社※
8月『夏色の想像力 第53回日本SF大会なつこん記念アンソロジー』今岡正治編/草原SF文庫 *序
9月『突変』森岡浩之/徳間文庫
  『サンリオSF文庫総解説』牧眞司・大森望編/本の雑誌社※
  『真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク 』喜多喜久/集英社文庫
  『深泥丘奇談・続』綾辻行人/角川文庫
10月『辞めない理由』碧野圭/実業之日本社文庫
  『楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選』虚淵玄・大森望編/ハヤカワ文庫SF※
  『バベル NOVA+ 書き下ろし日本SFコレクション』大森望編/河出文庫※
11月『PK』伊坂幸太郎/講談社文庫
  『人間以前』フィリップ・K・ディック(大森望編)/ハヤカワ文庫SF※
12月『vN』マデリン・アシュビー(大森望訳)/早川書房※

「ひとこと」
 24冊のうち、自分の編訳書に書いたあとがき(または序文)が12冊(末尾に※を付した)。さらに、個人出版アンソロジー『夏色の想像力』に寄稿した序文とハードカバー本『契約』の解説を除くと、純粋な文庫解説は10冊だけ。「目黒考ニの何もない日々」を遡ってチェックしてみると、過去5年間(2009年以降)は、12冊→13冊→14冊→13冊→15冊と推移しているので、ここ数年では最小かも。仕事が減る予兆?
『契約』は、鈴木いづみのSF短編すべてを収める一巻本の全集で、収録全短編の解題含め40枚ぐらい書きました。
〔杉江松恋〕 1月『これ誘拐だよね?』カール・ハイアセン/田村義進・訳(文春文庫) 3月『ハロワ!』久保寺健彦(集英社文庫) 4月『ミステリマガジン700【海外篇】』※アンソロジー(ハヤカワ・ミステリ文庫) 8月『ザ・バット 神話の殺人』ジョー・ネスボ/戸田裕之・訳(集英社文庫) 9月『殉狂者(『エウスカディ』解題)』馳星周(角川文庫) 10月『「禍いの荷を負う者」亭の殺人』マーサ・グライムズ/山本俊子・訳(文春文庫)   『霊の棲む島』カミラ・レックバリ/高山クラーソン陽子・訳(集英社文庫)   『殺し屋ケラーの帰郷』ローレンス・ブロック/田口俊樹・訳(二見文庫) 11月『ミスター・グッド・ドクターを探して』東山彰良(幻冬舎文庫)   『傷だらけの拳 道場2』永瀬隼介(角川文庫) 12月『新魔獣狩り完結篇 倭王の城』夢枕獏(祥伝社文庫)   『死者に送る入院案内』赤川次郎(実業之日本社文庫)   『BIBLIO MYSTERIES』(単行本)※アンソロジー(ディスカヴァー・トゥエンティワン) 「ひとこと」 1~3月はアンソロジーの準備、4~6月はノヴェライズの仕込みをしていたので全然解説仕事をしておらず、今年はヒトケタかと思っていたのだが、蓋を開けたら13本で昨年の12本よりも多かった。昨年は日本ものと海外ものが8:4、今年は6:7と完全に逆転していて、最近の仕事傾向を正しく反映している。今年いちばんたいへんだった解説は『殺し屋ケラーの帰郷』で、シリーズ中で主人公が訪れた都市の一覧をつけた。読者には気に入ってもらえたのではないかと思う。また、赤川次郎作品の解説では、年度ごとの著作数の変遷と単発短篇の傾向には関連性があるかという分析をしている。こういう手数のかかる仕事、資料性の高い内容を自分は文庫解説には求めるので、ますます量産が効かなくなるのである。「すごいなー」もいいのだけど、「役にたったー」と言われたときの方が解説書きは嬉しいっすね。
〔池上冬樹〕 1月 『幼年』/福永武彦/講談社文芸文庫 2月 『棟居刑事 代行人(ジ・エージェント)』/森村誠一/中公文庫 4月 『真夜中の相棒』/テリー・ホワイト/文春文庫 4月 『野沢尚のミステリードラマは眠らない』/野沢尚/実業之日本社文庫 4月 『社奴』/森村誠一/集英社文庫 5月 『星月夜』/伊集院静/文春文庫 5月 『スパム・リコール』/司城志朗/小学館文庫 5月 『ウィスキー・ボーイ』/吉村喜彦/PHP文芸文庫 6月 『硝子の葦』/桜木紫乃/新潮文庫 6月 『ヒート』/堂場瞬一/実業之日本社文庫 7月 『ミッドウェイ』/森村誠一/講談社文庫 10月 『堕落男(だらくもの)』/草凪優/実業之日本社文庫 10月 『先導者』/小杉英了/角川ホラー文庫 11月 『花晒し』/北重人/文春文庫 12月 『ファミリーレストラン』/東山彰良/実業之日本社文庫 「ひとこと」  高校時代に出会って、以後何回も読み返している『幼年』の文庫解説依頼が来るとは思わなかったし、もう僕もこれで終りなの? と一瞬円が閉じられる想像をしてしまった。それほど僕にとって福永武彦の存在は大きい。  でも、考えてみたら、高校時代に好きだった福永の師匠の石川淳も、石川を尊敬してやまない丸谷才一、吉行淳之介、開高健、辻邦生、立原正秋、小川国夫、結城昌治、ロス・マクドナルド、そして最愛の森内俊雄の解説もしていないのだ、まだ。  解説依頼を待つのではなく、自分からアンソロジーの提案をして、好きな作家たちを集めた全5巻ぐらいの解説をすべきなのかもしれない。実はすでにいくつか話はきているのだが、忙しくて、なかなか着手できないのが現状。今年は無理矢理時間を作って何とかします。
〔北上次郎〕 2月『作家の履歴書』角川書店 4月『魔獣狩り①淫編』新潮文庫 5月『セブンティーン・ガールズ』北上次郎編(角川文庫)※ 7月『シフト』ヒュー・ハウイー(雨海弘美訳)角川文庫 8月『ライトニング』クーンツ(野村芳夫訳)文春文庫   『されど愚か者は行く-道場1』永瀬隼介(角川文庫)  9月『スリーピング・ブッダ』早見和真(角川文庫)   『容疑者』ロバート・クレイス(高橋恭美子訳)創元推理文庫 10月『満つる月の如し』澤田瞳子(徳間文庫)   『ウィンブルドン』ラッセル・ブラッドン(池央耿訳)創元推理文庫 11月『そして山々はこだました』カーレド・ホッセイニ(佐々田雅子訳)早川書房 12月『隠れ蓑 北町奉行所朽木組』野口卓(新潮文庫) 「ひとこと」 上記の12点のうち、※は編者解説。『作家の履歴書』と『そして山々はこだました』は単行本なので、純粋な文庫解説は9点。大森望にならって過去5年の推移を書いておくと、単行本、新書、編者解説などを除く純粋な文庫解説は、14→17→10→11→14、なので、近年の最小である。もっとも6年前の2008年も9点であったから、6年前の点数に戻っただけか。それにしても2010年の17点はよく書けたよな。とても自分のこととは思えない。今年の目標はせめて10本は書くこと。